027. 少女の前途
「―――へ?」
あまりの突飛な申し出に
「もしくは、リリナがここで生活できる環境、
もちろんそれなりの資金は渡すつもりだ。」
あくまで本気らしい。
その顔には真剣さと罪悪感が入り混じっているように見える。
「……いや、いやいやいや……!
どちらにせよ、この子を手放すってことでしょう!?
こんなにあなたに懐いてるのに!?
一緒に旅をしてきたんじゃないの!?」
リリナを起こすまいと声を抑えるものの、
感情が溢れてしまう。
「ああ、それは分かっている。
だが、危険な旅に同行させるわけにはいかない。
それと――。」
そこから、ラウルはリリナとの出会いを話し始める。
崖の村で行われた【贄の儀式】について。
その後、森で危険な状況に陥っていたリリナを救ったこと。
『星の道』から飛ばされ、
部分的な記憶がなく自分の村がどこにあるかも分からなくなっていたこと。
そして、安全な拠点で情報収集した方が良いという内容。
―――。
「まだ、出会って三日目?……なの?」
信じられないという表情で話しを聞くアシュリィ。
「……だな。嘘みたいによく懐いてくれている。
記憶が欠落している分、他に頼れるものがないということだろう。」
まるで慈しむように傍らの少女を見やる。
「連れて行ってあげることはできないの……?」
視線をゆっくりと落とし
「それは……できない。
『星の道』を巡る旅は危険もつきものだ。
この辺りはまだ安全だが、そのうち野盗や『星の道』の影響を受けて
【
「でも……絶対悲しむよ……。」
「……。」
きっと、そう思ってくれてしまう。身を持って知っている。
だが、これはリリナにとっても重要なことだ。
「……あと二日は一緒にいてやれる。
それまでに何とかしないとな。」
「……あと二日……。
……何かやることは決まってるの?」
顔をあげ、凛とした視線をアシュリィに向ける。
「リリナのためにできるだけのことはしてやるつもりだ。
それから旅の物資を確保する。」
「そっか……。
……。
誰か良さそうな人がいないか探してみるよ。
本心では連れて行ってあげてほしいけど……ね。」
会ってまだ間もないが、
まるで自分のことのように悲しみの表情を見せている。
「すまないな……ありがとう。」
「ううん、お邪魔してもなんだし私はそろそろ行くね。
――星の導きがありますように。」
「ああ。 ――感謝と加護を御身に。」
悲惨だったリリナの身の上に思うことがあったのだろう。
気持ち良さそうに寝ている彼女を見て複雑な表情を浮かべ、
音を立てないようにそろりそろりと部屋を出て行った。
半人とはいえ猫の血が入っている。
足音すら立てずに動くことはお手の物らしい。
「さて……。」
重々しく寝床から立ち上がり、眠っているリリナに布をそっと掛ける。
分かっていたこととはいえ、
いざ言葉にすると罪悪感で圧し潰されそうになる。
― たまたま通り掛かった自分がそこにいただけで
この
―――俺にはその資格が無い。
――中途半端になっていた荷物の整理をし始める。
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