【オーロラさんの】キャンプ配信・夜の部2【ちょっとした授業】

「何か……財布とベルトが出てきたんだけど……?」


 目を疑いたくなるが、宝箱の中にあったのは間違いなく財布とベルト。とりあえず、宝箱から取り出し、カメラの前に差し出す。ここは視聴者たちの知識に任せてみよう。もしかしたら凄いアイテムかも知れないからね!――だが、現実は残酷だった。


『財布wベルトw』

『まぁオシャレっちゃあオシャレ?』

『金運は上がりそうね』

『なんかこう、ハズレに近いね』

『逆にレアかもね(当たりとは言ってない)』


 みんなの評価、散々だよ!?ポジティブなコメントは精々オシャレだの金運アップぐらい。いやまぁ、蛇革は縁起物とはされているけどもさぁ……まぁでも、触り心地的にも悪くないし、今使っている長財布もボロボロだし?これを機に変えてみるというのも悪くないかもしれない。ベルトも丈夫そうだしね。


「まぁ、うん。折角出たんだ、大事に使うとしようか。や、でも念のため明日帰る時に鑑定してもらおうかな?」


 そう、ダンジョンの受付ではダンジョン内で得たアイテムの詳細を知るための鑑定するアイテムが配置されているのだ。中には立派そうな装備品に見えても実は呪われていたり――なんてこともあるから、見慣れないアイテムをゲットした際には使う前に鑑定してもらうのが冒険者の中では常識になっている。とりま、財布とベルトは今はAカードの中に入れておこう。


『鑑定大事やね』

『知り合いで宝箱から出た剣調子に乗って使ったら全身が微妙に痒くなる呪い受けてたw』

『地味に嫌だなそれ』

『待って。ジョージのそのキャンプしてるとこってダンジョンなん?アカオオダイショウに出会って倒して急いで戻ってこれたってことは』

『あ』

『あ』

『あ』

「あ」

『場所バレキター!』


 ……勘のいい視聴者がいたようだ。とは言え、俺の失言もあったとはいえ考えりゃ分かる事か。あーあー、コメントがすごい勢いで流れる流れる。中には現場に突撃するーだなんて危ないコメントもある。


「はい、コメントした人正解ね。ここは未だ戸中山ダンジョンの中だよ。ただし隠しエリアだけどな!」

『は?隠しエリア?』

『またまたご冗談を』

「冗談じゃないんだなぁこれが。信じてもらえなくても構わないんだけどもね?」


 ここでビールを一飲み。コメントの反応を見るに、ここが隠しエリアだと信じる人が多数。そもそもTwitterに俺がアカオオダイショウ倒して冒険者たちと合流した時の写真があるから、そうとしか考えられないというのもあるのだろう。

 さて、ここで1つ、疑問が生まれた。コメントの中に凸するだなんてあるが、実際ここに入れるものはいるのだろうか。いるのであれば……最悪配信終了して即家に帰ることも視野に入れなければいけないが。


「では、ここで凸しようとしている人たちのために!先住者である、オーロラ先生に話を聞いてみましょう!」

『隠しエリアでオーロラちゃんと会ったんかw』

『へー、よく見る妖精ってダンジョンの綺麗な池の傍にいるとか聞くけど』

『ほんとオーロラちゃん何者なんや』

「ではオーロラさん、お話をお伺いしても?」

「――!」


 任せなさいと胸をポンと打つオーロラ。しかし、片手にあるビールの入ったグラスを置くつもりはないようです。――話しながら飲むつもりですか、あなた?まぁ、泥酔しているわけでも無いし、きちんと話すことは出来るだろう。


「えー、では改めて。この隠しエリアだけど俺たち以外も入れるの?」

「――」

「ほう」

「――!」

「なるほど?」

「――」

「え、マジ?」

『あの?』

「――!」

「そうか、なら安心だな!――という訳です皆さん」

『いや、分からんが?』

『すまねぇ、妖精語はさっぱりなんだ』

『妖精は主人にテレパシーのようなもので話しかけてるから妖精語は正確には無い定期』


 なんてまぁ、茶番じみたことをしたが、話を聞いたのは本当のことなので、改めて俺の言葉で視聴者たちに説明することにした。

 まず結論から言うと、勝手に入ることは出来ない。そもそも、この隠しエリアに入るための透明カーテン。あれを感知できる者は隠しエリアの主であるオーロラと波長が合うものしかいないとらしい。隠しエリアの主という気になるワードが出てきたが、そこに関してはオーロラは微笑みを浮かべるだけで特段話そうとはしない。

 じゃあ入れないのか――と問われると否。オーロラか俺、どちらかと許可を得た上で手を繋いだりなど、体の一部を接触した状態なら中に入ることが出来るらしい。なお、許可のないものが入ろうとした場合、そもそもカーテンに気付かず、素通りすることになる。


「――という訳だ。残念だったな、凸は無意味だ!当たり前だが、場所も教えないからな!」

『待ち伏せされたらどうするん?』

「普通に受付に通報しますが?」

『うーん、妥当』

『そらそうよ』

「オーロラ曰く、出入り口付近の外の様子、分かるらしいからね」

「――!」


 本当に何者なんだよ、オーロラさん。

 さて、前座もいい具合に盛り上がったし、開けた瓶ビールもすっかり空っぽになってしまった。という訳で始めましょうか。皆が待ちに待った宴の時を――!

 俺はAカードからちっちゃなラムネが入ったスーパーの駄菓子コーナーで売っているあの小さなマイクを取り出し、本物さながらに声を張り上げる。


「レディースアンドジェントルメーン!」

『はぁ?なんだ?こいつ。』

『お前ごときがジョージに勝てると思うな』

「なんだよ、お前らのノリの良さ。――まぁ改めて。本日のメインイベント!オーロラによるファッションショーの開幕だ!俺は画面端で実況とマンガ肉焼いてるから!」

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