第5話

翌日...

とうとう暗殺者としての初仕事

見習いとしての生活は終わり

失敗は許されない


「さ、仕事の詳細を説明するがいいか?」

マティアスさんが書類を机に並べ話す。

そして、俺がうなずいたのを見て続ける。

「今回の依頼は、初仕事にしては大変かもなぁ...組織の殲滅だから」

「えぇ...? 一人でですか?」

「あぁ、もちろん。人数を増やせば増やすほどリスクは増えるからな」


さも当たり前かのように俺の心配を一蹴

結局、どうすることも出来ず...夜


「じゃ、頑張って来いよ」

「はい!」


今回の依頼は、この街で最近暴れている組織の殲滅。

どうやらただ悪ふざけをする集団ではないようで、俺たちを含めた暗殺者の同業者にも被害は出ているらしい。

一般人、暗殺者、さらには勇者候補すらも殺害しようと計画しているとの情報もある。この世界から、勇者候補がいなくなればそれは魔王を筆頭に魔物たちの侵略が始まってしまう。


強大な魔力を持つ魔王との戦力バランスは、勇者候補がいるおかげで保たれているといっても過言じゃない。もし、片方が欠けたときには、どちらかがもう一方を支配するという結果にもなりかねない。


つまり、今回は...同業者を守るだけじゃなく世界中の人々を守ることにもつながると...責任重大だとマティアスさんにも言われた。

確実に初めての任務で頼むものじゃないだろ...とは思いつつ


気づけば、組織が本拠地とする建物に到着。

ただ、俺たちが商会ギルドの皮を被っているように、ここは酒場を経営している。

一階から三階までは酒場で、それより上に行けば...端的に言えば本物のやばい奴らがいるわけだ。

もちろん、酒場には一般人もいる。巻き込むわけにはいかない。


そんな状況で正面突破するわけにはいかないので、俺は軽く跳び建物の出っ張った部分に足をかける。そして、真上に先端に鎌のような物がついたロープを思い切り投げる。


そして、鎌はやがて建物の一番上にある何かに絡まる。

俺はそれを慎重に上り始めた。


誰にも見つからなければ、これで一気に上から奇襲できる。

...上手くいけばだが


─────

二分経っただろうか...

上っているところを無事、見つかりましたとさ。

なるべく戦闘は避けたかったんだが...


「逃がすわけねぇだろっ!」

と、黒いローブを身に纏った男たちが襲いかかってくる。

数はざっと、六人ぐらいか。

武器は..もってなさそうだが、魔法を使ってこられると厄介だな。

ここじゃ避けようがない。


仕方がないので、ロープをたぐり寄せながら地面へと落下する。


「今だ、打て!!」

案の定、魔法を使われた。

どうやら、火属性の初級魔法らしい。

一個なら当たっても何の問題はないが...数が多いな。

しかも、今は空中。そう簡単には避けられない。


「はっ!!」

上ろうとしていた時と同じように、建物の出っ張りを咄嗟につかみ、体勢を整え...火球を避けるように飛び直す。


「今だっ!!」

懐から、短剣を五本取りだし男たちに向かって投げる。


「くっ、避け──」

内三本は命中、急所に当たったか、三人が動かなくなる。

あと、二人...


混乱の最中、なんとか着地し当たらなかった二本を回収する。


「チッ、逃がすなよっ!」

魔法を使ってくるかと思ったが、殴りかかってきた。

現状、二人に退路は塞がれている。

なるべくばれないように裏路地から上っていたからな。

おかげで、逃げ道はない。

どうにか片方だけでも倒さないと...

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