026. 星道の特性
――話を終え、現在に至ることを伝えた。
「ふむふむ、物質の浮遊。発光。
そして『星の道』そのものが移動してきたと。」
食い入るように話に耳を傾けていたアシュリィ。
明後日の方向へ目をやり、何か考え事をしている。
「ああ、害はないものと判断したからその場に留まったが。」
いつの間にか靴を脱いで寝床の上でペタンと座り込んでいたリリナ。
思い出して興奮し、その姿勢のまま楽しそうに弾んでいる。
「……人体への影響や、啓示はあったんで……あったの?」
「いや、人体への干渉は特になかったはずだ。
特段変化も見当たらない。」
自身の手を握ったり開いたりして確認している。
「そっかぁ……。」
横向きに生えている耳をへなりと垂らし、残念そうに声を漏らす。
「あったよ!!」
急にリリナが大声をあげる。
「へんか、あったよ!!」
二人がリリナに目を向け
「あれからラウル、少しだけ柔らかくなったの!」
「一体何を――」
否定の言葉を言い掛けたが、昨日の夜のことが頭を
異質な雰囲気を纏った少女と神秘的な情景。
――そして少女に重なる灰毛の少女。
少し目を伏せ、呟く。
「……いや、そうか……。
確かに、気持ちの整理はつけられたんだ。」
アシュリィへと目を向け
「……直接的な現象ではなかったのかもしれないが、
『星の道』の前と後とでは確かに心情の変化はあった。
偶然かもしれないが。」
聞いている最中、垂れていた耳が徐々に元気を取り戻し。
「ふわぁぁ。面白いなぁ。
多分、それも『星の道』が起こした現象で間違いないと思う。
間接事象でそういう例、よく聞いてたから。」
「……? つまり、浮遊や発光がその時の『星の道』の性質ではなく、
俺の……人の記憶に関するきっかけを与えることが元来の性質で、
それを引き起こすための余波のようなものだったと?」
「え゛?理解力ちょっと怖い。
……でもそういうことだと思う。
あまり知られてないんだけど、
実際【『星の道』は人が足を踏み入れないと発現しない】ってことも多いらしいよ。
その人の気持ちを理解して『星の道』が変化する……みたいな。」
「自然現象が……?」
「うーん、断言はできないけど。
研究者の文献を漁ってみたことがあって、その時にそんな内容が書いてあったから。」
「研究熱心なんだな。」
「慎重になり過ぎてって感じだね。結局、まだ一度も経験できてないし。」
「ふむ……。」
話が難しくなってきたからか、
旅の疲れを癒すかのようにラウルの横でスゥスゥと寝息を立てているリリナ。
それに気づいたのか、声は抑えつつ
「あ、ごめんね! あたしからの質問はひとまず以上!
もっと聞きたいところだけど、リリナちゃん寝ちゃってるし。」
「そうか、ならこちらからの質問……というか要望だな。」
「うん、なあに?」
「この子を……
リリナを引き取ってやってはくれないだろうか。」
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