第3話
優は泣いた。
声を出さないように必死に我慢しながら泣いた。
だが、
「にぃちゃん。大丈夫?トイレ長いけど」
トイレに入ってから5分だが、ノックを仕掛けてくる。
優に気を休める場所なんてない。
「だ・・・大丈夫だ」
「そう??長いから心配だよ。あと声もなんだか、鼻声だし?まさか泣いてる?」
「・・・っそうだよ。・・・(少し唾を飲む)久しぶりに家帰って来たし」
「あはは、家に帰るのがそんなに感動的だったんだ。まぁ少年院に行ってたしね。」
実際、俺じゃなくてもそれが理由で泣く人は普通に居るだろう・・・でもそれだけが理由じゃない。
「・・・ごめんなぁ。それなのに、部屋を取っちゃってさぁ。」
本当は言い返したい。だけど
「いいよ。理由が理由だし」
「そうだよなぁ!悪いな思い出の物とかも全部捨てて欲しいって頼まれて」
さっきもあそこにはすでに俺の写真もお父さんの写真もなかった。まるで俺達を無かったことにしたかったように・・・
「・・・じゃあ、悪いな流石にトイレ中に話しかけるのも悪いし・・・じゃあ続きはまた部屋でしような」
奴が消えたのか分からない。足音はしていた。
もしかすると、そこで足跡を立てた振りをしているのかも でももう、そんなのは関係ない。
「・・・こんなの、こんなの家族じゃない・・・」
声が吐き出てしまう。
いや、こんなに簡単に捨てられるなんて・・・あの時もそうだけど
お父さん、俺は
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春視点
お兄ちゃんも夏も、本当は悪い人じゃない。というより私とお母さんにはすごく優しい。
周りの人にはよくバカにしたような話し方をするけど、それは彼らなりにみんなと仲良くしようとするアピールだったりする。
でも、今回のは流石にやり過ぎだ
夏「あの人どうだった(笑)?」
義兄「泣いてた(笑)」
「・・・っ、」
優が・・・
春は思い出す。優が泣いた時は2回、実際は3回は知っている。一回目は遠足の時に・・・その時私は泣いた姿を見たわけじゃないけど、友達・・・秋から泣いて探していたと教えてもらった。あとは中学の事件と私が・・・お兄ちゃんじゃなければいいのにと言った時・・・
これしかなかった。
お父さんが亡くなった時は優だけ泣かないで、涙が止まらない私を安心させるようにずっと抱きしめてくれた・・・
それほど、我慢強い・・・優が
そして春が動く
「私が」
冤罪だと・・・いやあの中学のときに今度こそ、優を助けるって決めたんだ。
だから、
夏「春、流石に女の子が男の子のしている時に行くのは」
春「・・・そうかもだけど、私は」
優に
だが、その覚悟を打ち消すように
優「ごめん。じゃあ今度こそ自己紹介しようか」
優は戻ってきた。
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春は優をみて結局怖くなって声を掛ける勇気が無くなっていた。
「それじゃあ、俺の名前は雪だ、よろしくな。いぃちゃん」
「あ、あよろしく。雪」
「で、そっちの妹が夏」
「・・・」
夏は黙る。
「よろしく、夏」
夏「呼び捨てすんなよ。」
「・・・」
マジなんだよ。
雪「まぁまぁ、これから家族になるんだし。仲良くしようぜ。」
明らかに仲良くする気はないだろうし・・・そもそもそのセリフは本来この家の家主であった俺のセリフだ。なのに完全に蚊帳の外のまま。
妹・・・春は、下を見て俺から視線を晒している。
もうなんだよ。その態度・・・過去も含めて・・・
それがもう慕ってた兄に・・・したってなんかない。いや俺はもうお兄ちゃんじゃない。
そうだよ。
雪「あ、それでさぁ。」
雪はそんな一瞬春を見た優を見逃さず
雪「許してやって欲しいんだ。過去のこと」
春「お兄ちゃ・・・それは、」
雪「春、春がすごく反省していることは知っているよ。だからもう許されていいと思うし、これから家族になるんだし、仲良くしないと」
それは、お前の・・・雪の言うことじゃない。
夏「私もそう思う。気まずいままだと嫌だしね」
さっき、呼び捨てで怒ってた癖に・・・
春「・・・」
春はたったまま、口を開かずに黙っている。
・・・春が今何を思っているのか分からない。でも謝ることすらしないのか・・・
それか、もしこんなこと謝っても私が気が済まないとか思っているのだろうか・・・俺の知っている春ならそう思っている可能性がある。
でも・・・なら、なんでこんなお父さんの思い出もなくして、コイツらにこんな好き勝手に俺をいじめさせることを許すんだよ。
過去のことがあって反省する気があるなら、少しは止めようとしろよ。さっきは少し動揺してたみたいだけど、そんなの何の意味もない。
雪「どうやら、まだ恥ずかしくて言えないみたいだね。まぁとりあえずなら、代わりに俺が謝るね。」
春「お兄ち!!」
春のことばを無視して雪は話す。
雪「ごめんね。俺の妹があん・・・にぃちゃんを傷つけたみたいで」
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30を超えたら次回を投稿します。
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