襲撃者の名は
「なるほど、こりゃ全然違うわ」
「食べられそうー?」
軽くため息をついて足元に倒れ伏す、3つの死体に目を落とす。そう、襲撃してきたモンスターは1体だけでは無かった。すぐさま襲い掛かってきたモンスターを一刀のもとに切り伏せた後、間髪入れず2体のモンスターが飛び掛かってきたのだ。まぁ、そいつらもオーロラの魔法によってすぐに絶命したのだが。
それにしてもオーロラさんや、斃してすぐに出てくる感想がそれですかね。襲ってきたモンスターは自転車ほどのサイズをした恐竜型のモンスター。黒い肌に鋭い爪にサメのように尖った牙。どれも
「このモンスターは流石に初見だからなぁ……調べなきゃならないな。オーロラ、周囲警戒よろしく」
「ハーイ」
スマホを取り出してカメラアプリを起動させてモンスターの写真を撮る。その写真をもとにウェブ検索をすると……よし、ヒットしたな。
モンスター名:イャナサウルス
基本的には1体だけで行動せず2匹以上の群れで行動し、狩りを行う恐竜型モンスター。獰猛で肉であれば強大な敵であろうとも喰らおうとする。攻撃の手段は恐竜型モンスター全てに言えるが主に噛みつき・爪・尻尾。小柄な体躯を生かし、俊敏に動くことが可能で広い空間で集団に遭遇した際には注意が必要。爪はナイフに、皮は強固ではないが、小物に用いられる。肉は食用可能で鶏肉に近い。
「オーロラ!こいつ鶏肉だってさ」
「バラさなきゃ!」
「物騒だなオイ。だが残念、恐竜型の解体方法は知らんから持ち帰りだなぁ」
「むぅ、ザンネン」
それに、こいつ等がベーシックダンジョンの常識ぶち壊して通路で襲ってくることから、このエリアで解体に集中するのは危険を招きかねない。とりあえずこの3つの死体はAカードに収納しておこう。
開幕から驚かされたが、戦闘自体に支障はない。調べた通り、確かに牙や爪は脅威ではあるものの、当たらなければどうということはない。攻撃の出は速いが避けられないものでもない。
「それよりも調理法だなぁ。オーロラ、何がいいと思う?」
「ンー……今までに食べたことないの食べたい」
「食べたことない、か。あ、ピンと来た。棒棒鶏にしてみようか」
「バンバンジー?」
「さっぱり寄りの肉って感じかな。今の季節にゃピッタリだ」
最近肉と言えば焼いたり揚げたりとどこかがっつり寄りのメニューが多かった気がするからな。冷たくてごまだれをさっとかけてきゅうりと一緒に食べてビールをグイっと行きたくなってしまった。
その後日にでも揚げ料理をしてもいいだろう。ワニの手よろしくフライドチキンならぬフライドザウルスにしても面白いかも知れない。
「よし、行くか。ただ今までの韮間ダンジョンと同じと思っちゃダメだな。オーロラ、警戒は怠るなよ?」
「ウン!」
オーロラにそう告げ、俺は右手に吽形、左手にヤドリギの矢を持ってダンジョンを進み始めた。単純な攻撃としてはヤドリギの矢で十分なのかもしれないが、願いを込めてから投げなければいけない特性上どうしても考える必要性がある。そのため、本能的に攻撃しようとしてもある程度抑えが効く吽形を持っておく必要がある。変なこと考えながら投げて事故したら目も当てられないからね。
さぁ、どんどん進んでいきますか。
・
・
・
「"頭を撃ち抜け"!」
「ギュェッ!」
ヤドリギの矢で最後のイャナサウルスの頭を撃ち抜き、この場に10体のモンスターからなる死体の山が完成した。何回かヤドリギの矢を投げて分かったことだが、イャナサウルスは明らかに他のダンジョンの雑魚モンスターに比べると力の消費量が多い。ゴブリン等が1とすると3と言ったところか。多いという訳ではないが、少なすぎるわけでもない。多用すればたちまち力尽きてしまうだろう。実際、今も疲れてきた。
「厄介だなぁ、休む暇がない」
「ツギツギ来るねー」
「イャナサウルスの動きとかよく分かってきたし、今日の所は一旦帰るとするか。ペース配分を考え直して改めて潜ろう……ん」
「ジョージ」
「あぁ、違うのが来たか」
通路の奥から新たなる群れがやって来た。が、今までの物とは明らかに違う。確かに群れを形成しているのはイャナサウルスで間違いない。が、今回は同一のランクの者だけではなく、上位個体がいる。
「キシシシ……」
まるで笑い声にも聞こえるその鳴き声の主はイャナサウルスを単純にサイズをデカくした個体、ではない。イャナサウルス特有の黒い肌には三日月にも見える紋様がいたるところに刻まれている。困ったな、無理をしてでもヤドリギの矢を投げるか?
そんな思考をめぐらす俺に構わず、上位個体と思えるそいつは大きな声を上げ、それに応じて周りのイャナサウルスが一斉に駆けてきやがった。
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