【闇の炎に】キャンプ配信・夜の部4【抱かれて馬鹿な!】

 どうやらこれはオーロラの魔法による演出みたいだ。カーテシーポーズを終えたオーロラが手を天に向け再度指を鳴らすと俺が点けていたありとあらゆる光が再び放たれた。パソコンの方も画面が映り、配信画面が問題なく表示されていた。コメントの方も演出に大盛り上がりだ。

 おっと、進行しなければ……肉も回しながら!


「はい!ファッションショーの劈頭を飾るのは、オーロラが自ら選んだゴシック・アンド・ロリータです!」

『オーロラちゃん可愛い!』

『ビビったw』

『真っ暗になったらスポットライトが照らされてオーロラちゃんが出てきた。何を言ってるか分からねーと思うが』

『光に干渉して消灯させる魔法とか聞いたことないんですけど……?』

『ゴスロリ似合うなぁ!?』

『オイジョージ!お前投げ銭させろやぁ!』

「あ、やべ」


 そういやそんなことを言っていたな。アカオオダイショウ騒動ですっかり忘れていたよ。えーっと、設定設定っと。いやぁ、スパチャなんてそこまで興味がなかったからロクに調べてなかったけど色々あるんだねぇ。条件はチャンネル登録者数1000人以上と総再生時間4000時間。男の時はチャンネル登録者なんて10人もいなかったけど、エルフになってから爆速に増えて……余裕で申請通っちゃった。


「はい、設定したよ。ちゃんとお財布と相談してから――」

『<ネッコシー>¥50000』

『<仮面騎手>¥3800』

『<ウルトラのオイオイ>¥1000』

「いきなり最大値出す奴があるか」

『ネッコシーw』

『デカすぎんだろ…』


 その後も凄い勢いでスパチャが投げ込まれる。結構な額入れてる人は躊躇しないの?

 言いたいことはあるが、今はオーロラのファッションショーの真っ只中だ。俺がその邪魔をするわけにはいかない。そのオーロラの様子は――


「――♪」

『なんだその厨二ポーズ!?』

『冒険者って魔法発動させるときこういうポーズとったりするんか?』

『超極一部におるやで』


 ノリノリでポーズを決めていた。俺の邪眼が疼くぜみたいなポーズ……本当にどこから仕入れてるんだ?ただ視聴者の反応は良いようだ。コメントとスパチャが加速するわするわ。む、オーロラからこちらに向けて合図が飛んできた。衣装を変更するみたいだな。


「はい、それではモデル衣装チェンジに入りまーす!」

『着替えタイムあるんかw』

『そりゃ一人ですしおすし』

『オーロラちゃん、早着替えの魔法はないんか…?』

「――」

「ないらしいです。え?目下研究中?」


 あぁ、再びテントの中に引き込んじゃった。とりあえず、次の衣装に着替えるまで俺が場を繋げておかなきゃな。……コメント確認しながらマンガ肉焼いて司会進行して場繋ぎ……俺ひょっとして大分忙しい?

 ちくしょう!今更気付いたところでもう遅い。開き直って全部やり切ってやらぁ!


「いやぁ、可愛らしい衣装でしたね。あの衣装、普段着を除いたら一番最初に選んだ服なんだよね」

『普段着は着んの?』

『普段着気になる』

「普段着はキャンプから帰った後のいつも通りの配信でお披露目かな。流石にファッションショーでジャージとかはねぇ……」

『ジャージでランウェイ歩くのは確かに場違い感が凄いw』

「――おっと、準備が整ったようですね。オーロラ!さっきの灯り消える魔法は凄いけどもう止めてね!危ないから!特に俺が!」

『切実で草』

『火扱ってるしなw』

「――!」


 理解してもらえたようで何より。本当に危ないからね。エルフになったことで夜目は少し利くようにはなったが、それでも見えない火というのは怖い!でも、自分で止めておいてなんだけど、オーロラ今度はどんな登場をするつもりなのだろうか。まぁオーロラのことだ。魔法で何かしらやるつもりだろう。


「それでは!オーロラどうぞ!」

「――」


 オーロラが現れた。いや、描写を省略した訳じゃない。本当にテントから飛んできたのではなく、前触れもなくカメラの前に現れたのだ。今回の衣装は視聴者から贈られてきた服の1つで赤いマーメイドドレスだ。

 不思議なもので、さっきのゴスロリ衣装の時のオーロラは元気な少女といった雰囲気があったのだが、今のオーロラは打って変わって大人びた印象を感じさせる。その雰囲気の差に思わず息を呑んでしまう。


「――」

 

 頭に響く、いつものオーロラとはどこか違った――いつもの「起きてー」くらいの調子の声が「起きなさい」って感じ――声に現実に引き戻された。


「あ、え、すまん。えー、失礼しました!こちらの衣装はユーザー名コーヒー牛乳さんからプレゼントして頂いた衣装となります!」

『え、オーロラちゃんなん?』

『威厳あるな』

『女王様みたい』

『ふぁああああああああああああ!着てくれてありがとうございますうううううううううううううう!<コーヒー牛乳>』

『本人おるw』

『そら見るやろ』

「あ、これはどうもコーヒー牛乳さん。同梱してあった手紙読ませていただきましたけど、こんな素晴らしいドレス、手作りだとか。このようにオーロラも気に入ってる様子で」


 手紙には拙い出来でありますが~なんて書かれてあったが、とんでもない。ドレスを見た時、「金払わなきゃダメかな!?」と思ったくらいだ。うん、視聴者たちも同じ思いのようで何よりだ。


『手作り!?』

『売りもんレベルだろこんなのw』

『ありがとうございます!ありがとうございます!<コーヒー牛乳>』


 いや、礼を言うのはこちらの方なんだけど……。で、オーロラはいつまでそんな凛としてるの?その衣装脱いだら元に戻るん?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る