外伝 兄妹の歩む未来(???視点)
※今回の話は複数の場面に入れ替わりお届けいたします。
「――
「何でしょうか,
「先程のお話,詳しくお聞かせ頂いてもよろしいでしょうか?」
先程のお話――
「それは,
「みっくんにはお話はしません。今は彼等を動かすことはできませんから」
彼女はその儚い姿とは思えないほどの真剣な眼差しで答えた。
動かすことはできないか――どちらかと言えば動かしたくないと言った方が正解だと思うが……私自身も人のことを言えないので苦笑するしかなかった。
「なるほど……ですが,この話は私も詳しくは知らないと先程も言ったはずだが?」
「あまり私を見縊らないでください。あなたの力を使えば彼等のことを調べるのは容易なはずです。遙人さんに教えられなかった本当の理由は?」
「……Let sleeping dogs lie.」
私のその言葉に一瞬だけ目を見開いたが理由を理解してくれたのかそれ以上は何も追及はしてこなかった。
「――
「どうした?」
星稜学園の男子生徒が私の前に現れた。
「先程,
「……彼女は何処から話を聞いていた?」
「
「まあ♪」
彼女はクスクスと笑い出し,私も顔に片手を当てて笑いそうになった。
「とんでもないタイミングで
「いえ,問題がなければいいんですが……
急に名前を呼ばれて何事かと思うと彼は真剣な表情をしていた。
「
「それは私でも分からない。姫様となら私が保証していたが彼女に関しては私は一切関わるつもりはない。気になるなら自分達で調べても構わない」
「……恩に着る」
それだけ言い残すと彼はまた姿を消した。
「よろしかったのですか?」
「
「そうですか――
「……今日はよく質問をされる。今度は何を?」
「どうして,あなたみたいな人が
私が姫様に従う理由……か。
あれはGWの頃だっただろうか……。
当時までの私は生きる希望など全く見出していなかった。
幼い頃から神童の再来と言われた自分は
無論,兄二人は私のことを疎ましく思っていたがそもそも私は跡取りに興味などなく兄達にもどちらかが後を継げば兄の為にこの力を使うと約束をしていた。
最初は疑われたが私の態度を見て兄達も私を疎ましく思うのを止めてむしろ後々のために仲良くしておいた方がいいと思い始めていた。
――だが,世界とは残酷で無慈悲なものだ。
あの忌々しい事件で両親は疎か兄二人も亡くなり私は強制的に
そして,会長であった祖父も14歳の時に亡くなり,学生の身でありながら私は会長に就任したが特に授業も仕事も問題なく執り行うことが出来た。
はっきりと言えば授業も仕事も簡単すぎた。
グループの上層部は私の実力を見て過去の栄華を取り戻そうと考えている者達もいたが私はそんな下らないことには興味がなかった。
そんな全てに興味を失せていたある日――私は彼女と出会った。
『ようこそ社交部へ……
本来は3年生が部長を務めるはずの社交部も
そして,毎年行われる恒例行事――社交部に入れる学生を査定,新入生を歓迎するお茶会の中に1年生の首席であった彼女の姿もあった。
『本日はお招き抱きありがとうございます,
『気にしなくて構わない。何より君は学園でも非常に有名だ。私も一度,会ってみたいと思っていたのだよ』
これは只の挨拶……いつも他のご令嬢達にもよくやることだ。
あとは簡単に話でもして彼女に入部してもらうかどうか聞くだけだったが,彼女は私の斜め上を行く返答をした。
『
『申し訳ありません。私は別の部活に興味がありまして……』
『ほう……一体,どこの部活かな?』
『風紀委員会です』
風紀委員会――星稜学園の風紀を担っている生徒会の次に重要視されている組織。
首席の子達も生徒会の変わりに入部する学生が多いと言われているがそもそもあそこは学園組織の1つであって部活ではない。
特に社交部に入っていても問題がないと思うが……。
『ただ,この部活には興味があります――私の目的を達成するためにですけど……』
『目的?』
『ええ……先程の入部の件ですが条件を付けるなら入部しても構いません』
入部をしても構わない――面白いことを言う子だ。
まるで自分が格上のように言っているようなものではないか。
『
『構いませんよ。私の条件は――』
