これアカンやつや

 前回のあらすじ。ピギピギ言う意思疎通のできるマンドラゴラが出来ました。折角なら食べてみたかったのだが、当の本人……本マンドラゴラ?がこれを拒否。今も俺の眼前で食べないでアピールを繰り返している。オーロラとは違ったマスコット的可愛らしさを醸し出す。ここまでされると流石の俺も食べづらくなると言うもの。


「ってかオーロラはどういう意図でマンドラゴラを育てさせたんだ?俺、元々食べられる野菜を育てるつもりだったんだけど」

「――!」


 何々?俺が育てることで、意思疎通のできるマンドラゴラが育つことは分かっていた?そういった上位個体のマンドラゴラは、望んだとおりの眷属――つまりは緊急時以外は叫ばず意思らしい意思のないマンドラゴラの種を作り出すことが出来るんだとか。それで俺は定期的に美味しいマンドラゴラを食べられてハッピー!ということらしい。俺を思ってのことだというのは分かったが……同時にとんでもないことしたなって。マンドラゴラは採取の難しい植物で葉にしても茎にしても捨てるところはない上に色んな薬の材料になる。それが定期的に採れるって……うん、ヤバいわよ!

 あぁ、でもこんな褒めて褒めてな目をされると怒るに怒れないな。とりあえず撫でておこう。そしてマンドラゴラにも確認をしておこうか。


「で、マンドラゴラ。オーロラが言っていたようなこと出来るのか?」

「ピギッ!」


 その鳴き声から感じられたのは肯定の意。やって見せろと言ってみればマンドラゴラは右手を上げ……右手?右蔓?を掲げると「ピギギッ!」と力を込めて鳴く。すると右手の先から何か丸いものがポコッと生まれた。マンドラゴラはそのままその丸いものを勢いよく足元に埋めた。え?今の種なの?なんて呆気に取られたらその埋められたところから見覚えのある双葉が生えたではないか。まさかと思ったが間違いなく、マンドラゴラの芽だった。


「早ない?」

「ピギッ!」


 マンドラゴラ曰く、俺の望みに合わせて早く育つ個体を植えたのだとか。それでもすぐに芽が生えるわけはないのだが、そこは俺の影響なのだとか。まぁ、早く育つのならその方がいいのだが。と若干戸惑いながらもマンドラゴラを褒めてみたらそれで気を良くしたのかどんどんと種を植え始めたではないか。待て待て待て!うちの庭をマンドラゴラの畑にするつもりか!?止めようとしたが時すでに遅し。結構な数のマンドラゴラが植えられていた。


「ピギッ!」

「――」


 一仕事終えたマンドラゴラはふぃーっと汗を拭くような動作をし、オーロラはオーロラでここまでするとは思わなかったのか、彼女でさえ唖然としていた。

 それにしてもだ。俺の足元にいるマンドラゴラと奴の仕事の成果であるマンドラゴラ畑……これ公開しちゃっていいのか?元々やってた顔出し配信にエルフ化配信・妖精(オーロラ)登場・隠しエリアでキャンプ・有用すぎるアイテム公開・エルフ能力と……振り返ってみると中々に中々な話題が多い。ヤドリギの矢をバラしていないのが不思議なくらいだ。


「マンドラゴラ。これ食べられるようになるまで何日かかる?」

「ピギッ!」

「そうかぁ、一週間かぁ」


 うん!これは止めておこう!成長過程は撮ってしまっているから、ここは来週育ったマンドラゴラ食べる配信やっちゃおう!それでもうマンドラゴラは無くなったことにしてしまおう!もし、オーロラに「まだ種持ってるの?」みたいなコメントが来ても無い風に答えるようにしよう。炎上しそうな気がするが、背に腹は代えられない。


「そういう訳だ、オーロラ分かった!?」

「――!」

「マンドラゴラも!あんまり植えるなよ!?」

「ピギッ!」


 2人とも敬礼したから理解してくれたんだよな?そうだよな?頼むよ?

 ちなみにマンドラゴラだが、日光が浴びれる外の方が好ましいらしく、普段は植木鉢に埋まるそうだ。名前?名前はそうだな……考えておきます。



お前マンドラゴラ的にはマンドラゴラは美味しいの?」

「ピギギッ!」

「あ、美味いんだ。……お前が植えた奴ってお前より美味しいのか?」

「ピッ!?ピギッ!ピギギギッ!」

「馬鹿にするな?子分より不味い親分があるか?……ほう」

「ピッ!?」

「あ、植木鉢に引きこもった」

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