第2話
数年前
小学校の遠足の山の中
「どいてよ」
「へへへ、」
クラスメイトの男子達が私を囲んで道を塞いでくる。
「・・・早く行かないと遅れちゃうよ」
私は精一杯の声を出す。
だが、
「大丈夫だよ、俺が道を教えてあげるから」
私の声なんて聞いてくれなかった。
「それより、声が出るじゃん」
「普通は話せるんだよ。それくらい」
私はすごく、コミュ障で家族以外とは全く話せなかった。だからそれをクラスメイトのみんなは馬鹿にしてくる。
「・・・お願い」
本気で迷子になると思ってたし、なによりもう戻っても目立つのは確実で恥ずかしくて辛くて涙が出てしまった。
「あ、泣いた。」
「あー、女ってすぐ泣くよな」
辞めて。お願い助けてお兄ちゃん。
そう思っていた瞬間、
「あ、」
崖が崩れて私は
「・・・!!」「春!!」
__________
次に気付いた時は、お兄ちゃんの背中だった。
「目が覚めたか」
「・・・ここは、」
場所も分からないし、時間も分からない。遠足はどうなったかも分からない。不安が溢れてきたけど
「お兄ちゃんの背中だぞ。」
その一言で、私は安心してお兄ちゃんを強く抱きしめた。
「・・・良かったよ。無事で」
「・・・ごめんなさい。迷惑かけて」
「迷惑じゃないよ」
「だって、お兄ちゃん遠足は?それに・・・その」
服には葉っぱや、血が出ている所がある。みるからに必死に探してくれたことが分かる。
「大丈夫だよ。むしろ、心配で、心配で、そっちのほっとしたほうが大きいよ」
笑顔でそう言い返す。その顔から一切私に不安がないことが分かる。
「・・・でも、でも」
「いいんだよ。お兄ちゃんなんだし、妹を守らないと」
「そんなの、お兄ちゃんばかり大変だし」
「良いんだよ。お父さんとお母さん・・・それに春にも約束したし」
「私にも?」
「うん、春がまだ赤ちゃんだった頃」
「・・・すごい昔だね」
「うん、昔だよ。でも守ってるんだ」
それから、私を悲しませないないようにお兄ちゃんはずっと歌いながら遠足より、先に家に背負って帰ってくれた。
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春視点
優は、ずっと私のことを守ってくれていた。
あの遠足の時も中学の最初の頃のいじめのことも・・・
だから、優があんな酷いことをするとは思ってなかった。
優は私を見た瞬間、もう以前のような優しいお・・・視線じゃなくて冷たくて関わってほしくない顔だった。
私はその表情に怯えたのか、本当にお兄ちゃんや夏はあんなふうに言ってたけど、まず謝るつもりだったのに声が出なかった。
「お兄ちゃん、とりあえず部屋とかこれからの問題もあるし」
辞めて・・・お兄ちゃん。優は今は1人にしてあげて欲しい
夏「そうだよ・・・私も気になるな。ゆ・う♪」
あったばかりなのに・・・これから、義兄になる優を既にバカにしたような話し方をする。
もう辞めて。これ以上・・・
優を傷つけないで、優しいお兄ちゃんを消さないで
だが、声は出ない。
罪悪感と、何をきっかけにこれ以上兄に嫌われることが怖くて話せない
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優視点
コイツらは、明らかに俺のことを煽って来ている。
理不尽による叫びたいくらい辛い気持ちが自分を支配していることが分かる。
・・・だけど、抑えろ。
暴れても、結局は自分の立場が悪くなるだけ・・・
別に、コイツを傷つけたくないとか、傷つけた奴ら(幼馴染)と同じだから・・・とか、そういう理由じゃない。
自分の為だ。怒りで苦しくても、耐えるしかない。
優は必死に拳に力が入るが目を閉じて我慢する。
「そうだね。」
義弟「お、お兄ちゃんは物変わりがいいね」
夏「・・・ふふ」
優は我慢して席についた。
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優は怒りや暴れたい気持ち・・・泣きたいくらい辛いことを我慢して席に座っている。
春は義兄に席に座るように顔で合図され席についた。
義兄は机に足をおくように座り、夏はさっきまでの興味のあるような言い方をしたことはなかったように、ソファーに寝転がり携帯を弄り出した。
「それでニィちゃん・・・聞いたよ。大変だったんだね」
「・・・ぁあ」
年上で義兄に言う態度とは思えない煽り口調で話す。
「そういえば、この妹がさぁ・・・」
春はドキッとする。
対して優は
「・・・」
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優視点
あえての言い方だ。春や義妹じゃなくて妹・・・俺に対して横に、実妹も居るのに・・・
春は、何を考えているのだろうか・・・気不味そうな顔をしているが・・・
それはどういう感情なんだ。
分からない・・・
どっちみち、なんだんだよ。コイツは俺を煽っているのは分かるけど・・・こんな好き勝手にされているのか?机に足を付けてるし・・・別に、マナーとかは注意する気にはないけど、食べるところに足とか普通に汚いじゃん・・・
なんなだよ・・・
「それでさぁ」
俺の心だけじゃなくて、家まで汚されて
そして、優は瞬時に気付いてしまった。
お父さんの写真が・・・ない。
春「あ、」
「ちょ、どこ見てるんだよ。話してるじゃん。にぃちゃんは、弟とはいえ初対面の相手の前にキョロキョロすんのかよ?そんなんで受験の面接ってあ、そもそもしてないか」
「ごめん、トイレ行ってくる。」
「っぷ、あ・・・逃げるの?」
「・・・」
「あ、いや弟相手に逃げるとかないか、ごめん行ってきていいよ。」
「・・・」
そして、トイレで優はまた泣いた。
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