第20話胡椒とマヨネーズ
リーンの顔がリカのくしゃみによってとんでもない事になった後、怒られたもののひたすら謝って事なきをなんとか得る事ができた。まあ、謝ったのは主に俺だけだが。リカはというと、リーンがそんなところにいるのが悪いといってより一層怒りを買ったのは言うまでもないだろう。
とにかく…
「さ、さあ…気を取り直して次を作ろうかな」
「…今度は大丈夫なんでしょうね?」
「も、勿論」
リーンから謎の圧を感じる…。圧というか怒りだろうか?お、お~い、サチ!?早く次を作ろう!指示をくれ!と、いうか助けてくれよなっ!?
『──面白そ…コホン!流石の私も予想外でしたので♪』
『絶対分かってたよな!?面白そうだったからと今言おうとしてただろう!?』
『──気の所為です。さて…気を取り直して』
くっ…誤魔化しやがった…。
『──次はマスターお待ちかねのマヨネーズを錬金すると致しましょう!用意するものは卵とスースーミントとオークの脂身です!』
『スースーミントとオークの脂身はさっき買った物にあるんだろうけど…卵はないよな?』
『──今回はケイトさんに分けてもらうとしましょう。何の卵でもいいので十個程分けてもらえれば十分です』
『…了解。マヨネーズを分けるからと言ってもらってくる』
ケイトさんに事情を話して卵を分けてもらう。ケイトさんは卵を快く分けてくれたのでしっかりとお礼を伝えてからまた錬金室へ。今度こそ準備はオッケーかな?
『──オッケーです、マスター!では、マヨネーズの錬金を始めましょう!まずは卵とスースーミント、そしてオークの脂身から成分を抽出して下さい!』
了解。
「【抽出】!」
抽出した成分を錬金室においてあるビーカーに似た容器にそれぞれ入れていく。先程とは違い抽出したそれは全部液体のようだ。
『──オークの脂身から抽出した液体には魔力を注入して下さい。上質な油になりますので』
ほぅ~。油ができるのか。オーク恐るべしって感じだな。
「魔力【注入】!」
先程まで見るからにギドギドしていたものが魔力を注入するとサラサラとした液体に変わったのが見てとれる。
『──最後にそれらを混ぜ合わせてから、クリーニングの魔法をかけて、そして錬金して出来上がりです!』
クリーニングの魔法?ああ…もしかして菌を防げるのか?なんかそういうの聞いた事あるし。
『──その通りです!これは自家製マヨネーズを作った時に多いのですが、市販品に比べて酢の配合割合が低いことや十分な加熱処理がないことによりサルモネラによる食中毒が起きてしまうケースがあるわけです。ですが、クリーニングの魔法をかける事により、このサルモネラ菌等が発生しなくなりますので安心して食べられるというわけですね』
魔法様々だな。混ぜ合わせてクリーニングの魔法だな。了解。
「【クリーニング】!そして…【錬金】!」
いつもの錬金の光が収まると容器の中には見慣れた調味料が…。マヨネーズだ。この世界でも目にする…いや、味わえるなんてなんとも感慨深いな。醤油もそうだったけど。
「できたの?」
「うん、できたよ。これはマヨネーズって言うんだ」
「「マヨネーズ…?」」
「うん。色んな食べ物にあうんだよ」
「そうなんだ…」
「…匂い…」
「ちょっと!?懲りずにまたあんたは匂いから嗅ぐつもりなのっ!!反省しなさいよ!」
「ま、まあ…今度は匂いを嗅いでも大丈夫だよ?」
「…それなら…よくないけど、いいわ…」
「…すんすん……嗅いだ事ない匂い…?…」
まあ、そうなるよね。マヨネーズを知ってる人からすれば酢に近い匂いって感じだろうし、苦手な人は苦手だろうし、いわゆるマヨラーって呼ばれる人はこの臭いと味がたまらないって聞くしね。個人の感想を含めて人それぞれだと思う。
「ホントね…」
リカに次いでリーンを匂いを嗅いでいる。せっかくなら味見してもらうか。
『サチ。さっき買った野菜の中に生で食べられて、尚且つマヨネーズに合って、リーンとリカが食べられる野菜ってある?』
『──その条件ですとキュウリなんかがマヨネーズをつけて美味しく食べられる野菜の一つとしてあがると思いますが、それと形も味も名前も似ているギュウリをオススメします。名前もキュウリに濁点つけただけみたいでしょっ?色は違いますけどね』
サチに教えてもらったギュウリをアイテムボックスから取り出すと…まんまキュウリって感じだ。ただし、色が水色。緑じゃないのが不思議な感じだ。コレが異世界クォリティというやつかっ!?
