第4話「入学試験」
「ほら、こっちこっち早くしないと始まっちゃうよ?」
「はっ、はっ、ノットが早いんだよ……」
ルカを急かしながら駆け足で学園の敷地を通ると無事集合場所に到着した。そこは大きな広場で運動場のような場所だった。広場の端には柵がありその向こうには森が広がっておりその手前には教員らしき人たちが立っていた。
「ルカあれ見て人が集まってるからたぶんあそこが待機場所だよ」
俺はルカに教員がいる場所の手前側を指し示す。そこには十六歳ほどの男女が列をなして並んでいた。
「う、うん……人混み苦手だなぁ……」
「はいはい」
ぽつんと零したルカの弱音を俺は聞き流しながら俺は列に入る。どうやら並び順は受験番号によって決まるようで一緒に並んでいる人と同じ教室で筆記を受けるとされている。現に、列の先頭に立っている教員たちは「1年A組教室」「1年B組教室」と書かれた看板を掲げているのだ。
「時間だ。全員そろったか?」
教員の一人がそう呟くと他の教員も無言で頷く。
「……よろしい。では、これより一次試験会場へ移動する」
それを肯定と受け取り、列をなしている受験生たちを連れて一次試験会場である教室へと各々向かっていったのだった。
さて、一次試験についてなのだが特別語るようなこともないのでカットさせていただく。理由としては内容としては筆記試験であり、百点中四十点を取れれば合格と割と緩めな試験である。しかも内容は一般教養的なものであり、出来なかったら障害を疑われるほどである。自分の名前を書けとか、国の名前を答えるとか、魔法属性を全部書き出せなどなど……この世界の住民であれば簡単なものである。騎士になる人材は最低限の読み書きができればそれでいいからだそうだ。
『知識などは入学してから身に着ければいい』それがこの学園の考え方である。如何にもあいつが考えそうな適当な教育方針だ……
別に取ろうと思えば百点なんてとれるのだができればルカと同じクラスになりたいので六十点くらいを目安に回答していく。最悪、
「そこまで!」
試験監督官の言葉を合図に試験用紙とにらめっこをしていた受験生たちは羽ペンをインク瓶に置いて顔を上げる。
「試験用紙は後でこちらで回収する。速やかに二次試験会場へ移動したまえ」
そう言われ俺たち含めた受験生は二次試験会場である先ほどの大きな広場の運動場へと進んでいく。
―――☆―――☆―――
二次試験会場へと到着すると他の受験生たちも並んでいた。無論その中にはルカも入っていた。
「あっ、ノットさっきぶり」
「おぉ、さっきぶりルカ」
つい一時間ほど前に知り合った相手だというのに笑顔でこちらに歩み寄って来るルカ。よほど知っている人が近くにいるのが嬉しいと見える。彼は人見知りなところがあるのは原作から知っているしこの世界でも健在らしい。
「試験大丈夫だった?」
上目遣いでこちらをみてくるルカ。くっ……顔が良い!男じゃなかったら惚れてた。
「あんなの十歳ガキでもできる奴はできるだろ」
しかし、こうして仲良くなると驚くくらいグイグイと距離を縮めてくる。人との付き合い方が何というか不器用なのだ。だからこそ、彼は魅力的な人間なのだ。
「……諸君揃っているかな?」
その言葉で俺たちの会話はまた終わりを告げた。どうやらこれから二次試験がはじまるらしい。
二次試験の内容もそこまで難しいものでもない。森の中に分け入って魔物や他の受験生を倒してポイントを多く取ってだけの簡単な試験である。
魔物一体につき二十五点。受験生を脱落させれば百点となっている。この場合、脱落した受験生は自身の持ち点を相手に奪われる形となる。受験生の脱落と判定させるには試験開始と同時に全員に配られるチョーカー型の魔道具を破壊することである。この魔道具は持ち主のダメージに応じてある程度の負傷が与えられると自動的に壊れるようになっている。そしてこの魔道具は持ち主の所持点数も計測している。
そして二次試験の合格基準は受験生三百人のうち二百位になることで、ぶっちゃけると下の順位にならなければ合格できる。
「……以上が二次試験のルールだ。何か質問のあるものは?」
全員が沈黙する。こうゆう『質問ある?』って言われても中々言いずらいよね、というかすぐには浮かんでこないし……
「ノット。一緒にチーム組まない?」
「いいのか?」
まさかの渡りに船であった。元々誘うつもちだったが向こうからきてくれるとは……
「うん。だって……組める相手ノット以外にいないんだもん」
oh……中々悲しい理由だった。なんか原作より陰の物過ぎない君?
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