第5話冒険者ギルドへの依頼と出会い

『──で、何を依頼するんだ?』


『──いい質問ですマスター!依頼はある魔物の討伐とその魔物を倒して得られる物です』


『その魔物は危険だったりするのか?』


『──魔物もランク付けされているのですがご心配はいりません。低ランクの小型の魔物ですよ』


『俺でも狩れたりする?いや、まあ、戦いはまだ怖いけど…んっ?そういえばここの領地に来る途中に魔物の姿は見かけなかったよな?』


『──マスターでも当然狩れます。が、ご自身での戦闘はもう少しお待ち下さい』


『…了解。サチがそんな言い方をするのなら色々と何かがあるんだろうな』


『──察して頂きありがとうございます。ここに来る途中に魔物の姿が見当たらなかったのは護衛の人達がスキルの威嚇等を使用していたからですね!まあ、それでも遭遇する時は遭遇してしまいますけどね』

  

『ああ。スキルのお陰だったんだな。道理で魔物に遭遇しないと思ったよ』


『──疑問がとけたようで何よりです。では討伐依頼魔物の話に戻ります。魔物の名前はユウショウウサギ。欲しいのはその魔物の血になります。数は十体程の血の量でとりあえず十分かと…』


『…血?それって…本当にそんな依頼を出して大丈夫なのか?』


『──問題ありません。錬金術の材料としても使われてますので』


『分かった。お願いしてみる』


『──宜しくお願いしますマスター』



 了解了解。お願いしてみるよ。



「すいませんグレースさん」


「はい、なんでしょう?もしかして素材の買取りとかでしょうか?」


「いえ、素材の買取りではなくて依頼を受付けていただきたいのですが」


「かしこまりました。どんな依頼でしょうか?」


「依頼はユウショウ兎の血を十体程手に入れて欲しいという依頼になります」


「!? も、もしかして…聞いていいものか悩んでたんですけど…ハヤブサさんのジョブはガイドと聞いた事がないジョブのようでしたが、ガイドというジョブは錬金の知識やスキルにも精通しているのですか!?」


『──イエスで答えて大丈夫ですよ』


『助かる。ありがとうなサチ』 



「…ええ。それなりにですけどね」


「それは凄いです!」


 なにやら予想外に喜ばれてないか?祈るように自身の手と手を胸の前で重ねてとびっきりの笑顔をこちらへと向けてくるので若干照れてしまう。


『──がっつり照れてますけどね』


『…余計なツッコミはいらないんだよ…』


 グレースさんの言葉は続く。


「現在この街では錬金術師の方の数が少なくてポーション等の回復薬を始めとしたものがなかなかこちらにまで回ってこない状態なんです…。回復魔法なんかを使えない冒険者の方は冒険をするうえで回復薬は生命線ともいえるので…」


 錬金術師の数が少ないのか…。もしかしてサチ?


『──マスターが思われた通りです。まずはマスターに錬金術を覚えてもらおうと思います。ポーションは錬金術の基礎も基礎なので、ポーション作りも並行して錬金術を行えば収入も入ってきて一石二丁にも一石三丁にもなります』


 なるほどなぁ…。流石サチだな。



「ハヤブサさんが錬金術を使えるのなら是非ともポーション作りも宜しくお願いします!ユウショウ兎の依頼は承りましたのですぐにでも冒険者の方に行ってもらいますね!簡単な依頼ですし、手数料はサービスさせてもらうとして、依頼料は…」


 ヤベっ…依頼するっていう事をティアさんに伝え忘れてた。


『──マスター大丈夫です。ほら…』


「…グレース、依頼料はコレで足りる?」


「勿論です!」


「すいません…ネネさん」 


「…屋敷に戻られたらお嬢様にお礼を伝えて下さいませ」


 ネネさんがどこからかお金を取り出してグレースさんへと手渡してくれた。どうやらティアさんにはこうなる事は分かっていたみたいだ。もしかして神託がまた降りたとか?


