【ジョージの】チャンネル名の事やってて何が悪い!【酒飲みチャンネル】

 俺の意図的な失言で配信が少しばかり燃え始めて数分後――俺とオーロラは目を上下させてコメントを読みながら卵焼きを一切のスピードを落とさず食べていた。


「いやぁ、やっぱり大葉にハズレはねぇなぁ」

「ウマイウマイ」

『やべぇこのエルフ、物ともしねぇ』

『俺らの熱意伝わってんのか?』

「それはヤバいくらいに伝わってるから心配するな」


 これが全部文字で読み上げソフト採用していなくて良かったよ。声に出されていたら流石の俺も少し凹んでいたかもしれない。ムムッ!この大葉卵焼き、わさびをちょこっと乗っけて醤油垂らしても……美味い!うーむ、これは酒も米も進む!


『柳に風』

『馬の耳に念仏』

『柳の雪に折れなし』

『エルフの耳にハンガー』

「オイこらハンガー掛けるのは意味合い代わってくるだろ」


 コメントに釣られて耳を触ってしまったが、本当にハンガー掛けられそうな長さしてんな……そんでもって俺の耳が横に向かって伸びてるタイプじゃなくてよかったわ、ホント。そのタイプだったら流石に帽子で隠しきれなかっただろうし。

 しかしあれだけ俺が街に出ていたと持ちきりだった話題の勢いが一気に消えた。このまま話題にあがらないことを祈るばかりだ。


『てかジョージって冒険者なのにダンジョン配信とかしないの?』

『思った』

『みたいなー』

「ふむ」


 ダンジョン配信ねぇ……エルフになってから、チラホラそういう声があるのは知っていた。まぁ世間様はスリルのある画を見たいのだろう。その点俺の配信は常に酒盛りでキャンプ配信の時以外動きらしい動きが無いからな。


『オイオイ、ジョージは酒飲むからいいんだろうが』

『推しが傷つくの見るのはちょっとなぁ……』

『その配信の時は見なきゃいいだろw』

『ジョージ冒険者なんだから傷がつくのは当たり前でしょ』


 確かに傷がつくことに忌避感はない。一々傷つくことにビビっていたら冒険者なんてやってられないからね。それでも最低限傷が出来ないようにはしているつもりだが。普通に痛いの嫌だし。まぁそれを踏まえても俺は――


「やらないよ、ダンジョン配信」

『視聴者増えるよ?』

「視聴者増やすために配信してるわけじゃないしなぁ……そもそも俺がダンジョン配信なんかしたら色々迷惑じゃん」

『絶対混むよな』

『目に見える様だぁ……』


 ただでさえ、戸中山ダンジョンが冒険者でごった返したんだ。最近は少なくなってきたみたいだからそろそろ行こうとは思うんだが、ダンジョンに行くたびにあんな事態になってしまっては申し訳なさがすごい。生活のためにダンジョンに潜っている人だっているんだから。


「ま、他にも色々理由はあるけれど今後ダンジョン攻略配信をやるつもりはないから悪しからず。キャンプ配信みたいなやつはやるかもしれないけれど、あの隠しエリア以外で見つかるかなぁ……?」

『またキャンプやってクレメンス』

「やる気があったらね」


 ここで言及しなかったのは下手に近頃やるだなんて言ったらまた行きづらくなっちゃうからね。そもそろマジで野草が食べたくてしかないんだよ。

 そんな訳で、未だにダンジョン配信見たいとコメントしてくる者もいるが、徐々にその声は小さくなっていった。その代わり、別のコメントが台頭してきた。


『じゃあコラボ配信しようず』

『ええやん』

『結構この配信、有名配信者見に来てるっぽいしジョージ頼めば一発じゃない?』

『そら相手方もPVとれるから文句ないだろw』

「俺は客寄せパンダかよ。確かにね?Twitterの方にコラボしませんかーってリプとかDM来たりしてますよ」


 そう、ほぼ毎日のように来てるんだよな、コラボ依頼。有名なYouTuberや良識のある人は脈無しと分かったらすぐに手を引いてくれるんだけど、これが零細とか迷惑を顧みない奴らだったらもう1日に3通は同じ奴からくる。


「そんな状況下で誰か一組とコラボしてみ?もっとヤバくなるよ」

『もう配信者同士で戦わせて勝ち残った奴とコラボすれば?』

『蠱毒すぎてヤバいの生まれそう』

「やらないが???――そう言うことで、俺はコラボもしない!無理やりして来たら出るとこ出るからね?」

『アッハイ』

『下手したら国が動きそうだなオイ』


 自分で言っておいてなんだが、本当に国動いたりしないよね?精々俺の所持金で依頼できるくらいの弁護士が動くだけだよね?まぁ釘をさしておくのは大事か。これで少しはTwitterの方も落ち着いてくれればいいのだけれど。


 その後も……


『その辺を散歩動画!』

「御近所に迷惑でしょうが」


 だの


『釣り動画!』

「釣られクマー」


 だの


『オーロラちゃん1日密着配信!』

『神企画ktkr』

『やれ』

「ワタシにもプライベートあるよ?」

『ド正論』


 しかもその企画、俺がずっとカメラ持ってなきゃ成立しないだろ。


『温泉配信!』

「BANされるだろうが」

『音声だけでも!』

「それ需要有るのか……?」


 なんかもうコメントが迷走し始めてきた。そんな中でも俺達の箸は止まらぬことは無く卵焼きを喰らい続け、それぞれ最後の1つ。俺はミンチ入り、オーロラは大葉入りを食べてフィニッシュ。そんな状況でも流れるコメントの中で目に留まったものがあった。


『料理配信とかどう?』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る