本当に魚かお前?
誰かが言った――冒険者には即断即決は大事だと。分かる分かる。冒険者は他の職業に比べて一層すぐに決断して行動しないと取り返しのつかない結果になることもある。俺はどちらかというと優柔不断な方だけれどここぞという時はすぐに行動するように決めている。
それが今だ。
「ようこそ相模浜ダンジョンへ。あまりお久しぶりと言えるほど期間は空いてはございませんが」
「ども、お世話になります」
「食べたい」と心の中で思ったのなら、既に行動は終わってるんだッてことで相模浜ダンジョン。受付の男性職員が言うように前回から1か月も経たないうちに来ているが、心なしか受付ロビーにいる冒険者が増えているように思える。
聞けば俺が前人未到のオウシャコガイをこじ開けることに成功してから、自分で開封してやると意気込む冒険者。もしくは前回の俺の様に自分以外の誰かがオウシャコガイの殻を放置したらそれを回収して売ってやろうというネコババ根性で来ている冒険者もいるらしい。
「前者はともかく後者はプライドないんか……」
「危険なしで稼げればいいんでしょう」
俺が持ち帰らなかったオウシャコガイの貝殻は相当高価な値段で売れたようで、あの時の冒険者たちはかなりのボーナスを得たようだ。楽して稼げるのは理想ではあるかもしれないが、いいのかそれで。
「私的には木原さん以外にオウシャコガイを開けられそうな人知りませんから、彼らが稼ぐには木原さんが開ける必要がありますがどうします?」
「いや、今日はカツオ獲るつもりなんでシャコガイは予定にないですね。そもそもそういうことならオウシャコガイの近くって冒険者いっぱいいますよね?」
「いますね。なのであまりあの近くに寄らない方がいいでしょう」
わざわざ騒動の渦中に行く必要も無いしな。シャコガイ欲は前回の手巻き寿司の時に満たされているから今はそうでもない。同じ貝類だとしても、今はサザエとかビナ貝とか……巻貝系を食べたい気分。ただ、それよりもカツオだよカツオ!いるの!?
「カツオ型のモンスターと言えば……
「えぇ、それも薬味たっぷりの」
「それはそれは……いけませんね、私までカツオの口になってしまう。ただ、追跡ガツオは先日討伐されました螺子鮪よりも強いのでお気をつけて。特徴といたしましては――」
・
・
・
「追跡ガツオってマジでそういう!」
「スゴイすごい!」
今、俺達の遥か上を奴は悠々と泳いでいる。奴こそが今回の標的、追跡ガツオだ。
男性職員から事前に追跡ガツオの特徴は聞いていた。爆発する小さな分体を飛ばしてくるカツオ型モンスターだと。いやまぁ、確かに聞いた通り追跡ガツオをそのまま小さくした分体を俺達目掛け飛ばしてきている。
でもさ……!
「潜水艦かよ!」
「ウヒョー!」
追跡ガツオ聞いていた以上にデカいよ!?イルカくらいの大きさって聞いていたはずなんだけど、今相対している個体は鯨レベルの大きさだ。食いではあると思うがそれを討伐となると普通では難しいだろう。
それに飛ばしてくる分体だよ。着弾すると同時に爆発するんだが?もはやミサイルなんだが?
奴の出方を見るためにしばらくは回避に徹していたけれど、このままドッカンドッカンされるとよろしくない。さっさと決着をつけるべきか。
そうと決まれば、ヤドリギの矢をAカードから出して握り締める。そのまま追跡ガツオに向けて投擲しようとしたその時。
「……!!」
今までロクに反応らしい反応を示さなかった追跡ガツオが急に視線をこちらに向け、声の様な音波の様なものを発したかと思うと、奴の体のあらゆる所からミサイル分体がロボットアニメさながらに発射されたではないか。
「まっず!"ミサイル分体全部墜とせ"!」
眼前の脅威に焦り、俺はミサイル分体を墜とすことだけを願い、ヤドリギの矢を投擲してしまった。それに追跡ガツオを含めておけばまた別だったのだろうが、既に投げてしまった故に、ヤドリギの矢はミサイル分体のみを狙って分裂し各個撃破する。
矢とミサイル分体がぶつかり、爆炎が海中を染め上げ、視界を悪くさせる。汚い花火だぜなんて言っている暇はない。
「!ジョージ!来るよ!」
「おう!?」
何かを感じたのだろう、オーロラが声を張り上げ俺もそれに倣って身構える。数秒もしないうちに爆炎を潜り抜け、追跡ガツオがその身一つでこちらに突っ込んできているじゃないか。気合入ってるなこいつ!
ヤドリギの矢を投げたいところだけれど、未だ全てのミサイル分体を墜としきれていないのか手に戻ってくる感覚はない。それよりも先に、追跡ガツオが激突するのが先か……?仕方ない、予定とかなり違うが、吽形を構える。
「オーロラ!サポート頼むぞ!」
「ウン!」
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