第6話

数週間のうちに僕と凛の会話は減り、今ではほとんど話さなくなっていた。


文化祭の準備が進んでいたことも、凛との距離を広げる一因になった。はじめは寂寥を感じていたが、時間が経つにつれて幼なじみなんてこんなものかと思うようになった。


今年の文化祭はクラスのやつらと回ろう。

文化祭を楽しむのに、幼なじみは必須ではない。



高校生2年生の文化祭は、馬鹿騒ぎのうちに終了した。家庭科室の使用権を獲得した我らA組は、手作りカレーを販売し、食品部門で1位に輝いた。屋台は軽食やスイーツがメインだったため、座って食べられるカレーが売上を伸ばしたのだ。


景品としてたくさんのお菓子やジュースを手に入れた僕らは、文化祭のテンションのまま打ち上げパーティーをしていた。玉ねぎを刻みすぎて取れなくなっていた手の臭いも、やっと気にならなくなった。



「なぁ、あいつらいい雰囲気じゃね?」



クラスメイトが一組の男女を指さして言う。



「たしかに。さすが文化祭だな」



学校行事というものは、カップルがうまれやすい。僕はそんなものとは無縁だと思っていたが、そうでもないらしい。



「悠生くん、ちょっといいかな」



一緒に玉ねぎを刻んだ女子だった。打ち上げはかなり盛り上がっているし、僕らが抜けたところで誰も気にしないだろう。人目を避けるように、階段の踊り場で話すことにした。



「あのね、悠生くん。私、悠生くんのこと好きなの。悠生くん、背高くてかっこいいし、料理上手だし、落ち着いてるし。だから、えっと、その、もし良ければ、私と付き合ってもらえませんか?」



頬を赤く染めて上目遣いでこちらを見る彼女は可愛らしかった。



「好きになってくれた気持ちは嬉しい。ありがとう。でもごめん、僕、そういうの興味ないんだ。普通のクラスメイトとしてなら仲良くしてほしいなと思う。ごめんね」



文化祭の浮かれたテンションのまま付き合うのもありだと思ったが、僕が彼女を好きになる可能性はゼロに等しい。それならはじめから期待させない方がいいに決まっている。


僕は、精一杯の感謝と謝罪を伝えるしかなかった。

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