自己責任チルドレン04
これは後日談というか、今回の話のオチ。
あれからあの児童会、子供会は基本利用料無料、一部有料で存続となった。夕食とかがお金かかるよ、ってことらしい。それ以外はこれまで通り通える無料。まあ、それはそれで格差というか、夕食食べられること食べられない子で別れて問題になりそうといえばなりそうだが、久瑠美の友達が急にいなくなることはなくなったと思えるので、それは良かったと素直に想う。それにこれまでも夕食は有料だったのだ。つまり何も変わらないということになる。
PTAの会長は辞職した。一身上の都合らしい。薬物売買に手を出していたらしいとの噂は既に流れていたようで、それは辞任後も絶えなかったそうだ。もちろん、その噂を流したのはリバーサイドボーイズ・ガールズではない。自然と、噂されるところにはされてしまうのだ。
そこで問題になったのは、彼女の娘、一年生のあの女の子だ。彼女も紆余曲折あって子供会に入ったのだが、その批判していた当該の元PTA会長の娘ということ、さらにはその母親が犯罪に手を出していたとの噂で孤立してしまったらしい。しかし、そこは我が娘、久瑠美である。妖刀使いと共にその悪い噂を両断し、その子と遊び始めているというから立派だ。世間体を無視して、世間の噂を無視してひとりの女の子の幸せのために手を取る。いまでは、そのわだかまりもなく、多くの友だちと遊んでいるという。
「あ、創くんだ」
「よお、久瑠美」
「こんにちは、創さん」
「よお、妖刀使い」
「……私のことは桜木坂、若しくは桜お姉ちゃんとお呼びください」
「わかった、わかった。そのうちな」
俺のことを確認すると、久瑠美はまたすぐに遊びの輪に戻って行った。
俺はその日、子供会に顔を出していた。たまには娘の顔を見に来てやらないとな、とそう思ったのだ。
「先日はありがとうございました。おかげで施設を変わりなく続けられることになりました。雁来さんにもよろしくお伝え下さい」
「ああ、もちろん。よく伝えておくよ」
俺は妖刀使いの近くへ歩み寄り、話し掛けた。
「お前、この間も夜の街を駆け回っていたそうじゃないか。超能力者と戦い、魔法少女とやり合ったと聞いているぞ」
「私は悪くない。向こうから仕掛けてきたのだ。私は鬼斬りを、あやかし斬りをしていただけで、因縁をつけてきたのは向こうである」
「そうかよ。まあ、ほどほどにな」
久瑠美は、笑顔で、友達と笑って遊んでいた。俺はしばらくそれを見つめていた。俺はそれを守っていかなければいけない。そう思った。
たとえば、たとえば貧困が自己責任だと言うならば、その責任は子供達にあってはならないと思う。子供に責任はない。親が全てかというと、そうでもないだろう。親にも限界はある。だから、責任を持つべきは全ての大人たちであり、その社会である。守るべき笑顔はここにあるのだ。それを忘れてはいけない。大人の都合だけで、それだけで物事を利己的に進めてはいけない。俺はそんな事を思いながら、彼女のことを遠くから見守っていた。
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