第1章 第3節 誠央学園と星稜学園

第17話 学園スポーツ交流会!開幕!

「誠央学園と星稜学園のスポーツ交流会?」

「内容はバスケ対決か――ん?おい!?これってどういうことだ!?」

赤松あかまつ先輩と白星しらほし会長が決闘!?しかも,メンバーは1年生のみって……」


 クラスメイト達は貼り出された誠央学園と星稜学園のスポーツ交流会――昨日,商業施設で赤松あかまつ先輩から提案された勝負方法が書かれた張り紙を見て驚いていた。


「なぁ,遙人はると赤松あかまつ先輩の目的って何だと思う?」


 騒いでいるクラスメイト達を見ながら翔琉かけるが僕に尋ねて来た。


「ごめん。流石の僕でも分からないよ。百歩譲って決闘の理由は分かるけど自分達が出ずに1年生達を使うってのが分からないんだよね」

「だよな。そもそも、1年生と2年生って仲が悪いはずなんだよな」


 横領告発事件前から誠央学園の1年生,特に女の子達のとあるグループが上級生に多大な迷惑行為を繰り返していたのだ。


 そして,本柳もとやなぎ君が起こした事件で1年生と上級生達は完全に亀裂が入り,一部の1年生達を除き大半の1年生は上級生から嫌われているのだ。


赤松あかまつ先輩の取り巻き達も全員2年生だし,あの人も何度か女子のグループに迷惑を受けていたから1年生は毛嫌いしているはずなんだけどな」

「要するに先日の話からすると常盤ときわさん達はその一部ってことなんだね」


 チラッと教室で青葉あおばさんや結衣ゆいちゃんと談笑している常盤ときわさんを見るとこちらと同じことを2人と話しているようであった――と思ったら,こちらの視線に気付いたのか僕と目線が合うと顔を赤くして慌てて視線を逸らした。


