五日目
ヨルとソフィアが帰った領主邸は騒がしくなっていた。
「あのヨルというのは何者なのだ!?神話の知識は教会の連中を遥かに凌駕しておるではないか!しまいには未だ解読されていないはずの古代文字まで読みおったではないか!」
「陛下、それは実際に接した私が一番驚いています。礼節は全くもって庶民という感じでしたが、あの博識さは異常です。」
「しかも隣にいたのは教会の聖女ではなかったかね?何故あの様な大物が付き従うほどの存在が無名なのだ!?」
「分かりかねますとしか......」
執事になりすましていたのは何と、王国の宰相であり、彼と話すのは国王本人であった。
「やはりヨルという存在は気掛かりです。調査しましょう。」
「うむ、あの知識が本物であれば何らかの争いになりかねん。まずは娘の家庭教師になってもらい、その間に調べるとしよう。」
神学の知識は長く失われており、それを研究させ、神々を正しく讃え、神々に正しく祈ることによって栄えたこの国において、神学の知識は宝石の山よりも価値が高い。昨今では他国も神学を復興しようとしてる為、『争いになる』というのは何の誇張でもなかった。
王は次の話題に移る。
「して、この街の遺跡の調査はどうなった?」
「はい。やはり結果は先先代の時のものと変わりません。謎の彫像や装飾こそ目立ちますが、その正体は分からずじまいです。魔素同位体を測ったところ、八千年から一万年前という値が出ましたが、あれはまだ正確性に欠けます。鵜呑みにはできないかと。」
「そうか......」
この街の地下には太古の遺跡がある。それは発掘されたどの遺跡よりも古い様式と思われるものだが、全くと言っていいほど正体が分かっていない。宗教施設であっただろうということこそわかっているが、祀っている神は宇宙のものでも、空のものでも、大地のものでも、海のものでもない。もっと何か形而上学的なものだろうと予想されている。
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