第6話錬金ギルド
ネネさんの案内の元、魔法陣が描かれた看板がある建物の前へ到着。どうやらここが錬金ギルドのようだ。サチの案内でも良かったんだけど不思議がられてしまうからな。冒険者ギルド同様にネネさんに案内を頼んだ形だ。まあ、ジョブがガイドだしそのおかげで場所は分かると言っても問題はないんだけど、少しでもネネさんと会話しておきたいと思うしな。まあ、殆ど会話出来なかったのが現状だが…。
それはさておき建物の中へ足を踏み入れる。入口正面にカウンターと小学生くらいと思われる受付の女性の姿が視界へと入る。その女性は椅子の上に立っていて丁寧に頭を下げながら口を開いた。
身長がカウンターまで届いていないから椅子の上に立っているんだろう事が分かる。可愛いもんだ。
「れ、錬金ギルドへようこそ!ほ、本日はどのようなご要件でしょうか?」
んっ?そういえばなんて言えばいいんだ?錬金したいんですが…でいいのか?前もってサチに聞いておかないといけない事だったな。
『──錬金ギルドへの登録と錬金室を借りたい旨を伝えればオッケーです』
『登録は錬金室を使ったりする為か?それに錬金室ってあるんだな?その名の通り錬金を行う為の専用部屋ってとこか?』
『──その通りです。錬金ギルドへの登録は主に錬金室を使ったり、錬金して作った商品を売ってもらったりしてもらえます。まあ、ぶっちゃけるとどこでも錬金は可能なのですが錬金室は部屋ごとに何かあっても大丈夫なように結界が貼ってありますし、換気も万全ですし、道具も一式揃っていて、それを自由に借りれるので非常に便利なんです。道具揃えるのにもお金が掛かりますしね』
そうかそうか…って!?不穏な言葉が今あったよな!?何かあってもって、それって失敗する事もあるって事かっ!?毒ガスみたいなものが発生したり、何かが爆発したりとかそういうのか?
『──ご想像通りです。それよりも…さあ、マスター?受付の可愛いお嬢さんがマスターの返答を待ってますよ?』
いかんいかん。ついついサチと話をしていて自分が今どこにいるかとか話してる最中だとか忘れてしまっているな。気をつけないとな。
「…すいません。錬金ギルドへの登録と錬金室をお借り出来ますか?」
「っ!? 登録っ!?錬金室っ!? あ、あの…も、もしかして錬金術を使えるのですかっ!?」
受付嬢の小さな女の子は椅子の上からカウンターを飛び越えると俺の元へ足早にやって来て悲壮が混じったような焦った表情でそんな事を聞いてきた。
「えっ…と…一応「お願いしますっ!どうかお父さんを…この錬金ギルドをっ…助けて下さいっ!」…」
助けて下さいって…それはまた物騒な…。まあ、そんな風に幼い女の子に言われたらこう言うしかないよな?
「…話を聞かせてくれるかな?」
「じ、実は──」
話を聞くと一週間前に突然この錬金ギルドに在籍して働いていた五名の錬金術師がみんな一斉に辞めていったそうだ。辞めた理由は人それぞれだ。一身上の都合だったり、病気が理由だったり、突然の音信不通だったり…。まあ、音信不通は来なくなった理由になるんだろうけどな。当然だけど領主のティアさんにも話を通そうとしていたがティアさんは王都にいたというわけだ。
とにかくそんな風になるとどうなるか…。当然受注を受けていた仕事は滞りだしたそうだ。それでも一人で黙々と無理をしながら仕事をこなしていたのがこの錬金ギルドのギルドマスターでもあり、彼女の父親でも男性。けれど…先日とうとう倒れてしまったらしい。それでも目を覚ます度に少しでもと錬金したり仕事したりしてまた倒れて…その繰り返しだそうだ。
男性は今このギルドの奥で横になって眠っていて、また起きたら無理して仕事をするからそれで助けて欲しいとの事だった…。
『なぁ…サチ』
『──マスターの思われてる通りです』
『やっぱりそうなのか…。みんな一斉に辞めたのには何か理由があるって事だよな…』
『──その理由というのはみんな同じです。その答えを言ってしまえば引き抜きです。ヘッドハンティングというやつですね。ヘッドハンティングしたのは王都近くの錬金ギルドですね。まあ、辞めた人達はみんな田舎よりも都会の方がいいって感じですね。一番の理由はお金ですけどね』
『どこの世も金ってやつか…』
『──ついでに言いますがその錬金ギルドにヘッドハンティングするように指示したのはその領地の貴族になります。どうやらその貴族はティアさんが幼い頃から目をつけていたようですね。ティアさんが爵位を授かると同時にこれはチャンスと思ったのでしょう。ここの錬金ギルドだけではなく、他にも色々な場所に指示していまして、最終的には領地経営に困りに困ったティアさんに条件を出して助けて、ティアさんを自分のモノにしようと考えています…やり方がクズですね』
そっかぁ…ティアさんをねぇ…。まあ、ティアさんは綺麗だし、それに可愛いしな。自分のモノにしたいという気持ちも分かるには分かるけども…。そんな風に無理矢理モノにしてもなぁ…。やり方もなんだかコソコソ手を回していて汚いし…。正面きって告白すればいいのに…。それにしてもサチよ。クズって口が悪いぞ?
──んっ?待てよ…じゃあなんであの時あの人はあんな風に言ったんだ…?普通真っ先に話するよな?緊急事態だろ?俺がいたからこの話をしなかったなんて事はないよな?ティアさんが耳にしていたらすぐに動く筈だろうし…。
『──流石は私のマスターです♪ご自身でそこに気がつかれましたね♪』
『…で?どうするんだ?サチは全て分かってたんだろ?サチにはそれをどうとでも出来るアイデアだかそういう力がある…。だからその為にここに来たんだろ?』
『──概ねその言葉は正解です。修正する言葉は私の力ではなくて、マスターの力という事です♪』
『いやいや…サチが有能スキルだからだろ?』
『──そんな風に言われると照れちゃいますね』
本当に照れてるみたいな感情がサチから伝わってくる。
『んじゃあ、まぁ…』
『──いっちょ…』
『『──やりますか!!』』
まずは…っと。
今にもこの錬金ギルドを飛び出してティアさんの元へ行こうとしているネネさんに待ったをかける。
「ネネさん待った!」
「…な、なんですか!?今から私はっ…」
「とにかく落ち着いてほしい。大事な話をするから最後まで俺の話を聞いてもらいたいんだ。ティアさんにも関わる事だからさ」
「…っ!? 言ってみてください」
「それと…」
俺は女の子に視線を向ける。彼女にも協力してもらわないといけないしな。そういえば名前を聞いていなかったな…
「あっ、申しそびれてました!私の名前はケイトです!ケイトとお呼び下さい!」
「…じゃあケイトも一緒に話を聞いてくれ」
「はい!」
「俺が今から─────」
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