第8話嘘だろ!?

セーブルさんがティアさんの屋敷を去った翌日の事だ。領主代行もこなしていたセーブルさんが居なくなった事の穴埋めを俺がする事になった筈だったんだけど…ぶっちゃけると屋敷でやる事はなかった。



 まず領主の仕事といえばどんなものか説明すると、国家が果たすのと似たような役割を自分の領地内で果たしていくと考えればいいと思うんだ。

 

 それはどういう事かをもう少し詳しく説明していくと、領内で色々行って収益を上げたり、租税を取り立てたり、王様から要請があれば出兵したり、領内の犯罪者を取り締まったり…。他にも店を出す許可だったり、催しの許可だったりあるけど、それらを行う事が領主の仕事なんだ。かくいう俺もサチが教えてくれるから分かるんだけどな。


 とにかくその代行をティアさんがいない間に任されていたのがセーブルさんというわけなんだけど、領内でそもそも今は特別収益をあげるような事は行っていないんだよな。農業は流石に食に繋がるからしてるみたいだけど。税も年に一回納められるだけに今はなっているみたいだし、王様からの出兵は何かあった時だけだし、領内で犯罪という犯罪も起こっていない。



 つまりそうなると、ティアさんがいない間の代行を任されても街を見回ったり、認可する判を押したりするくらいだ。


 またセーブルさんが行っていた執事としての仕事もネネさんがいくらでも代わりを務められるし、侍女の方々でも十二分に務められるんだよな。



 まあ、早い話今は俺が屋敷でする事はないって事だな。



『──ですね!その辺の事はティアさんと屋敷にいる人に任せましょう。先々の為にマスターはマスターにしかできない事をしましょうか』



 一番重要というか俺的に驚いたのはティアさんがここの領主になってからまだ日が浅く一年くらいという事だ。まあ、普通は日が浅いならやる事って多いイメージだろ?それだけ少ないのはいかに発展してないかという事になるんだよな。だからといって、ティアさんに領主としての器がないという事は決してない。集落から街といえるまでには発展させたのはティアさんらしいしな。


『んで…俺は何すればいいんだ?』


『──まずはまた錬金ギルドに行きましょう』


『了解。ティアさんにその旨を伝えるわ』


『──宜しくお願いします』




 ティアさんの元へと赴き錬金ギルドへと行く旨を伝える。誰か付けようとしてくれたが一人で大丈夫とお断りした形だ。みんなは忙しいだろうしな。とにかくそんなこんなで錬金ギルドへと一人で向かう。







「トヨカズさん!?いつ来られるのかと待ってましたっ!!」


 錬金ギルドへ着くなり開口一番そう声を掛けてきたのはケイトさんだ。


「待ってた?もしかしてまた何か問題が?」


「あっ…いえいえ、すいません。失礼しました。そうじゃあありません…」


 ケイトさんは佇まいを正し頭を下げてくる。


「昨日は改めてありがとうございました。お陰でお父さんもゆっくり体を休める事ができました。なんとお礼を言ったらいいか」


「ああ~ お礼はいいって…」


「そんなわけにはいきません」


「娘の言う通りです」


 ケイトさんの言葉に続く形で建物の奥へと続くドアが開き同時に聞き覚えのある男性の声が響く。


「お父さん!?まだ寝てた方がいいんじゃないのっ!?」


「ここではギルドマスターと呼びなさいと言ってるだろう…全く」


 この錬金ギルドのギルドマスターのゼンさんがケイトさんに呆れるように呟く。昨日俺が錬金している最中にゼンさんとはすでに顔を合わせているんだ。また無理して仕事をしようとしていたんだろうな。でも俺の錬金するスピードなんかを実際に目にして任せて大丈夫だと思ったんだろうな。大人しくゆっくり休んでくれることになったというわけだ。


「改めてハヤブサ様。この度はありがとうございました。お陰様で仕事の方も全て片付きまして、体の方もこうして休める事ができました。ギルドマスターとしては反省するばかりですが…」


「いえいえ…体を休められたようでなによりです」


 まずは体が資本だし、昨日会った時より顔色もいいみたいなので本当に休む事ができたんだろう。




「──それでハヤブサ様は今日はどうしてこちらに?」


「今日も錬金室をお借りしようと思いまして」


「そうでしたか。どうぞどうぞ。錬金室は当然ハヤブサ様のご自由に使って頂いて構いませんよ」


「ありがとうございます。それではお借りしますね」


「ええ。あっ…そうでした」


「?」


「私は今から領主であられるティア様に今回の件のご報告をしに行くため少しの間ここを空けますが…」


「まだゆっくりしておいた方がいいんじゃないのっ!?もしアレなら私が…」


 ケイトさんの言う通り俺ももう少しゆっくりしておいた方がいいと思うけど…


「いや…こういうのは早めに伝えておかないとな。それに話だけだし大丈夫だ。それよりその間ギルドを頼むぞ?」


「…うん、分かった…じゃなくて…分かりました」


「ハヤブサ様も何か用がありましたらケイトに言って下さい」


「はい」


「それと…私がティア様の元に行ってる間、ギルド内はケイトとハヤブサ様の二人っきりになりますので…もし手を出されるのであれば責任をとっていただけるのなら私は構いませんので…」


「ふあっ!?お父さん何をっ!?」


 思わず吹き出しそうになるわ!?突然何言ってんのゼンさん!?仮にも大切な娘ですよねっ!?どこの馬の骨かも分からない男にそんな事!?しかもケイトさんどう見ても小学生…


『──マスター』


『なんだ!?』


『──マスターが下手な事を口走りそうなので言ってしまいますが、ケイトさんはマスターより歳上ですよ?』


『………はっ?俺より歳上っ!?嘘だろ!?』


『──さっき小学生と思われましたよね?』


『…思ったけど?だって…どう見ても見た目小学生高学年だろ…』


『──見た目で判断してはいけませんよマスター?ケイトさん自身見た目を気にしているみたいですし!地球の言葉でいうなら…ケイトさんは!!』


『強調しながらロリっ子って言われても反応に困るんだが…?』


『──この際ですからマスターに伝えておきます!もう一度言います!女性を見た目で判断してはいけません!どんな見た目でも一人のレディとして、女性として扱って話して下さい!それから女性に年齢を聞いてはいけません!それからそれから女性は褒めるようにして下さい!それに────』


『じゅ、十分分かったから…それくらいでな?』


『──むぅぅ~~~ まあ、いいでしょう。語り尽くせていませんが今日はこれくらいにしておくとしましょう。またの機会に女性の扱い方をまた指導する事にします』


 結局するのね!?しかもまだ語り尽くせていなかったのかよ!?



 とにかく…ゼンさんは色々言うだけ言った後、ケイトさんに怒られながらティアさんの元へと向かった。この場に残ったのは頬を染めてチラチラとこちらを見てくるケイトさんと気まずい空間と同じく気まずい俺。口を開くとビクっとするケイトさん。安心して下さい。何もしませんから…。


「と、とにかく…錬金室を借りますね」


「あっ…う、うん…」




 俺は急ぎ錬金室へ向かった。












 


 


 




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