お隣の女優とオープンキャンパスの話 一
期末試験も中間テスト同様に良い結果で終える事が出来た。
そして、夏休みが始まって数日が経ったある日、僕は水野さんと一緒に参加する予定のオープンキャンパスが行われる大学の最寄駅の前で水野さんが来るのを待っていた。
一緒にマンションから出て来るのを見られると厄介な事になる可能性もある為、念の為別々に集合をする事にしたのだった。
「お待たせ、隼人君」
そうしてしばらく待っていると、後ろから声を掛けられた。
振り返ると、そこには水野さんが立っていて、目が合うと、小さく手を振ってくれた。
「僕も今来たところでしたから大丈夫ですよ」
そして、僕は視線を水野さんの髪型に移した。
「水野さん、普段はあまり見ない髪型だし、今日は眼鏡を掛けているんですね」
今日の水野さんの髪型は三つ編みでさらに僕に勉強を教えてくれた時の眼鏡を掛けていて、知的な雰囲気がとても良く似合っていた。
「そうなの。必要無いかもしれないけど、念の為に変装をしてみたの」
水野さんはそう言って微笑むと、すぐに悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「隼人君、今日私が眼鏡を掛けているからって、興奮しちゃ駄目だからね」
「大丈夫ですよ。また、スパルタで勉強をするのは嫌ですからね」
水野さんの揶揄いに対して、僕も首を横に振りながら軽い調子で言葉を返すと水野さんは、「それで成績が上がったのだから、文句は無いでしょ?」と言って笑みを浮かべた。
水野さんとそんな風に話をしていると、オープンキャンパスの始まる時間が迫ってきていたので、僕達は大学に足を向けた。
大学の敷地に入ると職員の案内に従って、僕と水野さんは講堂に向かった。
既にギリギリの時間だったので、僕と水野さんが空いている席に腰を下ろすと同時に、これから説明会を行うというアナウンスが聞こえてきた。
そして、大学の職員が壇上に上がると、この大学の特色や各学科の説明をしてくれた。
僕はオープンキャンパスに初めての参加だったので、大学生活はこういうものなのだ、と新鮮な気持ちで聞く事が出来たし、来年の受験に向けて、具体的なイメージを持つ事が出来た気がした。
その説明を聞きながら、水野さんの様子が気になり、チラッと隣を見た。
水野さんは真剣な眼差しで説明を続ける職員の事を見ていて、時折メモを取っていた。
そんな水野の様子を見て、僕ももっと真剣に説明を聞かなければならない。
そう思った僕は、壇上に視線を戻すと、再び説明に耳を傾けたのだった。
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