【ババンババンバンバン】疲れた時のビールは至高【ジー】
「くぁ……ジョージの酒飲みチャンネルの時間だよ」
「イェーイ!ミンナー見てるー?」
『あくび助かる』
『救われる命がある』
『オーロラちゃんのがテンション高いの珍しいな』
『ジョージの欠伸は大欠伸な印象だから解釈違いですね』
「本人を前にして解釈違いとは……?」
『珍しく遅い時間やん』
そう、いつもは夜の早い時間に配信を開始することが多いのだが、現時刻は22時。早い人なら既に寝始めようとする時間である。こんなに時間が遅くなった原因と言うのは、まぁ俺が疲れから寝すぎた結果なんですけど。
しかもまだ微妙に眠気残っているというね。そりゃ欠伸だって出ますよ。最悪寝落ちするかもしれないが、その時はオーロラが配信を切ってくれるでしょ。ちゃんと方法教えているし。
「今日はダンジョンに潜ってね、かなり疲れたからさっきまで寝てたんだよね。でも美味そうな食材手に入れたから配信したくてね……ハイ、今日の料理はこれ」
『ほう、棒棒鶏ですか』
『たいしたものですね』
大皿に盛られたそれは、輪切りにカットしたトマトを下に敷き、その上に千切りしたきゅうりを載せ、更にその上に茹でられたお肉を食べやすい大きさにカットしたものを乗っけて、ごまだれをドバっとかけた一品。いやぁ、我ながらトマトの赤ときゅうりの緑、お肉の白がいい感じにマッチングされている。芸術点高いよ。
さて、視聴者からも高評価を得たことだが、訂正しなければいけないことがあるな。
「これ、鶏肉じゃなくてマグイャナサウルスのお肉なんだよね。だから正確には棒棒鶏じゃなくてバンバンキョウリュウ?中国語は分からん」
『恐竜は中国語でコンノンだゾ』
『バンバンコンノン……語呂悪いね』
「そだね、棒棒鶏でいいや」
うん、棒棒鶏の方が圧倒的に言いやすいし、問題は無いだろう。
『いやあの、普通に流しているけどマグイャナって厄介なモンスターじゃん。買ったの?狩ったの?』
「狩ったの」
『ということは韮間ダンジョンおったんか』
む、察しのいい視聴者がいるみたいだな。まぁ現地でバレていなかったからいいけども。あのおっさん達パーティーがもしこの配信を見ていたらあの時の女が俺だと気づいてたかもしれないが。とは言え、配信見るタイプじゃ無さそうだし気にしなくてもいいだろう。
「苦戦はしたけどね、今食卓に並んでいるということはそう言うことよ」
「ホトンド、ジョージが斃したんだけどね!」
「何言ってんだいオーロラの援護もあったでしょうに」
『オーロラちゃんもいるとはいえ、ほぼ1人で狩るようなモンスターじゃないと思うんですがそれは』
『無茶はしないでね?』
みんな心配してくるな……ありがたい話ではあるけどね。勿論、心配されているからとダンジョンに潜ることを辞めるつもりは無いけどね。
ちなみに棒棒鶏に使われているマグイャナのお肉だが、視聴者も勘違いしたように言われなければ鶏肉と見間違えてしまうほどだがよーく見てみると少し赤みがある。鶏肉なら茹でが足りないのではとなるところだが、恐竜肉は赤いところがあっても問題なく食べることが出来るらしい。
「あ、酒はこれね」
「イイヤツだー!」
『プレモルじゃん』
『うらやま』
「やっぱね、疲れた日は高いビール飲みたくなるもんよ。ご褒美的なやつ。はい、これオーロラの分ね」
「ムー、ワタシも缶から飲みたい」
「飲み口からビール零れるの間違いないからダメー」
一度試させてみたのだが、まぁ零すわ零すわ。零して服が透けて配信にのせれないものになりそうだったからオーロラは専用のコップから飲むようにさせているのだ。下手すりゃ変な方向から叩かれかねない。
「それじゃまずはお肉単体で――っ!これは……!」
マグイャナの肉と摘まんで口に頬り込む。2,3回ほど咀嚼して、俺はその瞬間を逃すまいとすぐにもう片方の手でスタンバっていたプレモルを勢いよく喉に流し込む。炭酸の影響で目に涙が浮かんでしまうが、強く目を瞑りさらにプレモルを煽り――どこかまだ寝ぼけていた俺の脳内は完全覚醒を果たした。
「ッパハァ!うめぇ!!」
「プハァ!オイシイ!」
『やめろ、そろそろ寝るつもりだったんだ、そんな美味そうな顔やめろめろ』
『配信に来た時点で分かり切ってただろうになにいってだこいつ』
『どう?マグイャナの肉美味しい?』
「美味い。見た目はほぼ鶏肉なんだけど、鶏肉よか歯応えがある。噛むごとに肉の風味が溢れて、それがごまだれとマッチして……あぁ駄目だ。これは酒のお供だけじゃなくてごはんのお供としても優秀だわ」
「ソレ!ジョージ、ご飯食べたい!」
「炊いてないからパックご飯ね」
今日は本当に棒棒鶏だけ食べて終わりのつもりだったからご飯なんて炊いていなかった。朝食分のご飯は基本的に朝食で食い切っているからね。しかし、一度ご飯を思い浮かべてしまえばご飯を食べずにはいられない。幸い、こういう時のため――ではないが、防災用としてご飯パックは大量に用意してあるのだ。まぁ、ある意味緊急事態だからしょうがないよね!ご飯に合うのが悪い!
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