【燻された】ヨウセイジャーキーマルカジリ【結果】

「ふーむ、なるほど。ポテチの燻製もイケるな。燻製したことでより味わいが増したというか……」

「ウマウマ」

『酒じゃなくてもコーラとも相性抜群だゾ』

『それアンパンに牛乳って言ってるものじゃ……』

「しまったな、コーラ風味の酎ハイ買っておけばよかったな」


 ポテトチップスの燻製は、流石に自分では揚げず、市販されているポテトチップスを使っている。軽い食感はそのままに、程よい塩分と燻製の香りが食欲を増幅させる。いつも食べているメーカーのうすしお味のはずなのに全く別のポテチだな、これは。ただ、ポテチの為だけに燻製器取り出して作るのはぶっちゃけ面倒なので、他の燻製を作る時じゃないと作らなさそうだな。


「さて次は……ちくわにしようか」

「チクワ」

「オーロラが言うと少し面白いな」

『僕のちくわを-このコメントは削除されました-』


 自爆した奴がいるけどどうでもいい。さて、まずは一口……うん、美味い。美味いには美味いのだが……あぁそうか。マヨネーズだ、この燻製ちくわにはマヨネーズが合うわ。さっとキッチンからマヨネーズを取ってきて燻製ちくわにかけてもう一口。うん、完成したわ。これにさらにチーズをのせて炙ってもいいかも知れないな。


『ジョージ、ちくわには大葉が合うぞ』

「よくぞ教えてくれた!」

『おい馬鹿ジョージに大葉を与えるとは』

『漫画みたいにすぐにいなくなるのやめろ』


 視聴者によってもたらされた燻製ちくわに大葉という組み合わせは素晴らしかった。ついでに燻製チーズとも相性は抜群だった。流石は大葉、燻製が相手でも食う食われることなく互いの良さを引き立て合ってるじゃあないか。


『ってか調味料の燻製はしなかったの?』

「面白そうとは思ったんだけどね、今回は見送り。いつかプライベートで作るかもね」

『近くのスーパーで燻製マヨネーズならみたことあるな』



 さて、少しずつ紙皿の上に盛られた燻製の数が少なくなってきた頃、普段からは考えられないほどキリっとしたオーロラが話しかけてきた。


「ジョージ、ソロソロ……」

「お、おう。アレだな?」

『分かるんかい』

「そりゃ俺とオーロラ程ともなれば互いに言葉は不要というやつよ。待ってな、とびきりの物を持ってくるからよ」

『美少女エルフの口から語られる場末の酒場のおっさんマスターみたいな台詞よ』

「おっさん故」


 その言葉を残して俺は再び席を立つ。今回の配信で開始から今まで意図的に机に出さなかったものがある。燻製後、冷蔵庫でしっかりと冷やしたそれらをカメラにしっかりと映るように配置させる。オーロラは……よし、涎を垂らしてはいないな。だが、目で訴えかけてきている。早く食べさせろと。だが待て、まずは配信者として視聴者たちに見せびらかさねば。


「はい、今日のメインです」

『あの、後ろで解き放たれた野獣が唸り声をあげているんですけど』

「グルルルルル」

「オーロラステイ!」

『ジャーキーといぶりがっこか?』

「正解。正確には漬物の燻製だけど。俺も初めて知ったんだけど、いぶりがっこって燻してから漬けられるんだってねぇ」


 これを作った当初は「はい、これいぶりがっこです!」と紹介するつもりだったが、虫の知らせが届いて調べてみたら発覚した。恥ずかしい思いをする前に知れてよかった。


「で、このジャーキーはマグイャナ肉で作ったジャーキー」

「ジャーキー!!」

『あの、ジョージさん。驚きたいんですけど後ろの猟犬が飢えていらっしゃるので先にあげたげて』

「そうね、ほらオーロラ!あげるから大人しくしててねー」

「ジャーキー!」


 このままではオーロラの唸り声によって放送事故になりかねなかったので、お言葉に甘えて先にオーロラにジャーキを渡すことに。オーロラにしては珍しくひったくるように俺の手からマグイャナジャーキーを取るとブチィと勢いよく噛みちぎった。


「うンまー!!」

「それは良かった。いやぁ、ジャーキーは初めて作ったけど思った以上に手間かかるわ。本当に食べたいとき以外は市販になっちゃう」

『でもその手間で後ろの猟犬が喜んでるんならいいんじゃない?』

「そうかも。ってオーロラもう食べたんか。ほら、おかわり」

「オカワリ!」

「んじゃ俺はこの漬物の燻製を食べるとしますかね」


 切り分けられた漬物の燻製を口に頬り込み、まずは一噛み。ザクリと心地のいい音が立ち、燻製独特の風味と漬物の旨味が口の中にあふれる。正直、これを食べるまで色んな燻製味のものを食べてきたから飽きの兆候が見え始めていたがぶっ飛んだ。


「うーわっ、駄目だこれ美味い。こんなのお茶請けに出したらお茶何杯でもいけちゃうわ」

『酒カパカパ飲みながら何言ってんだ』

『ってかそれ何の漬物?いぶりがっこならたくあんだけど、わざわざ漬物って言ってる辺り大根じゃないよね』

「……HAHAHA、オーロラ、こっちの漬物も食べてみなさい。美味しいぞ?」

「ワカッタ!」

『露骨に話逸らしやがった!』

『絶対ヤバいもん使ってるな!?』


 はい、お察しの通り、この漬物の燻製の正体は当店自慢の一番ヤバい食材であるマンドラゴラの漬物です。親分マンドラゴラが推薦した、まさかの子分マンドラゴラの漬物。本人(?)がいいというのならと作ってみたがまぁ凄い物が出来ちゃった。配信には出したけどこれはマンドラゴラと言えないなぁ……

 この後も俺は視聴者からの問い詰めをのらりくらりと躱しながら、マグイャナジャーキーと燻製マンドラゴラを楽しんだ。……このマグイャナジャーキー、スープの出汁としても使えるかもしれんな。肉の旨味がよく出ていらっしゃる。

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