彼女は私に指をさして不敵に笑った。
『
私はこの時――初めて心が揺れ動いてしまった。
私は初めて人という存在に……彼女という存在に興味を抱いてしまった。
そして,彼女にはそれ叶えるための力を持っていた。
『――姫様,1つお聞きしても?』
1学期が終わる頃,蒼の騎士団の体勢が盤石になりつつあったある日,私は彼女に前々から気になっていたことを尋ねた。
『何故,あなたはこのような組織を作ろうと思ったので?』
これだけの組織を作るのだ――何かしら重大な目的があると思っていた。
だが,彼女から出た言葉は可愛らしく切ない願いであった。
――二度と大切な兄が悲しまない世界を作るために力が必要だった。
またしても衝撃過ぎた話だ。
壮大な目的のためではなく大切な兄の為に力が必要だったというのだ。
そして,彼女はそんな兄の幸せのためにあのような組織を作り一歩間違えれば修羅の道を歩むかもしれない状況を自ら選んだのだ。
『それが私の選んだ道ならば,修羅になろうとも地獄にでも落ちましょう』
またしても私は彼女に興味を抱いてしまった――そして,彼女が大切にしているという兄はどんな人物であるのかも。
――彼を調べた時には姫様よりも驚愕したのは言うまでなかったが……。
「これが私が姫様に付き従っている理由だ。私は見てみたいのだよ。彼女だけでなく神条君も歩む未来がどういったものなのかを……理解はして頂けただろうか?」
「そういう理由だったんですね。その話,
「してはいない。彼には教えてはならないと姫様に言われている」
「なるほど。では,私の方からも
そう言って彼女は紅茶に口を付けた。
彼女に取って
「
「おそらく,
「先手?」
首を傾げる彼女を見て私は不敵な笑みを浮かべた
「ここからは私の独断だが,彼等には少しお灸を据えようと思う。それに,あの二人の手を煩わせるわけにはいかない。あとは彼が上手くことを勧めてくれるだろう」
その言葉を聞いた
**************************
「――くそっ!何だこの支援策は!?」
空き教室に集まっていた数名の誠央学園の学生達はある資料を見て全員が怒りを露わにしていた。
「ねぇ,これって本当の話なの?
「間違いない。今日,社交部に入る所を見掛けた学生達がいるらしいぞ。おそらく,この支援の協力をお願いに行ったんだろう――くそっ!あいつの所為で交流試合からずっと不利なことばかり続いていやがる!」
男子生徒は近くに会った机を思いっ切り蹴り倒して怒りをぶつけた。
本来ならあの交流試合で色々と
これも全て
「
「馬鹿なこというなよ!あいつは星稜学園の学生だぞ?手を出したら俺達だってどうなるか――」
「何を怖気づいているんだ!?俺達にはどちらにせよ明日なんてもうないだろう!?あの支援策で
「そうよ!この際,あの男の子を捕えて
「悪いが……お前達は全員ここで終わりだ」
「「!?」」
声をした方を振り向くと教室の扉がガラッと開き,風紀委員会の制服を着た強面の学生とスーツを着た男性教員が立っていた。
「あんたは風紀委員長の
「残念だが君達はここまでだ。話を聞かせてもらうからそのつもりでいてくれ」
「おい,あいつ等をひっ捕らえろ!」
後ろに控えていた風紀委員は教室に居た数名の誠央学園の学生達を拘束した。
「離せよ!!一体,俺達が何を……」
「先程,お前達が話していた内容は録音させてもらった。他の空き教室を封鎖していたとはいえ……まさか,空いている1つを使うとは思っても見なかったぞ」
「なっ!?」
教壇の中に入っていたボイスレコーダーを見せると彼等は真っ青な顔をした。
「そいつ等を連れて行け!話は事情聴取室でじっくりと聞いてやる!」
最初は暴れていた彼等も状況を理解したのかそれ以降は暴れることはせずに大人しく拘束されたまま連れて行かれた。
「――
「いえ……元々はこちらが招いたことですから。それよりも,彼等が言っていた支援策と言うのは本当のことなんですか?」
「事実だぞ。昨日の夜,
そう言って彼女の肩を叩くと彼は他の風紀委員達と共にその場を後にした。
「……よかったな,
「
「
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