【さっさっさささと】初の試み!?【かき混ぜまして】
「さー始まりましたジョージの酒飲みチャンネル!」
「ハァイ、シチョウシャ!」
『え、オーロラちゃんがハァイするパターンあんの!?』
『助かる』
『持病の片頭痛が治った』
『万病に効く』
試しにオーロラにこのチャンネルのお馴染みの挨拶である「ハァイ」をやってみてもらったところ、これがまたいい反応。万病には流石に効かない――よね?
さて、今日の配信は戸中山ダンジョンに潜った数日後の配信なのだが、思った以上にあの時の騒動はネット上に流れていなかった。精々、戸中山ダンジョンにラバーとソニックが現れたという報告くらいで俺に関する話題は殆どなかった。俺としては良い事尽くめだからいいのだが、もしかして国家的な何かが働いているとかそんなことは無いよね?
『ってか料理ないんですがそれは』
『酒すらない』
『断酒配信か?』
『ちゃんと休肝日設けてんの?』
「最低でも週一で休肝日は設けてるから安心して?」
そう、いつもであれば机の上には料理と酒が並べられているところだが、視聴者から見える限り影も形も無い。そんな視聴者たちの反応に、俺の口角は自然と上がり、内容を知っているオーロラも口を押さえて楽しそうに笑っている。
「今日は……これだぁ!」
机の下に隠しておいたそれを引っ張り出し、勢いよく――置くと机が傷ついちゃうのでそっと置く。
『ホットプレートじゃん』
『ジョージ、遂に無機物を肴にし始める』
「食わないが?」
『ホットプレートにはマヨネーズが合うやで』
「食わないが??」
『ちゃんと三枚に下ろして食うんだぞ?』
「食わないが???これは調理器具!今日作るのはお好み焼き!」
このままだと視聴者たちのペースに飲み込まれかねない。そう思い流れをぶった切るように机の上に事前に千切りしておいたキャベツ・お好み焼き粉で作った生地・豚肉・シーフードミックス・生卵・焼きそば玉を広げる。
ここで察しのいい視聴者ならば気づいたことだろう。お好み焼きを作ると銘打っておいて焼きそば玉を出すということは――俺がこれから作らんとしているのは広島風お好み焼きだということを。
『広島きちゃああああああああ!』
『あ?戦争か?』
『モダン焼きじゃん』
『広島風とモダン焼きって違うぞ?』
『そこは関西風やろがい!』
『幻滅しましたジョージのファン止めてオーロラちゃんのファンになります』
「やはり燃えるか」
「コワッ」
予想していなかったわけじゃないよ。お好み焼きには根深い因縁があるからねぇ……それでも俺がお好み焼きを決行したのは、これで実質料理配信ということにしたかったからだ。たこ焼きという手もあったが、それはまた別の機会にということで。
酒を出していないのは調理にそれなりに時間がかかるから冷蔵庫で冷やしているだけだ。
「言っとくけど俺はどっちのお好み焼きも好きだからね?今回、広島風にしたのは単に食べ応えあるのが食べたかったから」
「ダイジ!」
『オーロラちゃんが言うならそうやな』
『ほな仕方ないか』
「まぁ、家にあったソースがお好みソースだったのがさらに拍車かけたけど」
『などと言っております、同志』
『なるほど、大阪送りだ』
「大阪は普通に行きたいけどねぇ……!」
何でオーロラは許されて俺は許されないのか。若干いじられキャラになってないか俺?誰に相手されないよりかはいいかも知れないが。
「ちなみに今日はオーロラもお好み焼き作りに挑戦だ!」
「オー!」
両手を上げて意気込むオーロラ。今日は服の上にキチンとエプロンを着用している。勿論俺もエプロンかけているよ?相変わらず視聴者に「フリフリのエプロン着ろ」とか言われているが。着るもんか。
『それは素晴らしいことだけどオーロラちゃんヘラ持てるん?』
『結構デカいよね?』
「フフフ、御安心を。オーロラ!」
「ヤーッ!」
そこでオーロラ取り出したるは2つのミニチュアサイズのヘラだ。ちなみにこれは特注したとかではなく、ずっと前にもんじゃ焼きセットを買った時に付いてきたもんじゃ焼きを食べる用のヘラ――通称ハガシだ。出来ればオーロラにもお好み焼き作りを体験させていあげたいと思った矢先に発見した。何が役に立つか分からんもんだなぁ……
当然だが、オーロラに合わせてウズラの卵も用意してある。焼きそばは……出来るだけ細麺のものを買ったが、あんまり使わなさそう。
『オーロラちゃんが作ったお好み焼き食べたい』
『でも確実に一口サイズだよね……』
「ウン、絶対物足りない」
「本人が言うのか……」
事実、オーロラ1人でめちゃくちゃ食べるもんなぁ。そんなオーロラが妖精基準のサイズのお好み焼きで満足できるだろうか?いや、できない。出来た試しがない。
こうして、ジョージの酒飲みチャンネル初の料理配信が始まった。
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