【黄色だよ!】卵焼きパーリィ!【緑もいるよ!】

「今日は卵焼きパーリィだああああああああああああああ!!」

「イエエエエエエエエエエエエエエエエエイ!!」

『テンションたっか』

『うわぁ、テーブルの上まっ黄っ黄』


 オーロラ進化おめでとうの会から数日後の配信。今回はオーロラのリクエストに応えて卵焼きのみとなっている。まぁ、ちゃんとお米も準備しているんだけど。酒はレギュラーなので問題外として。

 それにしても我ながら気合を入れて作ったものだ。オーロラが居酒屋で俺が作ったものの方が好きと言ってくれたことが拍車をかけたのだろう。お陰でほぼ同じ工程の卵焼きを作るのが一切苦痛では無かった。作り終わってからしばらくは作りたくないなと思ったのは仕方ないことだとしても。

 そういうことで、今日頑張って作り上げた卵焼きは以下の通りだ。


 甘めの味付けのプレーン卵焼き・これは外す訳にはいかないだし巻き卵・もはや洋食チーズ入り・卵と卵が混ざり合っちゃった……たらこ入り・オーロラチョイス!たらこ入りより赤いぞ、紅しょうが・ころんとかわいい、ウインナー入り・ごま油の風味がマッチする?韓国のり・正直インパクト重視で作りましたほうれん草入り・絶対美味い大葉入り・どこを食べても肉!そぼろ入り・魚も入れなきゃと使命感シーチキン。

 11種類も作ったった。家にあった卵の殆どを使い切ってしまったが、後悔はしていない。むしろこうまで作り上げると、達成感があると言うものだ。


『これ全部ジョージが作ったん?』

「そだよ、頑張った」

「ジョージ、スゴイ!」

『正気じゃない』

『業者かよ』


 正気のつもりなんですがそれは……もっというと、業者ですらない。その証拠に形が微妙に崩れていたり焦げがあるものだってあるからね。それも最初に作った卵焼きの話で、後半には綺麗に作れるようにはなったけど。

 さて、大量の卵焼きと来ましたら今日のお酒は――黒霧島のロックだ。や、ビールやサワーもいいけれど卵焼きオンリーなら俺は芋焼酎のロックでいきたい。


「ささ、オーロラさん。まずは一献」

「オットット」

『ドワーフというより日本の親父みたいなことしてんな』

『2人とも自分の見た目理解してる?』

「うるせぇ!こちとらそろそろアラサーだぞ!」

「ワタシは内緒!」

『そういやオーロラちゃんの年齢聞いたことなかったわ』


 実のところ、俺もオーロラの年齢は聞いたことあるのだが、やはり内緒にされた。しかし、ここまで美味しそうに酒を飲むんだからきっと妖精的には成人なのだろう。他の妖精はそもそも酒を嗜まないみたいだけど。

 オーロラの参加当初は、コメントの中に妖精に酒を飲ませて視聴者を稼いでいるだの虐待だだの言って来るコメントもあった。Twitterでもたまーにお気持ち表明してくる人いたな。今ではほとんど見なくなったけど。

 ま、そんなことよりも卵焼きパーティだよ!


「オーロラ、調味料も用意しているから自由に使ってな」

「ウン!」


 オーロラが頷いたのを確認して、俺は早速卵焼きに箸を伸ばす。最初に選んだのは、スタートダッシュを飾るのにふさわしい――だし巻き卵からだ。実は俺、甘い味付けの卵焼きが得意じゃなかったりする。子供の頃にだし巻き卵だと思って食べたものが甘くて脳がバグって以来、苦手意識があるんだよね。

 という訳で、だし巻き卵を一切れ口に入れる。出汁の風味が口内から鼻を抜けどこか安心させる。少し惜しみながらも飲み込み、黒霧島を流し込んで、ほうと息を吐く。


「うーむ、我ながらよく出来ている」

「ジョージ!甘いの美味しい!」

「おっ、そうかそうか」


 どうやらオーロラはプレーン卵焼きから行ったみたいだな。好評で何よりだ。


『うまそ』

『大根おろし乗せて食いてぇ……』

『1つくらいならバレへんやろ』

『クソッ!俺は視聴者だぞ!何故そちらに行けない!』

『液晶突き抜けようとしている奴がいて草』

『視聴者だからやろ』


 お次はチーズ入りだ。これには……うん、ブラックペッパーをかけるのがベストだろう。こうなるとほぼほぼチーズオムレツだが美味いものは美味い。これはケチャップかけてもいいかもな。


「紅ショウガ酸味が利いて美味しい!酒に合う!」

『紅しょうがなんて牛丼かお好み焼きか焼きそばくらいしか使い道無いと思ってた』

『割と使えるぞ』

『ワイは牛丼屋で飲んだ時のつまみに紅しょうがに七味ぶっかけて食ってるぞ』

『それ最悪目付けられるからほどほどにしろよ』


 あー、それやったことあるわ。怒られそうだったからほどほどにはしたけれど。

 そんな他愛のない話をしながら、卵焼きを肴に酒を飲んでコメントに目を通していると、とあるコメントに目が留まった。


『ジョージこの前、七元街あたりいなかった?』


 そのコメントはすぐに流れていってそれで終わりかと思ったが、目敏い他の視聴者が食いついた。次第にその規模は増していきその話題に埋め尽くされた。臆面にも出さず、心の中で舌打ちをしただけの俺を褒めて欲しい。――流石に触れねばならないか。


「七元街……?いや、知らないけど」


 知ってます。萩原さんと行った居酒屋のあった街がそんな名前だったはずだ。最初に七元街に関してコメントを残した視聴者が言うには俺に似た女性をそこで見かけたんだとか。聞いても無いのに、何時くらいにどこどこで、イケメンと一緒の所を見かけたとペラペラと話す話す。

 えぇ、時間も場所も同行者もピッタリ。俺ですわ。しかし、それを認めるわけにはいかないなぁ。俺以上に萩原さんに迷惑がかかる可能性があるからな!


「飲み屋街で俺を?いやいや、そのジョージ(仮)ってレディース着てたんでしょ?見てみ?今の俺の服装!」

『触れていいんか』

『ウニクロのウルトラストレッチセットぉ……ですね』

『プラスエプロン』

『オカンみたいなエプロン着やがって……!』

『お前自分の素材分かってねぇだろぉがよ!』

「凄い叩くじゃん」

『なんでオーロラちゃんはちゃんと可愛い服着てるのに相方野暮ったいの!?』

「テレル」

『照れてるオーロラちゃん可愛い』 

『癒しですわ』

『これはお姫様』

『それに引き換えエルフぅ!今のうちに酒注ぐな!』

「おっとバレた」

『ジョージ用の服も送ってるでしょ!着ろ!』

「あれほとんどコスプレじゃんよ」

『今より数段はマシでは?』

『おめぇオフの日とか男の時の服使いまわしてんだろ!』

「何故バレたし」

『頼むからオシャレに気を使ってくれ』

『配信内でマシだった服って、キャンプ配信の時の装備ってマ?』

『マやぞ』


 何か気を逸らせようと火種作ったらその火種思った以上に燃焼し始めたでござる。

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