「――やっぱり,怒ってるかな?」

「いや,あれは単に恥ずかしがっているだけだぞ」


 決闘の詳細を話し合った後,赤松あかまつ先輩と別れた僕達は聖人まさと会長のお誘いを受けて皆で最上階にある高級和食屋さんに行ったのだ。


 そこで義妹がデート?の詳細を常盤ときわさん達に聞くと青葉あおばさんと結衣ゆいちゃんが拉麺屋さんのことを教えてしまい,のことがバレてしまったのだ。


「気にしなくていいと思うぞ。怒っているわけじゃないからな」

「それは僕でも分かるんだけど気まずくてね。そういえば,常盤ときわさんって男性恐怖症だけどあれは大丈夫なの?」

「問題ないわよ?」


 振り向くとそこには青葉あおばさんが立っており,その後ろには――気まずそうにしていた常盤ときわさんと彼女の背中を押して連れて来ていた結衣ゆいちゃんがいた。


美陽みはるが駄目なのはであって男の子が触れていた物じゃないから。そうよね?」

「え,ええ。だから,神条かみじょう君とした間接――っ!?」


 言い掛けるとやはり恥ずかしいのか顔を赤くして悶えそうになっていた。


 そんな顔をされると僕まで恥ずかしくなってきそうなんだけど。


「あれぇ?遙人はると君も照れてる?」

「僕も男だからね。可愛い女の子とあんなことがあったらそうなるよ」

「か,可愛いって!?」


 先程と同じように悶えそうになっていた常盤ときわさんと照れた顔をした僕を見て3人はニヤニヤした顔をしていた。


「んん?遙人はるとぉ,常盤ときわさんと何かあったのかぁ?」


 こちらの状況が気になったのか他の男子達と話していたトミーが尋ねてきた。


「別に何でもないよ。それよりも,男子達は集まって何を話してるの?」

「何って交流会の話に決まっているだろう?スポーツ交流会だぜ?ここで雄姿を見せて誠央学園の女子達とお近付きに慣れるチャンスだろう?そうだよな,お前達!?」

「「おおう!!」」


 教室にいた星稜学園の男子達は今回の試合にかなり乗り気であった。


 だが,よく見ると誠央学園の男子生徒達も混ざって話し込んでいたのに何故か彼等は星稜学園の生徒と違ってあまり乗り気ではないようだ。


「君達は乗り気じゃないの?」

「乗り気というか――トミー達には非常に申し訳ない話が……」

「申し訳ない?」


 彼等の言った言葉を不思議に思っていると近くにいた青葉あおばさんが代弁してくれた。


「言っておくけど,あんまり期待しない方がいいわよ?」

青葉あおばさん、それってどういう意味?」

「そのまんまの意味よ。今の1年生の女子達って本柳もとやなぎ達の迷惑行為で男子達のこと毛嫌いしているから。……あと,女子の中にも問題児がいるから」


 横領を告発して有名人となった本柳もとやなぎ君――だが,その後の彼の取り巻き達,石神いしがみ君達の行動が問題であるらしい。


「前々から女の子にちょっかいを掛けていたけど事件以降は今までよりも酷くなっているわね。自分が地方議員の息子だって言って無理やり言うことを聞かせようと」

「でも,石神いしがみ君達もあの子達には声を掛けないよね」


 話を聞くと本柳もとやなぎ君達の取り巻き達が自分より権力の低い女子生徒に迷惑行為を繰り返しており,女子生徒の中にも権力を使って迷惑行為を繰り返している子達がいるので男子も女子もお互いに関わりたくないのか恋愛関係にはかなり消極的らしい。


「だけど,お前達って恋愛したいんだろう?」

「そんなの当たり前だろう!こっちに編入する前に貰った資料を見たら可愛い子ばかりだったから星稜学園の生徒ならチャンスはあるかなと。それに,1年生に物凄く可愛い女の子がいるって噂だろう?」


 1年生の可愛い女の子――もしかして,彼等の言っている子って……。


「もしかして,ユフィちゃん?」

「ユフィちゃん?外国の人か?」

「いや,あだ名だよ。名前は神条悠姫かみじょうゆうひ悠姫ゆうひだからユフィちゃんってこと」

「へぇ~,そんな子がいるんだ。そういえば,神条かみじょう君と同じ名前のような――」

遙人はると君の義妹だよ?」

「「何だってぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」」


 僕が説明する前に結衣ゆいちゃんが真実を話すと誠央学園の学生達は男女問わず,僕の前まで詰め寄って来た。


神条かみじょうってあんな可愛い子が義妹さんなのか!?羨ましいぞ!いや,お義兄さん!是非とも,義妹さんの紹介を!」

「一人だけ抜け駆けするなよ!!ズル過ぎるぞ!!」

「ねね,神条かみじょう君!義妹さんってこの学年の首席なんでしょう!?お近付きになりたいんだけどお願いってできるかな!?」


 僕の周りにいた子達を見て僕だけでなくクラスメイト達が苦笑していると常盤ときわさんは溜息を吐いて彼等を止めようとした。


「皆さん,落ち着いてください。神条かみじょう君が困っているでしょう。それに,義妹さんに会いたいのは分かりますが,義妹さんの意思も――」

「私がどうかしましたか?」

「「えっ?」」


 声をした方を振り向くと教室の扉の方に噂の張本人,義妹といつもの2人がいた。


「ユフィ?どうしたの?」

「少し兄さんに用事があって来たんですが,お邪魔だったでしょうか?」


 教室の雰囲気を見て少し笑うと僕の近くまで歩いて来た。


「……可愛い」

「えっ?嘘?本当に可愛いんだけど……」

「可愛いもあるけど綺麗……。駄目よ私!?そっちに目覚めたら!?」


 誠央学園の子達は義妹を見ると見惚れる子達が大半であり,一部の女子達は何かに目覚めそうな勢いでもあった。


 だけどね――君達は義妹の本性を知らないからそんなことが言えるんだよ?