『──それは違うと思いますよ?クォリティとは良質だったり、質が高いことを表す言葉ですよね?ギュウリの味がキュウリに比べて数段上なら分かりますが…』
『…ま、真面目に解説しないでくれる?言ってみたかっただけだから…』
『──知ってます』
サチも意地が悪いもんだ…。とにかく取り出したギュウリをリーンとリカに手渡す。
「…コレをギュウリにつけて食べろと…?」
「…っ!?…」
リカが物凄く驚いているな…。目を見開いてるしな。
「まあ、騙されたと思って、このマヨネーズをつけて食べてみてよ?物凄く多量に摂りすぎたら太るのであんまりよくはないんだけど、俺の元いた世界で【若返りビタミン】とも言われているビタミンEというものがマヨネーズには含まれているから野菜とともにそれが摂れて体にはいいんだよ?」
「あんたが言うなら…食べてみるわ」
「…分かった…」
俺もリーンとリカとともにギュウリにマヨネーズをつけて、ボリッ…ボリッボリッ…。
「うん…やっぱり美味しい」
「こ、コレつけると…本当に美味しいわ」
「…イケる♪…」
二人ともお世辞じゃなく本当に美味しそうに食べている。一本じゃ足りなくて二本目も要求してくるし、リカなんか三本目に突入している。今までは野菜が味気なかったんだろうな。本当調味料って偉大だよな。マヨネーズはケイトさんにも好評だった。ゼンさんもコレはイケるなと大喜びで食べていた。
それは当然屋敷でも同じ反応となった。夕方頃に屋敷に帰ったわけなんだけど、ティアさんもネネさんも侍女の人達も大喜びでギュウリにマヨネーズをつけてかじっていた。いや、かじっていたは言い方が悪いな。食べていたに訂正しておく。
──いや、本当にすまない。再度訂正させてくれ。現在進行系で食べているのだ。すでに屋敷に帰ってきてから一時間近く経っている…。その間に俺は夕飯の準備をしていたんだけど…ずっとギュウリにマヨネーズをつけて食べているみたいなんだよね。ちなみに摂りすぎは駄目とも注意してるんだけどな…。
「あ、あの…ティアさん?それにネネさん達もちょっといいですか?」
「…んぐっ………な、なんでしょうかハヤブサ様?」
「…何ですニャッ!?こんな時に!?私はマヨネーズを堪能してるのニャッ!!」
俺の言葉に侍女の人達も手を口を止めてくれる。それにしてもネネさんは語尾に頻繁にニャッがつくようになってきたな…。もしかして素はニャッをつけて喋ってたりするのかな?
「…早く言うのニャッ!」
あ、はい…。
「野菜とマヨネーズはその辺で」
「…えっ…!?」
「…ニャッ…!?」
「「「「「…なっ…!?」」」」」
二人が絶望したような表情をみせる。そ、そんなにマヨネーズが気に入ったのっ!?でも仕方なくねっ!?買っていたギュウリも屋敷にあったギュウリもそろそろ無くなるんだ。かなりの量のギュウリを買い込んでいたんだけどな?
まあ、それは置いておくとして、そろそろコレを味わってもらいたいだろ?本日のメインディッシュだ!
「えっ…と…マヨネーズを喜んでもらえたのは凄く嬉しいんですが…みなさん、そんなに絶望しないで下さい…コレも是非食べて欲しいんですよ。本日のメインディッシュです!」
「「「「「こ、これはっ…!?」」」」」
俺はこっちの方が驚くと思うし、オススメなんだけどどうだろうか…?それになんといってもコレに刮目せよ!はい、ドーン!
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名前∶隼 豊和 (はやぶさ とよかず)
年齢∶14
職業∶ガイド
レベル∶1
体力∶10
魔力∶150(∞)
力∶3
俊敏∶3
器用∶35
知力∶35
運∶20
装備∶学生服
パッシブスキル∶ガイド (サチ)オート戦闘(サチ) 指導者 上位互換 剣技LvMAX 質量0 杖技LvMAX 短剣技LvMAX 料理Lv1
スキル∶錬金術LvMAX アイテムボックス 付与 鑑定 言霊 加速 雷斬り パリィ 回転斬り ジャンプ斬り
魔法∶クリーニング サンダー ハイサンダー ヒール ハイヒール ファイア ハイファイア ボム ハイボム ヌマヌマ アクア ハイアクア
❉❉❉❉❉❉❉❉❉❉
なんと料理スキルを覚えたんだぜ?最近ずっと料理を作っていたから覚えられたんだろうな。とにかくみんなの舌を唸らせてみせるぜ!
『──すでにマヨネーズで唸ってますけどね』
それを言うんじゃないよ…。
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