お隣の女優とご褒美の話
長かったテスト期間が終わり、テストの返却も全て終わった日の夜。
僕はいつもより軽い気持ちで料理の準備をしていた。
今回のテストの結果は僕にとって、とても満足のいくものだった。
それぞれの教科は勿論だが、苦手だった数学でも水野さんのスパルタの指導のお陰か、今まで以上の高得点を取る事が出来ていた。
そこで、感謝の気持ちを伝えようと思ったぼくは、以前、お詫びとして好きな料理を作ると約束をした時のリクエストがきたので、今日の夕飯はそれを作る事にした。
そうして、完成した料理をテーブルの上に置いていると、インターフォンが鳴った。
恐らく水野さんだろう。
そう思った僕は玄関に向かい扉を開けた。
「こんばんは、水野さん」
「こんばんは、隼人君。お邪魔します」
水野さんはそう言って僕の家に入ると、手を洗うために洗面所に向かった。
僕はリビングに戻り、夕食の準備を済ませると、丁度そのタイミングで水野さんが部屋に入って来た。
「わぁ、すごい豪華! もしかして、これ、私がこの前リクエストをしたのを作ってくれたの?」
驚きながらそう言う水野さんに僕は微笑みながら頷いた。
「はい。水野さんの高校もテストが終わったという事だったので、お疲れ様です、というのと勉強を教えて貰ったので、そのお礼で今回作りました」
「そんな事を気にしなくても良いのに」
水野さんはそう言いながらも顔を綻ばせながら椅子に座った。
「本当に美味しそう。隼人君、ありがとう」
そう言って笑顔を見せる水野さんを眺めながら、僕は口を開いた。
「冷めてしまうといけないので、早速食べましょうか」
僕の言葉に水野さんは、「うん!」と、元気良く頷くと二人で手を合わせ、「頂きます」と言って、食事を開始した。
そうして、食事を終え、食後のコーヒーの準備をしていると彼女が声を掛けてきた。
「隼人君、そう言えば聞きそびれてしまったけど、テストの結果はどうだった?」
「水野さんのお陰で苦手だった数学で高得点を取る事が出来ました。他の教科の得点もそこそこ良かったので、今回は結構良い成績でした」
「おっ、流石は隼人君だね。そうしたら、頑張った隼人君に私からご褒美があります!」
水野さんは、「少し待っていてね」と言うと、パタパタと部屋から出て行った。
何を取ってくるのだろう。
そう思って思い出されるのはテスト勉強の為に彼女が持って来たメガネだ。
また同じような物を持って来るのだろうか。
そんな風に思いながら待っていると、「お邪魔します」と声が聞こえ、水野さんが戻って来た。
水野さんの手には白い箱があった。
これは何だろうと僕が考えていると水野さんは箱をテーブルに置いて、「じゃーん!」と言って箱を開いた。
中には美味しそうなチョコレートケーキとモンブランが入っていた。
「美味しそうですね!」
驚いて水野さんを見るとニコニコと微笑んでいる。
「今日、テストが全部終わったでしょ? だからお疲れ様って意味で買ってきたの」
「ありがとうございます! お皿とかを持ってきますね」
僕はキッチンから食器を持って来てケーキを取り分けた。
「ありがとう、隼人君」
「水野さんはどちらのケーキが良いとかありますか?」
「隼人君の好きな種類が分からなかったから、二つとも私が好きな種類にしちゃった。だから好きな方を食べて」
「じゃあ、モンブランを頂きます」
僕の言葉に頷くと彼女はチョコレートケーキを自分の方へ引き寄せた。
「うーん! 普段我慢してる分美味しいね! 幸せ〜」
女優である水野さんは体型維持の為に普段から気を付けているからだろう。
チョコレートケーキを口にした水野さんはとても幸せそうだ。
そんな水野さんを可愛らしく感じながら、僕はモンブランを一口食べた。
「……すごく美味しいですね。このモンブラン」
「そうでしょ。ここのケーキ屋さん有名で、私のお勧めなの。気に入ってもらえて良かった」
僕の為に買って来てくれた事に嬉しく思いながら、その後は、二人でたわいもない話をしながら、とても楽しい時間を過ごしたのだった。
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