『──いえ、ティアさんが気が利くだけですね。マスターは冒険者ギルドに向かう旨だけ伝えられてましたので、こういう時や買い物の為にネネさんにお金をかなり多めに持たせてくれたようです』  


 流石ティアさんといった感じかな。帰ってお礼を伝えないとな。


『──お礼ならとっておきの物をご用意出来ると思いますよ?』  


『マジで…?』


 御世話になってる分やらも含めて少しでも恩を返せるといいけどな。



「ユウショウ兎なら私が今から狩ってきてあげるよ♪ちょうど暇だしね!グレース構わないかな?」



「勿論です♪アズサさんが依頼を受けて下さるんでしたら食事を食べ終わるくらいの間隔で終わりそうですね!では、宜しくお願いしますアズサさん!」


 ありがたい事にどうやらアズサさんが依頼は受けてくれるみたいだ。



「任せてっ!ネネ達は座って待ってなよ!すぐに終わらせて戻ってくるからさぁ」


 こちらへとサムズアップしながらそんな事を言い放つネネさん。本当にすぐに終わらせてくれそうだな。


「…分かったわ。宜しくね」

「宜しくお願いします!」


「うん♪行ってくるね!!」




 アズサさんがギルドをピューっと後にするののを見送る。その動きはとても素早く風みたいだ。そんなアズサさんを見送ると同時にネネさんとギルド内に設置されてるテーブルの一つに腰を下ろす事に。


 今更ながらに気がついたんだけど…


『そういえばアズサさんはどうやってユウショウ兎の血を持ち帰るんだサチ?ユウショウ兎をシメてその死体ごと持ってくるのか?それとも血だけを持ち帰るのか?』


『──アズサさんは一応死体というかユウショウ兎の肉も持ち帰るでしょうね。ユウショウ兎の肉は食材にもなりますのでその場でシメて血抜きされる筈です。収納の魔法具まほうぐをお持ちみたいなので血は血、肉は肉と分けて収納して持ち帰ってきます』


『収納の魔法具?』


『──マスターに分かりやすくいえばそうですね…見た目とは裏腹にたくさん入る道具袋って感じでしょうか』


『…なるほど…ド◯クエだな』


 昔のド◯クエは装備や道具等は持ち運べる量が決まってたんだが、いつ頃から忘れたけど手に入ったアイテムはふくろというコマンドが追加されてからはいくらでも持ち運べて、いつでも取り出せるように変わったっけ。



『──その認識であってます。他にも例えるならゲーム等に出てくる空間収納魔法やスキル【ストレージ】、【アイテムボックス】といった感じでしょうね』


『アニメや物語でお馴染みのやつだな?』


『──ですね!魔法具は色々な効果が込められている道具だと覚えておいてもらえればと。そしてアズサさんが持っておられる魔法具は指輪に収納の魔法が込められたものです。レアものですね。一般に出回っているのは革袋製なので、ダンジョンで手に入れたものでしょう』


『…ダンジョンもあるのか。ますます異世界だなと感じるわ』


『──何を今更…』


 何を今更も何も普通そう思うと思うぞ?まだこの世界に来て浅くないしな。


『ああ、それと』


『──なんでしょうか?』


『確か俺ってマジックポイントというか魔力1しかなかったよな?1で錬金術って使えるの?それと空間魔法というか収納魔法も使えないよな?依頼したユウショウ兎の血ってどうやって受け取るんだ?ネネさんに頼むのか?』


『──オールナッシングというやつです。私というスキルが発動した時点で空間収納は私にお任せを!いつでも取り出せますし、いつでも収納できます!錬金術に使う魔力も当然心配いりませんよ!私が負担しますので!』


『マジで有能過ぎんか?』


『──エッヘン!もっと褒めていいのですよ?』


『いや、ホント破格!破格も破格じゃない?』


『──褒められるってホント良いもんですね♪マスターもっと褒めて下さい!』


 いやいや…そんなの言われなくても褒めまくるが?スキルが有能過ぎてデメリットがないのか怖くなってしまうがデメリットもないってマッ!?何か色々と優遇されてる気がするな。日頃の行いが良かったか?…なんてな。



 そうこうしているうちにアズサさんが戻って来た。アズサさんからユウショウ兎の血とユウショウ兎の肉を受け取りサチに頼んで収納。お願いした依頼はコレで達成というわけだ。ネネさんは自分が収納すると思っていたのか、はたまた俺が収納した事に対してかは分からないが驚いていたようだった。とにかくそんな感じでアズサさんにお礼をしっかりと伝えて、アズサさんと別れた後、俺とネネさんはその足で今度は錬金ギルドへと足を運ぶ事にしたんだ。









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