【マンドラゴラ】音量注意!!【絶叫】

「はぁい、皆の衆。ジョージの酒飲み配信の時間だ。何か人多くない?」

「――♪」


 我が、ジョージの酒飲み配信は有難いことに配信すれば結構いい数字を叩きだす。一番盛り上がっていたエルフになって2週間の配信やキャンプ配信には及ばないけどね。だって配信する日する日酒飲んでばっかりで代わり映えしないからね!最近は落ち着いてきたんだけど、今日それがキャンプ配信に匹敵するほどの視聴者が来ていたのだ。


『マンドラゴラと聞いて』

『本当に食うんかw』

『あの、それで救える命があるんですが』

『売れば大金になるのにもったいない!』

「言っておくけど、もうマンドラゴラの調理済んでるからどうこう言われても俺にはどうにも出来ないからね!」


 はい、みんなマンドラゴラに釣られクマーでした。コメント欄では楽しみにしている視聴者もいれば、勿体ないだの人助けのために然るべき場所に提供しろだのコメントもある。言ってることは分かるが、最初から食べることは言ってたからね?今更変更なんてするわけないじゃないか。

 それに……今日配信で出すマンドラゴラは一株だしそれ以上は無いけど、庭にたくさん植えられてるんだよね。やろうと思えば提供できる準備はあるんだよね。やるとしても秘密裏ということになるが。


「じゃ、ちゃっちゃ進めていくよー。今日のご飯、まずはふろふき大根ならぬふろふきマンドラゴラ!」


 残念ながら収穫することのできたマンドラゴラは1つ(という設定)なので、作ることのできる量には限りがある。そんな縛りの中で俺がまず作ったのはダイレクトにマンドラゴラを味わえそうと思ったふろふきマンドラゴラだ。初めてマンドラゴラを切ったが――いや、植物型モンスターなんだから捌くと言った方が正しいのか?――いざやってみると、大根や蕪と何ら変わりなかった。強いて言うなら包丁で皮を剥こうとする時塗りつぶされたような目が俺を見つめてる気がしたのはちょっと怖かった。

 ふろふき大根を作ったことが無かったため、電話で花子さんに聞きながら作ったが、なんとか美味しそうなものが出来た。


『語呂悪w』

『白い。大分白い』

『これ1ついくらくらいするんや……』


 そう、出来上がったふろふきマンドラゴラだが、出汁がしっかりしみ込んでいるはずなのに豆腐を思わせるような白さを保っている。流石は植物型モンスター、普通ではないな。

 続いて用意したのはマンドラゴラの浅漬け。これは簡単なのでオーロラに作ってもらった。まず、切ったマンドラゴラをポリエチレン袋に入れる。市販の浅漬けの素をぶち込んで空気抜いてよく揉み込んで冷蔵庫で30分冷やして水気を切ってさらに盛り付けてはい完成!


「こちらオーロラシェフの手料理となっております」

「――♪」

「今までで最高の出来とのことです」

『言い値で買おう』

『浅漬けを出すシェフ……?』

『あーこれは日本酒。いや、ワインでもいいな』

『まさかマンドラゴラ酒を……!?』

「そこまで回せる部分は無かったなぁ」


 だが、その発想は貰ったぞ!何度も言うが、マンドラゴラ自体はまだまだたくさんあるからな!アカオオダイショウ酒の横にマンドラゴラ酒を漬け込むのも悪くない。早速、明日作ろうそうしよう!

 さて、今日のお酒は秋田の視聴者から贈られてきた山法師 爆雷+28だ。これ、気になっていたんだよね。超が付くほど辛口とは如何なるものか。勿論、意味合いが違うのは知っているが辛い物が好きな俺としては試さざるを得ない一品だ。

 俺とオーロラのグラスに注ぎ……完了だ。


『あれ?葉っぱないの?捨てた?』

『嘘でしょ?』

「安心してください、葉っぱもちゃんと有効活用してますよ」


 薬として捨てるとこ無しと言われたマンドラゴラだ。それは料理という観点からしても同様だった。俺がマンドラゴラの葉っぱで作ったのは2品。まずはふりかけ。さっと葉っぱを洗い水気を拭き取り、ごま油でさっと炒める。しんなりとしてきたところで醤油・砂糖を入れてさらに炒めれば完成だ。これは朝食でご飯にかけて食べる予定なので、配信には出していない。

 もう1つはお茶っ葉だ。と言ってもこっちは洗って水気切ってざらに並べて今乾燥させているところだ。如何にオーロラでも乾燥させる魔法は使えないらしく、別部屋で扇風機に頑張ってもらっている。


「という訳でご安心ください、ちゃんと全部俺達の胃の中に迎え入れますから!捨てるなんてもったいないことしません!」

『えらい』

『まさかマンドラゴラも全部料理に使われるとは思わんやろな……』


 ごめんなさい、親分マンドラゴラには周知済みです。そして別にマンドラゴラ的には薬に使われようが料理に使われようが大差ないらしいです。まぁそんなこと視聴者たちが知る必要はないから笑ってごまかしておこう。

 それよりも目の前の料理だよ!キチンといただきますをして、ふろふきマンドラゴラに箸を通――っ!?


「絹ごし豆腐みたいに箸が通る!?」

『【速報】マンドラゴラは豆腐』

『大丈夫?本当は豆腐と入れ替えてない?』

「してないしてない――っ!美味っ!?」


 口に入れた瞬間、今まで感じたことの無い旨味が流れ出した。決して暴力的という訳ではなく、むしろ優しい。が、確かに出汁以上にマンドラゴラの旨味が出ていた。思い切って野菜も魚も無しの食事にしてみたが、正解だったかもしれない。下手な魚や肉だと負けてしまうほどだ。

 ここで山法師をクイッと……!?ガツンと殴られたような衝撃……こりゃ旨い。ジャンルの違う美味さの波に脳の処理が追い付いていない感じだ。オーロラ、お前は大丈夫か!?


「――!?」

『すごいヘッドバンギングしとるw』

『美味しがってるのかこれ?』

「美味しがってるけど……俺と同じく脳がバグってるね。ほーら、オーロラ。浅漬けだぞー」


 うまい事タイミングを合わせ、オーロラの口にマンドラゴラの浅漬けを突っ込む。弾かれるかと思ったが、偶然か本能かしっかり口の中に入った。そして、浅漬けを口にしたオーロラだが次第にヘッドバンギングの勢いは失せ、安心したような顔でポリポリと堪能した。

 

『安らかな顔をしておられる』

『これ回復してるの?さっきの状態が錯乱状態とするなら』

「ハハハッ、何を言ってるんだ君達。ただの料理だよ?マンドラゴラを使ったとはいえ――」


 あ、なんだろう。目の前がすっきりする。元々悪くはなかったが視力が回復したような気がする。見るものすべてがきめ細かく見える。まるでフルHDモニターから5Kモニターに変えた様な……4Kとび越えちゃったよ。


「とんでもない物作っちゃったかも……」

『今日の配信、すごい百面相してて面白いw』

『Twitterでもいいからふりかけとお茶の感想教えてな』


 その後も俺とオーロラは一口食べればバグり、一口食べれば治りを繰り返していた。そして終わるころにはなんかもう……色々スッキリしていた。あれか、サウナのキマったような奴か。

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