三日目
「お姉ちゃん!お姉ちゃん!ヨルお姉ちゃん!見て見て!」
そう言っていつもの果物屋の娘が披露したのは何と線香花火を再現した、れっきとした魔法だった。はへー、あの子に魔法の才能があったとは。
「あのねあのね、昨日急にこれができる様になったの。来年には魔法学院に入学するんだ〜。」
「へぇ、魔法学院か〜。魔法の才能がある人は学費無料なんだっけ?よかったね〜。」
せっかくだし、何か魔法を教えてあげよう。
「じゃあね、私から一ついい魔法を教えてあげる。」
「いい魔法?」
「そう。地味なんだけど、全ての魔法の基礎になってるのよ。」
「え〜、地味なの〜?」
「凄い魔法を使うには絶対に通る道よ。」
「なら知りたい!」
「じゃあ真似してみて。」そう言って私は魔力で手のひらに円を描く。次はそれを星の形にする。次は猫ちゃん。次はお魚。そして最後は戻って円。
「どう?」
「やってみる!」そう言って果物屋の娘は手のひらにやや崩れ気味の円を描いてみせた。
「よくできたわね。後は魔力をもっと安定させて、均等に使う様にするといいわ。」
「ありがとう、ヨルお姉ちゃん!」
結局、果物屋の店主は、これのお礼に葡萄を一房くれた。何でも西の街道での出来事というのは、なんとこの街に王族が来ているらしく、その警備の兼ね合いで、商隊が足踏みさせられたからだったそうだ。葡萄も桃もすっかりいつもの値段に戻っている。
果実酒を買って、家に戻ると、ソフィアがお昼を用意してくれていた。今日の街のこととかを話しながら二人でパスタを食べた。その後は果実酒を楽しむ。ソフィアは教会の教えが云々と言うので、「私はそんな教義作ってないよ。」と言うとちょびちょびと飲み始めた。夕方には二人でベランダに出て音楽を聴く。港が見える街の一日はこうも怠惰に過ぎて行く。
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