Side勇者②
異世界に来た翌日、昨日パーティ内で話した通り初めてモンスターと戦う事にしたんだ。王城は街の中心に位置しており、王城を囲むように街が形成、そして街を護るように高い壁がそびえてえている。いわゆる城下町といった感じだよな。そんで、東西南北にそれぞれ街へと入る門があるんだ。
そんな城下町の門を俺達は南から抜けると視界に入ってくるのは別の街へと繋がっているであろう街道と見渡す限りの平原っていった感じだ。ゲームみたいに街を出てすぐモンスターと出会って戦う…なんてことはなかった。街には結界が張られているそうでモンスターも本能でそれを分かっているらしくそうそう近づいては来ないそうだ。そうそうという事はたまにあるんだよな?そんな事を思いながらも街道を外れて平原を歩いて行く。
すると最初にモンスターに気付いたのは僧侶の崇だった。
「お、おいっ!?アレ…モンスターじゃないかっ!?」
「んっ? ああ…。あのモゾモゾ動いてるヤツか!」
「…アレかっ!」
俺は鋼の剣を腰から抜き放つ。賢治も剣を抜放つと同時に大盾を前に出す形で構える。崇は錫杖を握りしめ、康太は右手に持っていた鋼の槍を両手持ちに変える。
「お、俺が大盾を構えながら慎重にアイツに近づいて行くから…飛駆と康太も俺に続いてくれ!」
「ああ」
「わ、分かった」
モゾモゾしてるモノに近づくにつれその姿が明らかになる。俺達パーティが初めて遭遇する事になった本物のモンスターは1メートルくらいの芋虫だった。
「で、デカいな…」
と、口にしたのは賢治だ。
「…気持ちわりぃぃ」
本当に気色悪そうな感想を述べたのは崇。
「ぅっ…うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ」
「お、おい!?」
突然叫び出しながらモンスターに向かって突撃したのは康太だ。内心『勝手な事するなよ、くそっ』と、つい思ってしまう。康太に続くように俺も駆ける。
康太はそのまま芋虫の頭らしきところに向かって槍を一突き。パッシブスキルのお陰だろうか?その姿が妙に様になって見えるのは…
『ぴぎぃぃ…』
突き刺さるような鋭い音とともにモンスターのうめき声のようなものが聞こえる…と同時に康太の放った槍の刃先が見事に芋虫の頭らしき場所を捉えているのが分かった。瞬間力が溢れるような感覚を何故か感じた。
俺も駆けてきた勢いそのままに芋虫の胴体に斬りかかる。剣を握った事なんて当然なかったわけなんだけど剣の使い方が分かるのはやはりパッシブスキルのお陰なんだろうな。
なんとも言えない感触とともに緑色の血しぶきがあがる。
「うぷっ…うげぇ…」
そんな声とともにゲロを吐いているのは崇だ。俺はそんな崇を尻目に再度胴体を斬りつける。
「うらぁぁぁぁぁぁぁ」
康太は叫び声をあげながら何度も何度も突き刺している。
「お、俺だって…!」
賢治も芋虫の尻先に斬りかかる。
♢
「オーバーキルってヤツだな…」
「…だな」
賢治の言葉に頷く。
「…お前等やり過ぎだろ。まだ俺は気持ち悪いわ…」
「悪い悪い…つい…な?でもそのお陰でというか俺のお陰でお前もレベルが上がっただろ?」
「そりゃあそうだけど…」
結論から言えば最初の康太の一撃で戦闘は終わっていたみたいだ。力が溢れたような感覚はレベルアップしたという事だったんだと思う。ステータスを確認するとパーティ全員レベルが上がっていたしな。
「経験値という項目がステータスにないのでなんともいえないけど、経験値みたいなものがあるんだろうな。そんで…経験値があると仮定するとパーティでそれが分配されたんだろうな」
「ああ、それな」
「まあ、戦闘していればそのうちそういのは分かるだろ。そんなことよりも康太お前…」
「い、言わなくても分かってるって飛駆。は、初めての戦闘でちょっとパニくってたんだよ」
「頼むから気をつけてくれよ?勝手な事されたらマジでヤバくなるぞ」
「ああ、ソレ俺も思った」
「ゲームでもAIに任せてたりしたらたまにいらん行動されてピンチに陥るしな」
「み、みんなしてそう言うなって…」
いや…言っておかないとな?こういうのは大事だろ?
