【山派です】この先生キノコるには【断じて山派です】

「ふぅ、戻って来れた」

「オカエリ」

『1分ほどホゲーとしてたな』

『もはや放送事故レベルの顔だったゾ』

「マジか。一応言っておくが、毒キノコは入れてないからな。俺の反応が過剰なだけだから」

『自覚はあるのか……』


 いやいや油断してしまった。ダンジョン産のキノコは普通のものに比べて旨味が段違いということに加えてにんにくと油の相乗効果で意識を持って行かれてしまっていた。これは〆のパスタにしたとき、俺は果たして正常でいられるのか不安だ。……ん?


「オーロラ、もしかして松茸食べた?」

「ウン、美味しかったよ」

「そうかそうか、なら俺も」


 俺が意識を飛ばしているうちにいい感じに火が通った松茸に用意しておいたかぼすをキュッと絞り、果汁を垂らす。なんかオーロラがすごい形相で見てくるんだけどもしかして君、そのままで食べてたの?いや、それでも美味しいと思うけど。

 さて、松茸だが予想を裏切らない美味さだ。かぼすのお陰で味も引き締まっているし、何より香りがいい。飲み込んだ後に冷やした日本酒を流し込むのもまたいい。今回は分かりやすく焼き松茸にしたが、次に機会があれば土瓶蒸しなんかもいいかも知れない。あれ、食べても美味いし飲んでも美味いんだよな。


「ワタシもやる!」

「いいけど、俺の分まで食べないでくれよ……?」

「キヲツケル!」


 まぁバター醬油炒めもアヒージョもある事だしね。焼き松茸だけばかりに構ってはいられないだろう。……そうだ。バター醬油炒めもバゲットに載せたら美味いよな?バゲットさんは広い心をお持ちだからバター醬油炒めも受け止めてくれるだろう。――見事、抱きしめてくれました。あ゛ぁ゛このザクザク感最高。


『ダンジョンって毒キノコってあるん?』

「勿論ある。けど、ダンジョンに生える毒キノコはそれはもう毒キノコぉ!!な見た目しているから見分けるのは実に簡単だったりするんだよ。だから地上にもある食用キノコを採る分には割と楽……と言いたいところだけど、モンスターは普通に徘徊しているから注意しなきゃ怪我するから気を付けてな」

『そりゃそうか』

『ダンジョン固有の食べられるキノコもあるの?』

「あるにはあるけど、そういうのは大体スイーツ的な甘さがするんだよな。そういうものだと思って食べる分にはいいかもしれないが、見た目カラフルだからなぁ。ほぼ毒キノコに見える」


 さらに言うと、ダンジョン固有のキノコは薬用として使われることが多いから食品として出回ることはそうそうない。ちなみにオーロラが一度そのダンジョン固有のキノコ(無毒)を食べた所「チョコの味がする!」と言っていた。うん、それを食材として使うのは俺は無理だな……


「薬用のキノコは高く売れるが、毒キノコと間違えやすいから注意だ。間違えても物によっては毒キノコでも買取はしてくれるけど。ちゃんと確認はするように」

『でもジョージなら毒キノコ食べても解毒できそうね』

「試したくないし、仮に解毒できたとしても毒キノコは食べたくないわ」

『最初にキノコ食べた人本当に尊敬するわ』


 その点に関しては本当に同意である。もしかして、ダンジョンが出来る前からスキルは存在していて毒耐性のスキルを持っている人が食べて確認したのかもしれないな。



「ん-、美味い!油がパスタとよく絡んで……ワインも止まらん!」

「ジョージ!ワタシのも炭酸水で割って!」

「ほいよー」


 バター醬油炒めと焼き松茸を食べきって、最後に残ったアヒージョの油を惜しげもなく使って作り上げたのは当初の予定通りパスタである。ただ、鍋で茹でるのが面倒だったので電子レンジパスタ調理器でパパっと茹でさせてもらった。

 それに合わせるワインは趣向を変えて炭酸水で割ったスプリッツァーと呼ばれるものを飲んでいる。視聴者に勧められたときは半信半疑だったが、これがのどごしスッキリで美味い。夏にピッタリだわこれ。


『同じ麵料理食べてるはずなんだけどなぁ……誰かカップ麺をパスタにする方法知らん?』

『オリーブオイルでも入れてろ』

『啜れぇ!』

「ダメダメ。パスタ啜るのはマナー違反でしょうが」


 配信外で家で食べる時には啜っているけれど、別に言う必要は無いだろう。

 さて、アヒージョパスタに舌鼓を打ちながらコメントを読んでいると興味を引く物があった。


『パスタも美味いが、その油でチャーハン作ってみな、飛ぶぞ』

「へぇ、チャーハン。これは良い情報を聞いた。」


 今までアヒージョの〆と言えばパスタのイメージしかなかったが、なるほどチャーハンか。今度アヒージョを作る時があったら次の〆はそっちを試してみようか。……まぁ、キノコ欲は解消されたから暫く出番は無いかも知れんが。え?アヒージョうどんもある?何それ

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