第28話 橘美夜子の婚約者
「おはよう~」
「皆さん,おはようございます」
僕は学園に入る前に何とか
あんな状態で教室へ入るとあらぬ誤解を生んでしまう恐れがあったからだ。
――だが,世界とは時に無慈悲で残酷であるのが世の常であって……。
「
「トミー,おはよう。朝っぱらから元気だね」
暑苦しい親友の言葉に僕は若干顔を引き攣らせていた。
「当たり前だろう!お前に色々と聞かないと駄目だからな!今朝,登校中に
トミーの言葉を聞いた男子生徒達は目を赤く光らせて一斉に僕を見た。
逆に女子達は
僕と
「何度も言うけど君達が期待していることなんてないよ?」
「別に期待してない!ただ,お前が羨ましいだけだ!」
「そんなはっきりと言わなくても……」
チラッと
「まあまあ,お前等その辺にしたらどうだ?」
「
教室で委員長と話し込んでいた
「見方を変えると
「……そうだ。今までは
「俺達にもまだチャンスが残されていたか!?」
男子達は一斉に雄叫びを上げ出した。
僕と結婚するとまで言っていたことで男子達は義妹のことを諦めていたが,僕が
――だけどね,君達……肝心なことを忘れていないかな?
「でも,
「……星稜学園の男子達は分かるけど何で
落ち込む男子達に尋ねると一人の男子生徒が重い口を開いた。
「この間の交流試合で
「君達,よく蒼の騎士団に入ろうと思ったね……」
「「蒼の騎士団?」」
呆れた口調で言う僕の言葉に皆は唖然とした顔をした。
――
入学当初は彼女に好意を抱いている男子生徒達が作ったファンクラブであったが,GW以降に学園の社交部が関わったことで組織体制が急変。
男子生徒だけでなく彼女に見惚れた女子生徒まで加入してその規模は学園の3分の1が加入していると言われている。
そして,この組織ではある鉄の掟が決められており『蒼の騎士団は
「……何,そのファンクラブ?」
「俺達が聞きたいぐらいだよ!
「僕に言われてもねぇ……。ただ,内部でも義妹と恋人になりたい熱愛派と義妹の幸せを第一に考えている忠臣派とか色々な派閥に分かれていて……」
「「それ何処の国家勢力だよ!?」」
――君達のツッコミは痛いほど分かる……団長である僕もこれ何処の帝国ですか?と未だに理解が追い付いていない状況でもあるのだ。
おまけに序列を貴族階級で分けており本当に何なのこの
「ユフィちゃんって本当に変わった子よね。弱点ってないのかしら」
女子生徒達に囲まれていた
「あの子に弱点はあるよ――弱点というか問題点が……」
頭を抱えた僕を見て理由を知っている
「どうしたの,ハル?それに
「
「
教室の扉からいつも通り
「
「いや,二人に話あるんだが……」
言い難そうにしていると後ろの方から誠央学園の制服を着た銀色に近い髪の色をした男子生徒が出て来て僕達の方に頭を下げていた。
「うわぁ!?誰あの男の子!?」
「誠央学園にあんな男の子いたんだ……」
星稜学園の女子生徒達は驚いた顔をしていたが何故か誠央学園の学生達は彼の姿を見ると困惑した表情を浮かべた。
「
彼の姿を見ると
「急に訪ねて来てすまない。少し話をいいだろうか?」
「私は別に構わないけど……ハルもいいかしら?」
「僕が構わないよ。少し場所を変えようか?」
僕の提案に納得してくれたのか
「
「おう,任せておけ」
「――ここって?」
空き教室ではあったが,何やら机や段ボールが敷き詰められていて教室というよりも物置のような教室に見えたらしい。
「生徒会で必要な備品を置いている教室だよ。本来は旧校舎に置かないと駄目なんだけどあそこは場所が遠いからここの教室を置き場所に使わせてもらっているんだ。まあ,それは表立っての理由だけどね」
星稜学園でも問題は色々とあり,秘匿する内容が多かったりもする。
そのために,生徒会室とは別にこうした空き教室を利用して密談をする場所をいくつか設けていたりするのだ。
「それで,
僕達を呼んだ理由を彼に尋ねると彼は先程よりも深く頭を下げた。
「
「……
「ええ。彼の名前は
頭を下げる彼の名前を聞くと僕は少し驚いてしまった。
そして,今回の誠央学園で起きた事件で
しかも,彼が
「あの事件を起こした
「ええ。だから私は
未だに頭を下げる彼を見て
しばらくすると,彼は頭を上げて僕の顔を見た。
「
「別に怒ってないよ?彼女も被害者でしょう?」
僕の言った言葉に彼は目を見開いたが
「
事件が起きた交流試合から数日経ったが,未だに彼女が自分達の前に姿を現さないことが気になっていたのだ。
「大半の生徒達は問題を起こした彼と同じ様に見られたくないのか試合に出ていたバスケ部の人達を中心に独自に謝罪をしたいと言っているよ。ただ,一部の状況が問題でね――
彼女の周りにいた1年生は今回の事件を得て半数以上が離れた。
そして,試合に出ていたバスケ部を中心に
だが,大多数の人が今回は謝罪はするだけであって
そして,彼が言った問題とは
「彼等は謝らないと主張する処か
「あと,残ってる生徒達って退学させられた生徒から
要するに先日の交流試合でこちらに誹謗中傷した生徒達でもあるのだ。
よりにもよって今回の事件で一番問題を起こした生徒達が未だに問題を起こしている状況――自分の周りに未だに残っているので橘さんは頭を抱えているという。
「
僕達は本当にどうしようか考えていると黙り込んでいた
「
「ッ……
――だが,直ぐに真剣な顔を付きになって彼を見た。
「
彼女から出た言葉を聞いて
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