 そう思っていると教室にいた数名の男子と女子が立ち上がり義妹の前まで来た。


「「お疲れ様です,姫様!!」」

「「……姫様?」」


 彼等の言葉を聞き,やはり不思議な顔をしていた。


 それは勿論,僕の近くにいた常盤ときわさん達も同じであるようだ。


「ユフィ,姫様ってどういうこと?」

「私の2つ名が蒼天の瑠璃姫プリンセス・ラピラズリなのでそこから親衛隊の皆さんにはそう呼ばれていますね。あと,その関連で兄さんは王子と呼ばれています」

「親衛隊に姫,王子……」


 義妹の説明を聞いて誠央学園の学生達は驚きを通り越して宇宙猫になっていた。


「まあ,初めて聞いたら皆はそんな顔をするよね――あと,そこで笑いそうになっている3人。常盤ときわさんもだけど笑わないでくれるかな?」

「ご,ごめんなさい。少し可笑しくて……」


 常盤ときわさんは謝ってくれたが,3人は僕の顔を見て笑い出してしまった。


 僕だってそう呼ばれるのは恥ずかしいんだけど彼等がまったくやめてくれないから仕方がないでしょう!と思いながら不貞腐れた表情をした。


「……兄さん,嫌なら皆さんに止めるように言いましょうか?」

「少し恥ずかしいけど嫌ではないよ。気にしなくていいから」


 困っている義妹に問題なく言うと彼女の頭を撫でた。


 最初はくすぐったそうにしていたが嬉しそうに微笑み出し,顔も徐々にふにゃりと蕩けてきた――が,その顔がとんでもない破壊力であったらしい。


「か,可愛すぎる……」

「私,もう百合でもいいわ!あの子,可愛すぎる!!」


 男子達だけでなく女子達まで虜にしてしまったようだ。


 ――何名か鼻血を出して悶えている男子達がいたが大丈夫だろうか?


「ところで,何か用があったのかな?」

「はい。放課後に聖人まさと会長が大事な話があるので生徒会室にと。それから,トミー君も生徒会室に連れてくるように言われています」

「俺も!?何で!?」


 驚いているトミーを他所に僕は大体の理由は分かってしまった。


「放課後に生徒会室だね?わざわざこっちまで来て連絡ありがとう」

「はい♪それでは,失礼しますね。――そういえば……」


 チラッと戻ろうとすると義妹は何故か常盤ときわさんを見つめた。


神条かみじょうさん?」

「ユフィで構いませんよ。親しい人は皆そう呼びますので」

「じゃあ,ユフィちゃんで。それで,何かしら?」


 不思議そうにする常盤ときわさんを見て何故か義妹は微笑んでいた。


 ――だが,僕はその顔に見覚えがあり,あれは悪戯をする前の子供のような顔だと直ぐに分かった。


「あの後,兄さんとは何か進展があったか気になりまして」

「えっ?」

「「えっ!?」」


 義妹の発言に教室の皆は常盤ときわさんだけでなく僕にも視線を送った。


美陽みはるさんなら特に問題はないと思いますので教えてくださいね。それでは」

「ちょ,ちょっと,ユフィちゃん!?」


 何事もなかったかのように義妹が教室から出て行くとクラスメイト達は常盤ときわさんだけでなく僕にも視線を向けていた。


遙人はると常盤ときわさんと何かあったのか?」

「進展ってどういうことだ?王子様,僕達お話が聞きたいなぁ?」

「詳しく話を聞こうか?……義妹だけでなく常盤ときわさんにも手を出したのか?」


 男子達の圧力に僕は顔を引き攣らせながら笑うしかなく常盤ときわさん達は女子達から根掘り葉掘り詳しく事情を聞かれていた。


 そんな状況を見て翔琉かける青葉あおばさん,結衣ゆいちゃんは笑っていたが――教室にいた誠央学園の学生達は僕達を見て有り得ないという表情で驚いていたのだった。

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