第2話

謎の人物に咄嗟に殴りかかった俺は...

その一瞬、世界がひっくり返ったように錯覚した。


いや、確かにひっくり返った。

俺の攻撃は、軽くいなされて体が宙に浮く。


「おぉ、アブねぇアブねぇ」

宙に浮いた俺は、自分を制御することも出来ず...こうして、自分の二回目の死を悟ったのだが、謎の人物によって足を掴まれ、逆さ吊りに。


「全く、少しは落ち着いてくれよ。お前に危害を加えるつもりはねぇんだ」


「ぐぅ...」

俺は、身動きをとれず...そんな俺を運んで謎の人物は大通りへ向かっていく。


「こんな場所に一人でいたんだ、よく考えりゃ事情があったんだよな。悪かった。」

 大通りに出る直前、謎の人物はその場に俺を立たせて頭を下げる。

「え、えっと...」


なんというか、そのときの謎の人物の声には...それまで感じたことのない優しさがあったように思う。

まぁ、目の前で人殺されたわけだし...何か、そう感じるのはおかしい気もするけど。


「まぁ、今は深く事情は聞かない。家がないなら、ついてくるか?」


もう俺は、路地裏で一人で座り込んでいられるほど....心は強くなかった。

孤独な日々が続き、俺は随分心がやられていた。


「....。」

特に何か言うわけでもなく、俺はうなずいた。

そして、謎の人物は俺の反応を見て笑いながら歩き始める。

その歩幅は、小さかった俺に合わせるようなものだった。



────────


謎の人物についていき...俺は、ギルドに到着した。

フィナラズにあるギルドの中でも、五本指には入るだろう商会ギルドだ。


「ここって...」

「あぁ、商会ギルドさ。今日もたくさんの商人が来てる」

「もしかして、偉い人だったり...」

「そうだなぁ...まぁ、このギルドの中だったら一番かもな」


そんなすごい人だったとは...

それにしても、この大きなギルドにもさっきみたいな...やばい人もいるんだな


「さ、こっちだ」

謎の人物は、建物の中...階段を上り二階の一室へ


「ここは...まぁ、一応俺の部屋だな。外からは、中での話は何も聞こえない。

話せるなら、事情を話してほしい。」

「....」


もちろん、断るつもりはない。

ちゃんと事情を話せば、ここで働かせてもらうことだって出来るかもだし。


「あ! よく考えりゃ、まだ俺の名前を言ってなかったな。俺は、マティアスだ。」

「マティアスさん....俺は、アルフレート・ハンスです。」

「ハンス、わかった。 よし、じゃあ話せるところからゆっくり話してくれればいい。」


そして、なんとか話し始めた俺は、今までの生活の一部始終をマティアスさんに話す。

マティアスさんは、話を聞きながらうなずいたり、時には質問したり...話を聞いてくれてるんだ...という実感を持てた。そのおかげで、今までずっとしんどかった俺の心は...少し軽くなったと思う。


「なるほどな、なかなかにしんどい生活だったんだな。よし、ハンスがしっかり話してくれたし、俺も話さないとな」

「...何をですか?」

「俺の秘密だよ」


今まで、いかにも話しやすい優しい人という印象だった、マティアスさんは急に真顔になり、低めの声で話し始める。そんな様子を見て、俺は少し...恐ろしくなってしまった。そう思っていた俺が間違っていなかったのは、直後に証明されるわけだが。


「まず最初、ここは商会ギルドの皮を被った#****##だ」

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