「そ、そうだ!勇者の飛駆が指示出せばいいんじゃないか?」
「康太の言う通り…指示するものがいた方がいいかも…」
二人とも良いこと言うな。
「俺はどっちでもいいぜ!飛駆がしないなら俺が指示出してもいいぞ?さっき真っ先に指示を出したのは俺だし」
くっ…マウントみたいなもの取んなよ。そこは賢治も話を合わせてくれたらいいのによ。
「…とりあえず次の戦闘から俺に指示を出させてくれ」
「ああ、宜しく」
「うん」
「無理そうならいつでも言ってくれよ?」
とにかく勇者として…先頭に立たないとな。見てろ…。
♢
「賢治は芋虫を!」
「おう!」
「康太は俺に続いてくれっ!」
「はいよっ!」
「崇はさっき覚えた魔法をスライムみたいなヤツに!」
「うん!任せて!【エア】!」
俺の指示にみんなが動く。賢治が芋虫を一刀両断。俺もバッタみたいなモンスターを斬りつけ、すぐさま康太が槍で突き刺す。崇は先程覚えた風属性の魔法を敵に放つ。するとスライムみたいなモンスターに向かって風が吹き荒れてバラバラに…。
「ナイス!みんな!」
戦闘が終わりハイタッチを交わす俺達。
「飛駆の指示も良かったぜ!」
「だね」
「いい感じだよな、俺達!」
「それな!」
「それとさっき…」
「レベルがまた上がったんじゃないか?」
「それそれ!」
「力が溢れる感覚があったもんな」
「確認してみようぜ!」
最初の戦闘から何度も戦闘を重ねてかなりの数のモンスターを倒してきた。コレであの力が溢れる感覚も五回目だ。そろそろ俺も魔法を覚えるんじゃないのか?そう思いながらステータスと念じてみる。
❉❉❉❉❉❉❉❉❉❉
名前∶池面 飛駆 (いけづら ひかる)
年齢∶15
職業∶勇者
レベル∶6
体力∶33
魔力∶18
力∶21
俊敏∶15
器用∶13
知力∶7
運∶10
装備∶鋼の剣 鋼の盾 鋼の胸当て
パッシブスキル∶剣技Lv 2
スキル∶火斬り
魔法∶ファイア
❉❉❉❉❉❉❉❉❉❉
うおっ!?魔法を覚えたと同時にスキルも覚えたっ!?しかも【ファイア】ってありきたりだけど絶対カッコいいよな。みんなも同じように使えるモノが増えたようだ。聞いた感じだとこんな感じだ。
❉❉❉❉❉❉❉❉❉❉
名前∶再現 賢治 (さいげん けんじ)
年齢∶15
職業∶戦士
レベル∶6
体力∶40
魔力∶5
力∶30
俊敏∶9
器用∶10
知力∶6
運∶8
装備∶鋼の剣 鋼の兜 鋼の鎧 鋼の大盾
パッシブスキル∶剣技Lv 1 盾技Lv1
スキル∶力溜め
❉❉❉❉❉❉❉❉❉❉
❉❉❉❉❉❉❉❉❉❉
名前∶仲間 崇 (なかま たかし)
年齢∶15
職業∶僧侶
レベル∶6
体力∶20
魔力∶35
力∶11
俊敏∶13
器用∶10
知力∶15
運∶10
装備∶鉄の錫杖 僧侶の服 僧侶の帽子
スキル∶祈り
魔法∶ライト エア
❉❉❉❉❉❉❉❉❉❉
❉❉❉❉❉❉❉❉❉❉
名前∶霜村 康太 (しもむら こうた)
年齢∶15
職業∶槍使い
レベル∶6
体力∶30
魔力∶10
力∶28
俊敏∶15
器用∶13
知力∶10
運∶10
装備∶鋼の槍 鋼の胸当て 鋼の兜
パッシブスキル∶槍技LV2
スキル∶ダッシュ突き ドリル突き
❉❉❉❉❉❉❉❉❉❉
「今日はこれくらいにしておこう。初日だしな!」
「「「賛成!」」」
ステータスの確認が終えた俺達は笑い合いながら一度街へと戻る事に。街へ戻った俺達は宿を取った。んで、宿をとってすぐさま賢治と康太は娼館へと向かった。
「くふふっ…マジ楽しみだな賢治」
「ああ…ドキドキするわ…だけどようやく俺も大人の階段を…」
「登るんだな…」
物凄く楽しそうに…。俺は行ってないぞ?惚れてる愛しのマイスウィートハニーがいるしな。まだハニーでもなんでもないんだけども…
崇はというと疲れたのかベッドに横になってすぐに夢の世界へ。
まあ、そういうのに興味があるのは分かるけど…勇者パーティの名を穢さなかったら自由にしていいと思う。あんまり色々制限つけたら揉める原因だろうしな。
俺の異世界生活は早くも二日目が終わろうとしているな。だけど…俺はやれている。
「…やれる。俺は勇者として…この世界で…」
俺も疲れていたんだろうな。堅いベッドに横になりながら色々考えているといつの間にか眠ってしまったのだから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます