外伝 想いはたった1つだけ(悠姫視点)
※この外伝は遙人達が商業施設で遊んでいる時の別の話になります。
「――
車から降りると数名ほどのスタッフとスーツを着こなしている初老の男性が私達を出迎えてくれた。
本日,私達星稜学園の風紀委員会のメンバーは
「ところで,そちらの方が
「星稜学園の2年生,
初老の男性,この商業施設一帯を任されている総責任者の本部長は挨拶をした
「君が
「ぐっ――出来ればその呼び方は……って,お前達も笑うな!特に
――昔からそうだが,私が通う星稜学園には生徒達からの親愛と信頼を込めて2つ名を生徒会より送られるという変わった校風があったりする。
私の2つ名,
「楽しい学生達ですね,
一人だけ誠央学園の制服を着ていた女子生徒がいたことに気付いたのか,その女子生徒は本部長と名乗る男性に挨拶をした。
「誠央学園2年生の
「
「はい,御蔭様で」
噂には聞いていたが,誠央学園で起きた事件で
そこを
「本部長,そろそろご案内をした方がよろしいかと。あまり大勢でここにいると他のお客様から目立ってしまいますので」
「確かにそうだな。
「ええ。では,案内をよろしくお願いします。」
本部長はスタッフ達を下がらせると私達と一緒に施設内を回り始めた。
「最近,学生達の往来はどうですか?」
「星稜学園の学生さん達以外に他の学園の子供達も大勢遊びに来ておりますな」
「となると,学生達がご迷惑を掛けてませんか?何ならこちらの風紀委員会が――」
そんな中,私や
「えっ!?
「はい――といっても,
今日の風紀委員会の用事がなければ,自分も兄さんに付いて行こうと思っていた。
やはり,兄と付き合う女の子――
「それにしても,
「珍しい?」
スケさんとカクさん以外に一緒に来ていた2年生の女子生徒の先輩が隣にいたもう一人の先輩同様に不思議そうな顔をしていた。
「だって,
「……実はそうでもないんです」
――
勿論,先生達も下の名前で呼んでおり,お姉様が男性の方であっても下の名前で親しく呼ぼうとするのはそれが理由であったりする。
「
「そういえば,
――知り合った男の子に行き成り下の名前で呼ぶのだ。
そして,女学園に通っていた学生達は可愛い子が多い。
男の子達に勘違いされるのは仕方がないことであり,私も星稜学園に進学してからはそこは徹底している――が,信頼を置くと直ぐに下の名前で呼ぶようになる。
「
「姫様が興味が沸いた男子生徒とは気になりますね」
「右に同じく」
後ろにいたスケさんとカクさんが珍しく私の話に参加してきた。
彼等は普段,私の話には参加せず,見守っているだけなのだ。
「
「どちらかといえば,姫様に相応しい男性かと言う方が気になります。最低でも王子ぐらいは力を示してもらわなければ」
「無論,姫様が何もするなといえば我等は従うのみです」
「あ~,ごめん。二人に聞いたのが間違いだったわ」
先輩は顔の表情を全く変えない2人を呆れた顔で見ると私は軽く笑ってしまった。
そんな話が聞こえて来たのか,本部長さんが歩きながら声を掛けて来た。
「面白い学生さんがいるものですな,
「
「何と!?彼女が1年生の
考え込んでいる本部長に
「
「朴念仁とは酷い言い方だなぁ」
「10年近くあいつの気持ちにまったく気付いていなかっただろうが」
珍しく不貞腐れた表情をしていた
「大したことはしていませんよ。ミス
「いや,あれはとんでもないスピーチだったぞ……」
「そうでしょうか?私はただお姉様の想いを細かく編集しただけで――」
幼い時に心臓に重い病を持ち,病院生活を余儀なくされたお姉様。
心臓を移植しないと助からないと主治医に言われて,両親共々その多額の費用に絶望していた所を入院していた
――だが,そんな
「後でお姉様から聞いたんですが,
多額の費用,数億という大金を無償で受けたお姉様達。
命を救われた者に取っては神にも等しい行動だと思うだろう。
もし,
だからこそ,
「あの時はお爺ちゃんが言っている意味がまったく分からなくてね。一時期はお爺ちゃんのことを相当恨んでいたよ。でも,成長するに連れて色々と学んでいく内にお爺ちゃんの言っていることがよく分かったよ」
――金は諸刃の剣,人を助ける薬にもなれば,人を殺す刃にもなる。
そして,人によっては人生を操る手段としても……。
だが,周りがそんな状況であっても――お姉様の心は1つの想いだけであった。
「病院で初めて出来た友達,一緒に遊んでくれた優しいお兄ちゃん。お姉様に取ってはただそれだけだったんですよ。そして,お姉様がそんな
「
「……はい?」
周りを見ると
そして,話を聞いていた本部長さんと先輩達からはすすり泣く声が聞こえた。
「……
「本部長!!皆がいる前でその話はやめて頂いて――って,
未だに笑ってる
余談ではあるが,お姉様が皆の前で盛大に告白したスピーチは
その影響もあって
「姫様がそのようなことをなさっていたとは――流石でございます」
「大したことはしていませんよ。あれは,お姉様が頑張っただけですから」
「謙遜ならさないでください。姫様が作った――!?」
「……カクさん?」
立ち止まり何故かある方向をずっと見つめ出した。
「
「さっき叫び声と一緒に王子の声が聞こえたような気が……」
「えっ――」
彼が言った言葉に私は眉を顰めると同時に直ぐに動き出した。
「
「
「おい,
「様子を見て来るだけです!何もなければすぐに戻って来ますので!」
私はカクさんを連れて声が聞こえた場所――最上階にあったゲームセンターまで急いで走って行ったのだった。
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