第11話 古い箱
東棟と西棟、部活棟は屋根付きの渡り廊下で繋がっている。西棟から渡り廊下を歩いて部活棟に入った。
部活棟は二階建てだ。一階の校庭側にボールやポールなどの用具入れが並び、奥の方はそれぞれの部活の部室になっている。
二階は文化部の部室があるようで、吹奏楽部の演奏が聞こえて来た。
先に行ったはずの倉野さんが廊下の真ん中でキョロキョロしている。
「ギニア湾はどこ?!」
「えーと……」
三人とも部活に入っていないから、部活棟には縁がない。間違いなくギニア湾は部活棟の外だ。ただ、どこから外に出られるか分からなかった。
全員で右往左往しながら出口を探した。
「えーと、こっちが校庭で東側だから、反対側にいかないといけなくて」
しかし、出られる場所が中々見つからない。
「こうなったら校庭側から回る」
大回りしようというのだ。また真っ先に倉野さんが校庭へと出ていこうとする。
出入口には外履きのスリッパが置かれていた。上履きから履き替えて、野球部のノックの掛け声を聞きながらパタパタと速足で歩く。
世界地図で言うと、アフリカ大陸の最南端、喜望岬を大回りした。
アフリカ大陸のあごの部分にやって来た。学園を囲む林から離れているし、陽もあたらない北側ではないので、暗くはない。
「完全に校舎裏だけど、何も」
「あ! 畑がある!」
角を曲がると、緑が茂る畝が見える。アフリカ大陸のあごの大部分が畑になっていた。
「もしかして、土の中に埋まっているのかな」
水上くんは試しに落ちていた木の棒で土をいじっている。とても、それで何かが見つかるとは思えなかった。
「えっと、ギニア湾の場所だから。あっ!」
校舎の角に錆びて赤茶色になっている物を発見した。僕たちは興奮しながら駆け寄る。
「あれって!」
「うん! 焼却炉だよ!」
「川柳の焦げてって、焼却炉のことかも」
あまりにも全ての条件が川柳に合致していた。ちょうど、部活棟の校舎の直角になっている角に置かれている。
「使われていないみたいだね」
「確か別の焼却炉が西棟と部活棟の間にあったよ」
「宝! 早く探す!」
倉野さんが筒状の焼却炉の蓋を開けようとする。
「あ、あれ?」
しかし、錆びていて上手く開かないようだ。
「深志、開けてよ!」
「な、なんで僕? とういうか、いつのまに名前で呼んでいるんだよ」
「水上くん、僕も一緒に引っ張るよ」
確かに力は水上くんが一番ありそうだけど、倉野さんの様子だと一人では無理そう。
二人で錆びた取っ手に手をかけて、力いっぱい引っ張る。
「うっ」「このっ」
背を反らして、やっとギッギッと手ごたえを感じた。僕と水上くんは一度力を緩めて、眼を合わせる。
「「せーのッ!」」
同時に取っ手を思い切り引っ張った。
「「うわぁ!」」
ガコッという音が鳴り、錆びた蓋が開くどころか、留め具ごと外れる。二人で背中から土の地面に転がった。
「いたたた」
「宝はッ!?」
倉野さんが我先に焼却炉の中をのぞき込む。がんばった僕らを労うか、助け起こすぐらいしてもいいのに。
だけど、そんな不満もすぐに吹き飛んだ。
「あッ! 何かある!」
「「えッ!」」
僕らは不満をさておき、飛び起きる。焼却炉の中を覗き込んだ。
「古い箱だ……」
埃をかぶった銀色の箱だった。手のひらサイズで、幾何学模様が彫られている。倉野さんが手を伸ばしてつかみ取った。
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