004. 微睡の邂逅



―――




―――チッ





――。




――パチッ





何かが弾ける音に微睡まどろみから呼び戻される。




「―――!」



まるでピンと張った蔓が切られたかのように


上半身を勢いよく起こそうとする。


しかし。




「―――…!!」




体のあちこちに激痛が走り、再び横に倒れ悶絶する。


胸が体の緊張で締め付けられ声は出ず、


まるで絞り上げるような音だけが喉から鼻へと通り抜ける。






「…大丈夫か?」




ビクリと肩を竦ませ、目をギュッと瞑り身を丸くする。




「あ~… いや、怖がらせてすまない。」



パチパチと光を奏でる焚き火の近くに声の主がいる。



の心配ももうしなくて大丈夫だ。」



時折喉を鳴らすような発音が特徴的な、耳通りの良い落ち着いた男性の声。




だが、今の今まで正に生死の境を右往左往していたのだ。


身体が強張り、動くことを拒んでいる。






「そのままでいい。…言葉は分かるか?」




ゆっくりと、それでいて不思議と安心できる声色で語り掛けてくる。



身体全体が震えてしまっているが


そのままの姿勢で首を縦に振る。




「…そうか、なら休め。まだ夜も明けてない。」



言い終わると、焚き火に薪をべる音が聞こえてきた。


段々と、柔らかくて暖かい光が体を包んでいく。






片目をそろそろと開け、ぼんやりとした視界に声の主の影が薄らと見えてくる。



大きく緩やかな外套を羽織り、その外套に付いている頭巾を被っていて顔はよく見えなかった。




疲労困憊、満身創痍の中で掛けられた気遣いの言葉と温もりは


再び微睡まどろみの中に吞まれるのを容易にさせた。




―――。




緊張の糸が切れ、年端も行かない少女は


スゥスゥと穏やかな寝息を立て始める。




「…それにしても…



 珍しいこともあるものだな…。」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る