装備買いましょうかね

「「「「「いらっしゃいませ!ようこそおいで下さいました!」」」」」

「「アッハイ」」


 翌日の夜、約束通りに武道さんがやって来たので皆で大型イクイップメントモール通称装備モールに向けて出発した。その装備センターがあるのは隣県の端の方でそれなりに時間がかかった。予め外観をネットで見ていたんだけどかなり大きい。装備関係の店とフードコートしかないはずなのに、ショッピングモール並みの大きさを誇っていた。

 で、到着したのが23時。閉店するのが21時で俺達は裏口から警備員さんに案内されてショップエリアに脚を運んだんだが――今の状況に至るという訳だ。おかしい、閉店から2時間過ぎてるし、清掃スタッフや売り場補充の従業員がいるのは分かる。しかし、俺たちの目の前にズラーっとと並んでいるのは制服を着た接客スタッフが12人いるじゃないか。俺達、開幕のいい挨拶に圧倒されちゃったよ?


「あの、武道さん?」

「俺も数人だけのつもりやってんけど……どうなってますん?」

「ジョージ様は大切なお客様ですからね、1人2人だけ従業員をご用意して万が一不手際があってはとのことで、当店で評価の高い者を揃えさせていただきました。勿論、未成年者は1人もおりませんし、残業代も発生いたします」


 武道さんの質問にペコペコしながら答えた男性は店長さん――ではなく、マネージャーさん。店長はマネージャーさんの横に立っている30代ほどの女性。というか、不手際あっても俺は別にクレームつけるつもりは一切ないんだけどな。そもそも無理いって開けてもらったわけだし。


「まぁ、従業員の皆さんがご不満じゃないなら俺は別に構わないけど」

「寧ろ食いつくように参加を表明しましたね。店長以外は今日言ったんですが……ではジョージ様。本日はどのようなものをお探しで?」

「防具一式を。鎧とかじゃなくて動きやすい装備がいいですね。ただ、ズボンはこのベルト通せる奴があればお願いしたいです」


 そう言って俺の腰に巻いているベルト――赤大蛇の帯皮を指さす。ベルトループが無くても巻くことは出来るかもしれないが、そこは見栄えの問題としてね?ただ、不思議なのが俺がズボンを所望したら後ろの従業員たちが騒めいていた。え?無いわけじゃないよね?


「なるほど。それでは、ここからは藤田店長にお任せ致します。藤田店長?失礼のないようにね?」

「はい!」


 あの、どっかの重鎮を相手にするわけじゃないんだから、失礼のないようになんて言わなくても。

 後の対応を店長と従業員に任せたマネージャーはバックルームに消えていった。

 それじゃあ防具見ていこうかなと思ったその時、俺のショルダーバッグがもぞもぞと動きだし、オーロラがぴょこんと出てきた。


「わっ!?」

「――!」

「オーロラ、出て来ちゃったか」

「そらずっと鞄の中はキツイやろ」


 突然のオーロラの登場に藤田店長は変な声を上げたが、俺達は平常運転。そもそも、オーロラも店に行くということは武道さん経由で知られてるはずだからね。


「という訳で、オーロラ。俺はこれから装備見に行くわけだけど、オーロラはどうする?」

「――♪」

「そうか。すいません、オーロラが店を回ってみたいそうなんで、誰か1人2人ついて行ってあげてもらえます?流石にオーロラのサイズでカゴ持ちながら商品を手に取ろうとしたら棚にぶつかったり最悪他の商品をなぎ倒しかねないし」

「な、なるほど?では、貴女と貴方。オーロラ様にご同行して?」

「「承知致しました」」

「念のため、俺も付いてくわ。譲二さんは1人で大丈夫やんな?」

「当然」


 おいおい、武道さん冗談言っちゃあいけないよ。いくらエルフになって見た目若くなったとはいえ、中身はおっさんだよ?お買い物ごときでヒーコラ言わないってば。

 という訳で、オーロラは従業員2人と武道さんを伴って飛んでいった。ちょっとオーロラ!楽しみなのは分かるけどもう少しスピード抑えてあげて!他のお客さんいないからまだいいけど同行の3人走らなきゃ追いつけないじゃん!

 これで残されたのは俺と藤田店長と10人の従業員たちになった。


「じゃあすいません、案内してもらえますか?」

「そうですね、ではこちらへどうぞ」


 藤田店長が先導し、その後ろを俺がついて行く。で、更に俺の後ろに従業員たちがついてくるわけだが……何だこの状況。ちょいちょい小声で「可愛い」だの「美人」だの「肌綺麗」だの聞こえてるんですけど?褒められて嫌な気はしないけどね。


「ジョージ様は普段、どのようなダンジョンにお潜りで?」

「戸中山ダンジョンですね」

「あぁ、そういえばTwitterのトレンドに上がってましたね、失礼しました。では、山ダンジョンに特化させた装備にいたしましょうか?それとも幅広いダンジョンに潜れるようなものにしましょうか?」

「じゃあどちらもお願いできますか?今後、別のダンジョンに行かないとも限りませんし」


 この言葉は本当だ。武道さんに聞いたが、今戸中山ダンジョンは冒険者がごった返しているらしい。職員たちはかつてないほどの忙しさに嬉しい悲鳴が上がっているそうだ。いや、友風さんは「勘弁してください」と弱音はいてるんだっけか。


「かしこまりました。丁度着きましたね、こちらが山ダンジョン用の装備です」


 藤田店長の指し示した先には確かに山ダンジョンを想定された装備が並んでいた。登山靴だったり山登りするための杖、虫対策の殺虫剤なんかも置いてある。あ、何か変なものが視界に入った。嘘だろ?山用だよね?


「何でスカートがあるんですか……?」

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