魚うめぇ!魚うめぇ!

 オーロラが見つけたものも気になるが、彼女が魚に食いついたところから、そこまで重要じゃないんだろう。釣れた鮎とアマゴとイワナを俺とオーロラでそれぞれ1匹ずつ、鮎以外の内臓を取り除いて塩をまぶして串を刺し、拾ってきた焚き木にオーロラの魔法で火をつける。周りに串を刺した魚を置いて少し待って出来上がりだ。

 熱々の串を我慢しながら摘まみ、俺達は視線を交わし、頷きあう。ほくほくと湯気が立つ鮎の背中に噛り付く。


「うめぇ……!やっぱうめぇよ川魚!」

「――♪」


 不思議だ。塩をまぶして焼いただけなのに、なぜこんなにも美味しい。焼きたてだからか、はたまた外で食べるという雰囲気が調味料となって引き立てているのか。――いや、そんなことを考えるのは無粋だな。ただ喰らうのみ!

 ただ残念なのが、今回車で来ているからな……一泊するつもりもないから酒はおあずけだ。オーロラはその限りではないのだが、俺に付き合って飲まないでいてくれるらしい。ありがとう、頭の中では理解していても隣で美味しそうにグビグビ飲まれた日には血涙流しちゃうところだったから。

 ちなみに鮎のワタだが、オーロラも平気らしかった。食べられないようだったら、あわよくば俺が貰おうかと思っていたが、そこは酒飲みか。


 うーむ、アマゴやイワナも負けず劣らず美味しい。獲れた奴はどれもサイズはあったが、ペロリと食べることが出来た。残った魚も勿論持ち帰って食べるつもりだ。巣守老夫婦にもおすそ分けしたいし、オシャレにムニエルなんてのもいいかもしれない。配信のネタにもなりそうだし。



「ふぅ、食った食った」

「――!」

「さて、それじゃオーロラ。一体何を見つけたんだ?」

「――?……!」


 俺の質問に「なんのこと?」と首を傾げたオーロラ。すぐに思い出すと、ある方向へ指をさす。その方向とは


「上流?」

「――!」

「分かった分かった。行くってば」


 オーロラの反応から察するに結構なものが見つかったのだろう。別に急ぐ用があるわけでも無いので、日が暮れる前に帰路につけばいいだろうと釣り道具とクーラーボックスを肩に掛け、先導するオーロラの後をついて行った。

 十分くらい歩いたころ、ある場所へたどり着いた。……と言っても途中から何となくだが、答えは分かっていた。何しろ、川にいた時より目的地に近づくほど聞こえていた音が大きくなっていたからね。


「滝かぁ」

「――!」


 轟轟とした激しい音を立てながら落ちる水。少し声を張らねば聞こえなくなってしまいそうだ。近づけば冷やっこい水しぶきが顔にかかって何とも心地いい。ただ、今日俺Tシャツなんだよな。濡れてしまえば……透けてしまう。この場にいるのがオーロラだけでよかったよ。

 もしかしてオーロラは避暑地としてここに案内したのか?


「――!」


 違うらしい。じゃあ何のために――と聞こうとしたところ、それよりも早くオーロラが滝の方へ一目散に飛んでいった。いや待て!?人間と比べて一回りも二回りも小さいオーロラが水圧に耐えられると思えない。慌てて手を伸ばすが、その手は空を切り、オーロラは滝の中へ――


「――?」

「大丈夫なのかよ!いや、そうだよな。オーロラがそんな無謀なことするわけないよな……」


 今、俺の目の前に起こっていることを簡潔に説明すると、滝がオーロラを円状に避けている。まるで、透明のカプセルの中にオーロラがいるようだ。そんなこともできるのかと感心してたら、俺に手招きしながら滝の中へと入っていった。

 ……ん?


「あれ、この流れ俺にもその滝避けしてくれないの!?」


 俺の叫びに応えるのは、滝の音以外何もなかった。あの、俺服のスペアとか無いんですが?オーロラさん?男の時はいいかも知れんが、流石に女となった今じゃあね?……はい。


「あーもう!行きゃいいんだろうが!」


 釣り道具諸々を地面に置き、足元に気を付けながら水の中へと入り、滝に向かってズンズンと進む。滝行の経験はないが、耐えられるほどの水圧だ。ただ視界は悪いが。

 やがて視界が晴れた時、俺の視界に飛び込んできたのは、開けた空間と高々と積まれた骨の山だった。


「ヒェッ」


 俺の口から、か細い空気が漏れた

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