大収穫と少しの異質?

「ジョージ!コレ見つけた!」

「おぉ、松茸!?よく見つけたなぁ、オーロラ」


 久しぶりの戸中山ダンジョン探索……大豊作だわ。ちょっと歩いただけで、野草薬草茸が次々と見つかる。もはや出来レースなのではと勘繰ってしまうほどだ。いやいや、あんな大盛り上がりしておいてこんな上質な山の幸取り逃すとかある?ある意味冒涜じゃない?


 俺もオーロラも次々と見つけてくるからAカードの中は草ばっかりだ。普通の山だったらもう引き返してもいいくらいだ。友風さんの頼みもあるからもうちょっと探索するけどね。おっと、こごみはっけーん。腰を落として採ろうとしたところで、気配を感じた。


「オーロラ?」

「ダイジョウブ、キギジカ」

「オッケ」


 腰を落としたまま、Aカードからヤドリギの矢を取り出し、いつでも投げられるように構える。勿論、木々鹿程度オーロラだけでも対処は可能だ。進化もしたのだから猶更。それでもオーロラに任せないのは――攻撃魔法ってそこそこ派手なんだよね……堂々闘うならそれでもいいが、基本隠れながら狩りをする俺からしたら大きな音を立ててバレるのも、音にビビって逃げられるのも避けたい。

 なので今回オーロラには索敵と採取をメインにしてもらい、俺はヤドリギの矢で見敵必殺としている。

 息を潜め、木々鹿が姿を見せるのを待つ。こうしていると、不思議と俺が森と一体化しているように感じる。これをさっき本格的に山に登る前に試したところ、オーロラが俺を見失ったほどだ。今ではすでに慣れて俺と一緒に隠れるようになった。


 草木が何かにぶつかって揺れる音がする。その音は次第に大きくなり、俺の視界に不自然に揺れる枝が映った。来た。枝の根本――木々鹿の頭部が見えたところで


「"頭蓋に刺され"」

「ピャッ」


 もはや自分でもそういう意味を込めた息を吐いただけではないかと思うほど小さな声で願い、ヤドリギの矢を投擲した。矢は木々が生い茂る山の中であっても関係なしとばかりに矢とは思えない軌道で木の間を無駄のない進行方向で通り抜け、木々鹿の頭に突き刺さった。木々鹿は小さく鳴き声を漏らして絶命した。


「よしよし」

「ジョージオミゴト!」

「ハハッ、ありがとうな。ただこれ、8割がたヤドリギの矢のおかげでもあるんだよなぁ」


 オーロラの称賛に応えながらも、右手に視線を向ける。そこには既に手に戻っているヤドリギの矢が握り込まれている。こういう時本当に不気味だ。あの何回捨てても家に帰ってくる人形の話を思い出す。もしかしたらそんな代物より曰く付きかも知れないけど。


「よし、んじゃあとっとと血抜きして――うっそだろ。オーロラ」

「ウン」


 俺はそれを感じた瞬間、右肩に今しがた仕留めた木々鹿を抱え、オーロラと共に近くの茂みに身を隠した。俺とオーロラが察した気配。これに間違いがなければ……人間だ。隠れてから数秒後、走ってきたのか、明らかにこの辺に住んではなさそうな2人組が現れた。色黒禿マッチョの巨男と……巨男よりも小柄でゴッツイゴーグルつけて顔が一切見えないようになっている迷彩柄の人物


「~~?」

「――!……?」

「ハッハァ!――!elf!」


 ……うん、わからん!辛うじて笑い声とエルフは聞き取れたけれど、それ以外が全く聞き取れなかった!ほら、あんまり海外とか興味なかったからさ。でも聞いた感じ英語……だよね?情けないことに自信ないけど。

 その後もマッチョと迷彩が辺りを見渡していたが、目的の物が見つけられなかっただろう、マッチョが肩を竦め2人とも山の中へと消えていった。気配が彼方へと消えていったことを確認して、俺達は茂みから出る。


「ジョージ、ナニアレ」

「分かんね。観光客――ではないよな。ま、見つからなきゃいいか。よし、とっとと解体して隠しエリアで昼飯とするか!」

「オー!」



 そんな訳で、これまたお久しぶりな戸中山ダンジョンの隠しエリア。最後に来た時と変わらず、心地良い風が吹くいい場所だ。


「ヤフウウウウウウウウウウウウ!」

「オーロラ、お手伝い……いいか。これくらい」


 着くや否やオーロラさん突撃。レジャーシート敷いてお弁当広げるだけだからいいんだけどね。にしてもテンション上がり過ぎだろ。湖にダイブしちゃったぞ。魔法で乾燥できるから別にいいけども。

 さて、準備が終われば弁当から漂う匂いを嗅ぎつけオーロラがさっさと戻ってくる。ご飯時のワンちゃんか?ほら、おしぼりで手を拭いて。よしよし。はい、これお茶ね。うんうん、それじゃあ両手を合わせて


「「いただきます!」」

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