四日目

 「ヨル様〜、ヨル様って神話と地理と歴史とか教えられたりしませんか〜?」

「教員免許はないけど、誰よりも詳しい自信はあるよ。どうして?」

「いや〜、何気に私たちって家計ギリギリじゃないですか〜。だから一日たったの三時間でがっぽり稼げる簡単なお仕事に興味ないかな〜って。」

「全然やる。狩りと釣りより効率いいじゃん!」

「じゃあ明日、早速行ってみましょうね。」




 そして翌日、私は何故かソフィアに領主の館まで連れて来られていた。あからさまに高級な銀食器が並ぶ客間に通されて、私はすっかり怯えていた。そこに執事らしき人が構えていた。

「ヨル殿、お話は伺っております。王女殿下の教育をお手伝いいただけるとか。」

ん、そんなの聞いてない。初耳すぎる。横にいるソフィアは笑いを堪えている。この子、私をはめたな。

「しかし寡聞にして私はヨル殿のことを何一つ、不思議なまでに何一つ知り得ませんので、口頭質問にてその博識の程を確かめさせていただきたい。」

「はい...」

もうこうなったら生活費の為に、何でもやってやろう。

「では、まず創造神の名は、その元にある神々の族の名は?」

「ヨルグ・ヴァニールです。そこから始まった神々の系譜はヴァン神族です。」

「ふむ。では代々の太陽神は名を何と申しましょう。」

「最初はラー、彼女からアテン・ラー、アメン・ラー、ホルス・ラー、ソール・ラー、そして今はソール・ラーとヘリオス・ラーの共同統治です。」

「では、何故今は共同統治なのでしょう。」

「ヘリオス・ラーがまだ若い神だからです。」

「ふむ、では目を陸に移しましょう。陸はどの様にして神々のご加護に預かることができていますか?」

「大地はフレイヤ・ヴァニールによって、その上を吹き荒ぶ風は龍王ファヴニール・ヴァニールによって治められています。真面目な神なので代替わりはありません。」

「では、最後にこれを解読してください。」

そう言って手渡されたのは一枚のスケッチだった。それは剣に掘られた神聖文字の類だった。

「これは千年ほど前の文明のものですね。『蛇の女神の名の元に、ここに聖剣は眠る。』とありますね。」

「ふむ、よろしいでしょう。では後日紙面で合否をお伝えします。」

そういうと執事らしき人は部屋を出て行った。


 「ソフィアちゃ〜ん、何か言いたいことがあるんじゃない?」

「え、あ、いや、これはその、ヨル様の凄さを少し世に示そうとしたというか...」

その日から一週間はソフィアが全ての家事をやってくれることになった。

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