第30話 真白なる楽園は存在していた
「
「
放課後のHRが終わり,僕はクラスメイトの男子達に昼間の食堂の出来事を問い詰められていた――のだが,それは彼等だけではなく……。
「
「
「
「皆も落ち着いて――というか,先生も混ざらないでください!」
男子は問い詰めて来るだけなのだが,女子は僕が複数人の女性と交際をしているのではないかと勘違いを始め出して自分達もチャンスがあるのでは思ったらしい。
しおりん先生は妹の
「何度も言いますけど僕が付き合っているの
「それはそれ,これはこれ!それでどうなの,
必死で聞いてくる女子達に冷や汗をかきつつあったがそれよりも赤い目を光らせて殺意を飛ばしている男子達の方が気になりだして来た。
「君達もその辺にしておきなさい。あと,
珍しく教室にいた副担任の
「
「だからハーレムじゃないって言ってるでしょう!?」
「――自分も昔に似たような状況だったからあまり
先生にそう言われて僕は教室を見渡すと
こちらの様子を見て先に向かった――というよりも巻き込まれると思い先に逃げたのだろう……解せぬ……。
「自分も今日は顔を出す予定だから一緒に行くか?
「そうだね。
しおりん先生の言葉で本日はお開きと思ったのか僕の周りにいた女子達は挨拶をすると僕の周りを離れて行った。
「じゃあ,行くか」
「それにしても,
生徒会室に向かいながら歩いているとふと
「ほとんど義妹の影響ですけどね。でも,皆からは良くしてもらっていますよ。それよりも,アンちゃんだけじゃなくてあなたも誠央学園に潜入していたんですね」
僕の言葉に先生は苦笑したが真面目な顔付きになった。
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「司馬教官,アンちゃんが誠央学園に行きたいと言った理由は何でですか?訓練校を卒業した僕達は必ず星稜学園に行くことが決められていたはずでは?」
僕達は訓練校を卒業したら通例ならそのまま学園に通わず任務に明け暮れるか星稜学園に入学することが決められているはずだ。
今回に至っては特例――あの事件で約束したことが原因でほぼ全員が星稜学園に通うことになったのに何故彼女だけ誠央学園に行きたいと言ったんだろうか。
彼女から未だにその理由を教えてはもらっていないのだ。
「彼女本人が調べたいことがあったとは聞いている。まあ,本部長も学生として潜入してほしいと思っていたから渡り船であったみたいだがな」
「そうですか――あと、もう1つ聞いてもいいでしょうか?」
「ん?君が俺に質問とは珍しいな」
訓練校で優等生,その辺の情報なら一人で調べられるはずの僕が尋ねてくることが余程珍しかったのだろう。
本来なら自分で調べられるが義妹とあの事件以降は無茶をしないと約束をしているので自分で調べようとしていないのだ。
「
「――そのことか……正直,大したことではないぞ。
「最初から決められている?」
「そのことを生徒会室で話す予定だ。早く行くぞ,遙人」
「待ってくださいよ,
「先生だ。学園でその呼び方はどうかと思うぞ?それに
「いい加減にしてよね。やめる気はないって言っているでしょう!」
二人で歩くのを止めると声をした方を振り向いた。
「今の声は……」
「
「わかった。学生同士の喧嘩だったら風紀委員会に連絡して対処しておいてくれ」
別れた
「何度も言わせないで!私はもうあの喋り方をしないって言ってるでしょう!」
「そんなことを言わないでくれ,
――やはり,
声をした方を下から見上げると踊り場で誠央学園の制服を着た1年生の男子生徒と何やら言い争っているようだ。
「
「そんなのは彼の勝手でしょう!?私は元々こっちが本当の私よ。何で彼のために仮面を着けないと駄目なのよ!」
溜息を吐くと彼女は男子生徒の前から立ち去ろうとした。
「もういいかしら?この後,生徒会室で大事な話があるから」
「待ってくれ!話はまだ――」
慌てた様子で男子学生は
――だが,次の瞬間……。
「ッ?!キャァァァァァァ!!」
叫び声を上げたことで男子生徒は慌てて状況を理解して手を引っ込めた。
彼女は男性恐怖症――男性に触れられようとしただけで拒否反応が出ることは皆が知っているはずなのだが彼はそんなことも躊躇せずに彼女の腕を掴もうとしたのだ。
「す,すまない……ワザとじゃ……」
「あなた達って何でいつもそうやって私に触れようとするのよ!?私の体質のことを知っているはずでしょう!?」
涙目になり身体も若干震えながら
「二度と関わらないで!それに,私はまだ彼のことを許して――えっ……」
身体が震えていことで覚束ない足取りになっていたのか階段を踏み外してしまい転げ落ちそうになってしまった。
「――危ない!!」
階段の陰から様子を見ていた僕は隠れるのを止めて階段へ飛び出した。
――間一髪であった……。
慌てて出て来たことで階段で彼女を上手く受け止めることが出来ずに僕は彼女と共にそのまま階段を転げ落ちてしまった。
「ッ……あれ?……痛くない?」
薄っすらと目を開けた彼女は階段から落ちたのに無傷であることに驚いていた。
「イテテ……
「えっ――ハル!?」
下を見ると僕を下敷きにしていることに気付いたようだ。
「ど,どうしてハルが下に!?」
「さっき声が聞こえてきてね。様子を見に来――!?」
「……ハル?」
僕は言い掛けようとして目の前の光景に絶句してしまった。
彼女が無事だったのはいいが,
僕が何を言いたいかって?
敢えて言わせてもらおう――目の前に純白の楽園が広がっていたのだ!
「どうしたのよ,ハル?さっきから無言になってい――!?」
それと同時に廊下から誰かが走ってくるような音が聞こえた。
「こっちだ,
「連絡ありがとう!あなた達,一体何をし――って
慌てた様子で風紀委員を引き連れた
「なぁ,
「え,ええ。それにしても
「付き合っているって言ってだけどあの二人ってもうそんな関係なのか!?」
「あ,あなた達!!ここは学園よ!!何て破廉恥な格好をしているのよ!!」
「
「言い訳する前に自分の格好を何とかしなさい!」
顔を真っ赤にしながら体を震わせて叫ぶ
よく見るとスカートを押さえているとはいえ僕は
そして,
「え~っと,
「ッ……キャァァァァァァ!!!」
本日2回目となる彼女の絶叫と共にバチンッと学園中に響き渡った音は後に学生達の間で噂となり僕と美陽ちゃんが熱愛であることは周知の事実となってしまった。
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