第3話「運命」

 ドーモ、転生者こと俺です。さっそく、主人公ルカ君の村焼きイベントに乱入して主人公と初対面をしてきました。時系列確認のために主人公の村に到着した時には村は火だるまでありこち魔物だらけ、まさか下級飛竜種ワイバーンまでいるとは思わなかったよ。言うなれば、序盤の町で中盤の雑魚敵がボップするようなもんだそりゃ村一つ滅ぶよむしろそれだけで住んでる方が奇跡だ。まぁ、俺が倒したからなんだろうけど原作だとどうしてたんだろうなマジで……

「しっかし軽いな」

俺は世界を救う勇者であるルカを抱えながら近くの城下町まで進む。こんなに軽い体に世界の命運が握られていると思うとどうにも居た堪れない。そして故郷を失う悲劇に同情してしまう。主人公ルカの故郷である町ルークスはブランク王国と呼ばれる西の国の辺境に位置する。だからなのだろう――いや、王都以外だいたいそうだが――村を守る兵力は最低限だし、魔物から守ってくれる分厚い城壁なんてものはない。精々が軽い魔物避けの魔法を付与した木材で作った柵くらいなものである。だから魔物の群れ、或いは強大な魔物が襲撃すればひとたまりもないのだ。そんなことはあまりおきないから国もそこまで本腰を入れて対策しようとしない。連中は魔力が高い人間がいれば農民が何人死のうが構わないのだ。仮に数が減っても取柄もない、魔力も少ないと判断された人間から追放され農奴にされる。そうやってこの世界は回っている。ゲームでは語られないこの世界の裏事情である。長年冒険者をやってきて知ってしまった国家の闇と言う奴だ……少し話がずれたな。


俺はルカを王都の教会孤児院まで運んでいる。何故かと言えば……まぁ、単純に親のいない六歳の子供の行きつくところで一番まともな場所だからだ。多少不自由で贅沢はできないだろうがそれでもまっとうに育つことが出来るだろう。そして主人公が戦えるようになるまで十年待たなくてはいけないさすがに六歳で殺し合いなんてさせるわけにいかないだろう。その十年までにやらなくてはいけないことが2つある。一つは敵対組織を作ることだ。敵対する組織が無ければルカが戦う理由がないだろうし、その状況に持っていくのが楽になる。もう一つが常にルカの状況を確認できるようにすることだじゃないと色々大変だろう。まぁ、もう手は考えてある。ルカが入学する騎士学園に入り込むのだ。


―――☆―――☆―――


そうして10年が経過した。今まで色々あった。原作のラスボスが作った組織が内部分裂してたのを再び統一させたり、当て馬用の噛ませ犬を用意してそいつを組織のボスに仕立て上げたり大変だった。一番は学園に学生として紛れ込むことだ。少々冒険者としてのコネを使わせてもらったよ。


別に教員でもよかったんだけど……やりたいじゃん青春。前世含めて夢幻の如く人間50年生きてきたが今まで学生らしいアオハルなんてしたことないのだ。なら、一度くらいいいじゃないか学生生活。どうせもうすぐこの人生も終わるのだ。少しだけ楽しませてもらおう。


 だから俺は一学生としてこの騎士学校の受験しに来たのである。そのついでに運良く原作主人公ルカと鉢合わせすることが出来た。現在は落とした受験票を拾ってやり、転んできるようなので手を差し伸べて立ち上がらせる。

「……どうしたの?どこか悪いの?」

「えっ、あっ、いえ、大丈夫です」

しかし、どうしたことか。対するルカはどこかよそよそしい。何が気に障るようなことでもしてしまっただろうか?

「あの、何処かで会ったことありませんか?」

「……いや、なかったと思うよ」

あぶっっね!?なんとか咄嗟に否定できた。いや、魔法で遺伝子レベルに別人になってんだぜ!?原作のラスボスすら欺いた変身魔法をこいつ……エスパーかよ。

「それよりもそろそろ会場に入らないと試験に間に合わないんじゃないかな?」

「もうそんな時間か……急がなくっちゃお互い受験頑張ろうね。えっと……」

「あぁ、ごめん乗ってなかったな俺の名前はノウ・ノットお互い試験頑張ろうなルカ」

「うん、よろしくノット」

かくして二人のファーストコンタクトは無事に済まされた。このとき彼はまだ知らなかったこの出会いが後に自身の運命を大きく変えるとは……



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