【ダンジョンのキノコには】合法キノコです【ご用心】

「はぁい、皆の衆。ジョージの酒飲みチャンネルの時間だ」

「ハァイ!」

『今日はきのこ尽くしか』

『卓上コンロで焼いてるの松茸かよ。ご立派ァ!』


 須藤さんと出会ったキノコ狩りから翌日の配信。思ったよりもキノコが採れていたので折角だからと画面越しの視聴者の皆様にもおすそ分けという名の自慢を決行することにした。


 今日のメニューは多種多様なキノコのバター醬油炒めwith突進猛猪のお肉。肉の風味をキノコに移したいだけなので、肉自体は少量だ。それとコメントでも触れられた松茸の直火焼。一本丸ごとそのまま焼きたかったのだが、それはそれで時間もかかるので、敢え無く割いて焼いている。そして、キノコのアヒージョ。これはもう須藤さんのトークに影響されたからだ。あのあと俺もオーロラもずっとアヒージョが頭を巡ったからね。


「やばいよ、この空間。いい匂いが充満しすぎているだけで腹が減る。何度配信前に手を出そうと思ったか」

『いつもは割ときれいに揃っている箸が滅茶苦茶なのはそのためか』

『箸注目してる奴いて草』

『気づくか』


 箸が乱雑に置かれているのは否定しないけれどそこまで見られているとは思わなかった。そこはこのジョージの目をもってしても見抜けなんだ。しかし本当に暴力的な匂いだな。バター醬油は言わずもがな、松茸やアヒージョも負けちゃいない。

 そんな時、少し静かになった配信の中でキュルル……と小さくか細いが確かに音が鳴り響いた。


『お?なんだ今の音』

『腹の虫でも鳴いたか?ww』

『オーロラちゃんかな?』

『我慢できなくなっちゃったかー』

「チガウヨ?」

『え?』

『ん?』

『オーロラちゃんじゃない?』

「あー、すまん。今の腹の音は俺だ」

『嘘だろ』

『ジョージの事だから鳴るとしたらもっと豪快なものかと』

「それはそれで嫌だろ」


 間違いなく俺の腹から出た音にオーロラが疑われたから自供したのに何て言い草だよ。別に元男の腹の音がこんな音でもいいだろうがよ!絶対お前らもこの空間にいたら腹鳴り響くからな!ちなみに、オーロラも腹の音は鳴るには鳴るが、そもそも小さいオーロラから聞こえる音がかなり小さい。傍にいて尚且つ耳を澄まさなければ聞こえないレベルだ。配信上でオーロラの腹の音が乗るならオーロラがマイクに抱き着かなければ無理だろうな。


 そんなことより食事だ、酒だ!今日はキノコ!キノコと言えば、そう白ワイン!大小2つのワイングラスにワインを注ぐ。ビールをグラスに注ぐのは楽しさを感じるが、ワインをワイングラスに注ぐ瞬間は綺麗に注げているかどうかと少しばかり緊張してしまう。――まぁ、うちの配信でそこで突っかかる人はいないだろうけど。


「さて、松茸はもう少し焼く必要があるが……オーロラ、何から食べる?」

「バター醬油炒め!」

「お、気が合うな。俺もバター醤油炒めスタートの気分だ」


 顔を合わせて笑い合い、俺とオーロラはバター醤油炒めを箸で掴む。今回のバター醤油炒めに入れたキノコは数知れず、もちろん毒キノコは入れていないが、作った俺も正直何を入れたかまでは覚えていない。ただ、今俺が取ったのはエリンギとえのきときくらげか。パクりと口に放り込むと、襲ってきたのは味の爆弾だった。分かっていたことだが、キノコとバター醬油の組み合わせは最強すぎる。それだけでもTier1レベルなのに突進猛猪の肉の風味まで加わってしまえばぶっ壊れよ。これは飲まずにはいられない!


「んぐっ……プハァ!」

「オイッシー!」

『ワインを一気飲みしやがった』

『味わって飲みな?』

「ごめん、つい……」

「イタシカタナシ!」


 我ながらよろしくないなとは思ったよ?それでも求めずにはいられなかったんだ。恐るべし、バター醬油炒め……

 さて、お次はアヒージョだ。アヒージョの定番と言えばマッシュルーム。バター醬油炒めほどではないが他にもキノコは入れていると言ってもやっぱり最初はこれだね。……うん、美味い。が、俺にはこれが更にうまくなる方法を知っている。


「バゲット~」

『どこから出したしなんだそのネコ型ロボットボイス』

「フッ、エルフともなればこの位お茶の子さいさいよ」

「ハイゴに隠してたよ?」

「メッ!オーロラメッ!」

『あぶねぇあぶねぇ、危うく騙されるところだったぜ』

『純粋視聴者くんいて草』

『今日日お茶の子さいさい言う人いるんだな……』


 そんな茶番もありながらも、こんがりと焼かれたバゲットにまずはアヒージョの油をしっかりと染み込ませ、その上にキノコ数種類とにんにくを一欠けら載せて――ガブリと行く!


「っスゥー……」

「ジョージー、ワタシには大きいからカットしてー?ジョージー?」

『なんかジョージが宇宙猫みたいになってる』

『美味すぎたんだ、恐らく今頭の中で情報処理してる』

「アリガトー」

『あ、宇宙猫状態でもオーロラちゃん用のバゲットはカットしてあげれるのね』

『食レポしろ』

『無言でワインに手を伸ばすな』

「美味い」

『そりゃそうでしょうよ』

『酒飲み配信何年やってんだよ!』

『でも最近酒飲み配信増えたよな。昨日もVTuberが配信してたの見たぞ』

『俺も見た。スペアリブ焼いてたよな』


 あぁ……アヒージョと白ワインの組み合わせ、神過ぎるだろ。こんなの絶対止まらないじゃん。あーでも、焼き松茸には日本酒だよな。取ってこなきゃ

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