第6話 ルール
「私の話を聞いて……すごく重要なことなの」
そういってグレーテルは僕の言葉を遮った。
「わかった……」
その真剣な表情に圧倒され、僕は頷いた。
「時間がないから一度しか言えない……よく聞いて」
ただならぬ雰囲気に圧倒されるように、また頷くしかなかった。グレーテルは声を潜めながら、だがはっきりとした口調で話しはじめた。
「ここには6つの檻があるの。横一列に並んでいる。それぞれ番号がふられていて、外から檻へ向かって、一番右端が①の檻、左へ番号順に進み、一番左端が⑥の檻よ。全部の檻に男の子が捕らえられているわ。捕まって最初に入れられるのが⑥の檻、そしてある条件を満たすと、一つ数の少ない番号の檻へと移動させられるの……その条件は二つある……」
「条件……」
あまりにも奇妙な話だった。背筋に冷たいものを感じた。
「そうよ……魔女がときどき人差し指を握りに来るでしょ? 魔女はほとんど目が見えないの。だから指を握って、その子供がどれだけ太ったかを検査しに来てるの」
「検査……」
声が震える。
「ええ……検査というのは、具体的には二つの檻の、どちらの子供の指が太いかを確認することなの……。その二つの檻は、①と②、③と④、⑤と⑥、この三つの組み合わせになるわ。数字の小さい檻の子供の指が太い場合は、檻の移動はなし。大きい数字の檻の子供の方が太ければ、檻が入れ替わるの……これが、一つ目の移動の条件よ」
僕はことの恐ろしさに怯えながらも、一方で必死に頭を回転させていた。生き残るために、この情報は物凄く重要に思えたのだ。すると一つ疑問が沸いた。
「ちょっと待て……質問がある……」
グレーテルは言葉を止める。
「常にその組合わせの比較になるなら、⑤から④、③から②への移動は無くなるんじゃないのか?」
グレーテルのいう組み合わせで比較している限りは大きい数字の子供が一つ下の数字に移動することはあっても、少ない数字の場合は現状維持しかない。
グレーテルは首を振った。
「①と②の比較で、指が相手よりも太かった方は、即、檻から連れ出されて殺されるのよ。空いた檻が出た場合は、その檻を埋めるために自動的に番号が繰り上がるの……。これが二つ目の移動の条件……。そうすると⑥が空くから、そこにまた新たな男の子が追加されるの……」
僕は言葉を失った。だが本当のことなのだろう──。
これで絶叫とすすり泣きにも納得がゆく。絶叫していたのは①か②の、今まさに、連れ出されて殺されようとしている子供の声、すすり泣きは③以下の檻の子供の声に違いない。
「魔女はなぜこんなことを……」
人の命を虫けら程度にしか思っていない。完全に狂気の沙汰だ。
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