赤裸々・・・?
「何か」に襲われ、一時は命の危機さえあったもののその後もピクニックは続き、紐なしバンジーやら岩割りなどの超人的な遊びをしたり、「何か」と似た黒い奴が3回現れて3回ともリーセルさんが瞬殺したりなどいろいろあったが、数泊した後村に帰り、俺たちは日常へと戻った。
今日、俺はいつものようにそーちゃんの家へと向かっていた。目的はそーちゃんにとあることを質問し、一緒に考察することだ。そのとあることとはもちろん「何か」についてだ。
リーセルさんに討伐された「何か」は翌日には跡形もなく消えていた。頭に風穴が状態でも生きていて、こっそり逃げたと言えなくもないが・・・まぁ、普通に「何か」は魔物だったのだろう。
そーちゃんの話によると魔物は死ぬと黒いもやもやになって消えるらしいので、見ていない間に消えてしまったと考えるのが自然だ。
俺が戦った「何か」改め、魔物の背中に着地した時は、ただの巨大な生物といった触り心地だった。そんな普通の生物と大きく違わない触感の物が、死ぬと黒いもやもやとなって空中に消える・・・・不可思議が過ぎるだろう。
他にも分からないことはいくらでもある、今日はそれらについてそーちゃんと一緒に考察し、魔物というのが何なのか、見解を深めよう。
――――――
「で、俺があの腕を光らせるやつで注意を引いて、めっちゃぎりぎりで魔物の攻撃を避けまくって、で!俺が攻撃を避けれなくって死にそうになったその瞬間、お父さんが一撃でバーン!っとぶっ倒したんだよ!すごいだろ!?」
「へーー!!りっくんのお父さん強いんだね!」
「そうなんだよ!村一番・・・あ、いや、まぁ村の中で強い方らしいよ!」
「そうなんだー・・・・」
「うん、そうんだよー・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・えっと、話を戻すと、魔物に触れた感覚は普通の動物みたいだったのに、死ぬと空中に消えて跡形もなくなるのはおかしいって話だったよね」
「えっと・・・そうだね、その話をするつもりだったんだよ、うん」
「その話に関してなんだけどね・・・・何といえばいいのか・・・・・僕には、りっくんが何を言いたいのかがよくわからないんだ」
「っえ?どういうこと?」
「なんで魔物が跡形もなく消えたらおかしいの?魔物なんだから、消えるのは普通じゃない?」
(え?そーちゃんはどうしちゃったんだ?急にまるで小学生のようなことを・・・・あっ)
「あ、そうかそうか、そーちゃんとは同年代のつもりで話しても普通に話が通じるから忘れてたけど、まともな科学が発展してない村で育った子供なんだった・・・・・」
「ん?え?え?急に何の話?」
「いや、関係ない話だから大丈夫」
「そう?」
そーちゃんは俺をキョトンとした目でに見つめている。
見つめられながら、俺は下を向いたまま思案していた。
(これは、どうするべきなんだろう?そーちゃんに日本で知った科学の情報を伝えてもいいのだろうか。)
(伝えてダメな理由など思いつかないが、なぜだか教えてはいけない気がする。)
(そもそもとして、原子論や熱力学はこの世界でも通用しているんだろうか、いや、この世界は元の世界と大きく物理法則が違うが、根本からして違うとは思えない、質量保存の法則がもし違ったのなら、世界が似たような形になるとは思えない。)
深く深く何かを考えると、思考が一巡し、同じことを考え始める。何度も同じ問いを繰り返し、同じ結果が帰ってきて問いがループする。するとたまに新たな考えが生まれ、それについてまた思考の循環をする。
(そもそも、俺はこの世界で何をするべきなんだ?今はただ、魔法や魔物などに興味あるからいろいろ調べているが、それ自体が目的なのか?何を・・・・何が・・・・)
(分からない、俺は、どうするべきなのか・・・・・)
「・・・・・どうしたの?そんな考えこんじゃって」
「いや・・・でも・・・・うーん・・・・・」
「なにか、悩んでるの?」
「悩みというかなんというか・・・・」
「ごほんっ、『いいかい?リュウ、何かに悩んだらこの言葉を思い出しなさい。何かに悩んで、足踏みしてしまったなら、自分の感情に従いなさい。リュウは物事をよくわかってるからね、君がそうしたいなら、そうするといい。』・・・・どうかな?」
「・・・・・・その言葉、誰かの受け売り?」
「うん!僕のお父さんが、悩んでる時に言ってくれたんだ!」
「そっか、自分の感情にか・・・・・」
(俺は今、そーちゃんと一緒に世界のいろいろなことを知りたいと思っている。そのためには、そーちゃんに最低限の科学知識が必要不可欠だ。)
「どう?悩み、解決した?」
「うん、解決したよ。自分の感情に従うことにする」
「そっか!よかった!」
相手の悩みが解決したことを心の底から嬉しそうに笑う。そんなそーちゃんに俺は、まずは原子について話始める事にした。
「えっと、それはつまり、すべての物は小さな粒の集まりでできてるって・・・・こと?」
「うん、まぁそういう解釈でいいかな」
「え、それが、個体と、液体と、気体になるの?」
「うん、熱とかの関係でね、氷見たことある?」
「あ、うん、山にピクニックへ行った時に見たことがあるよ」
「すごい冷たかった?」
「うん、そうだね」
「冷たいとか、熱いとかによって、液体が個体や気体に変化するんだよ」
「うん、うん、うん・・・・・すごく面白い話だけど、うーん・・・・いっぺんに話されても一気には受け入れきれないよ、もう考えるだけで疲れて来た・・・・・」
「そうだよね、疲れるよね、じゃあ最後に確認として、この話が全部正しかったら、魔物が空中に消えるのはおかしい、ってことは分かった?」
「えっとーーーー・・・・・うん、そうだね、全部が全部正しいなら、そういうことになるね」
「分かってくれてよかった」
「でも、納得できないことがあるんだけど、聞いてもいい?」
「もちろんいいよ!」
「りっくんは・・・・なんでこんな・・・・世界の法則のようなことを知っているの?」
「実は、さっき悩んでたのは、こんなことを知ってる理由を言うかどうか迷ってたからなんだよ」
「そうだったんだ・・・」
「でも言うよ、そーちゃんにはあんまり隠し事したくないからね」
「えへへ、ありがとう」
「それに、旅は道連れって言うしね・・・・・」
「え?なにそれ?」
「何でもないよ」
「で、なんでなの?」
「ごほんっ・・・・・・実は俺、別の世界から来たんだ」
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