第4話冒険者ギルドで
『うおっ!?こうしてこういうのを目にするとなんだか本当に異世界に来たんだなって感じるな』
冒険者ギルドへ着いた俺が目にしたのは冒険者ギルドの看板とその建物だ。看板には剣と炎が描かれており、建物の入口は二枚扉になっていて…よくカウボーイの映画のワンシーンで観るような感じだ。何て言うんだったっけ?こういうの?
『──ウェスタン風ですか?』
『そうそう。まさにそれだよな』
そんな風に感傷に浸っていると少しばかり辛辣な感じで声をかけられる。同行してくれている猫人族のネネさんだ。
「…入らないんですか?」
「…入るよ。こういうのを見るのは初めてだから…ちょっとばかり感傷に浸ってたんだよ」
「…感傷に浸るのは勝手ですが…早く用を済ませていただけると助かります」
「あ、はい」
辛辣っ!?辛辣過ぎる!?ここに来るまでの道中も離れて歩くもんだから話かけられるような距離感じゃなかったしな。やっぱりなんでも初めが肝心なんだろうな。マジマジと見てしまったばっかりに…。でも仕方なくないか?俺と同じ歳くらいか少し歳上の美少女ともいえる女性の頭には猫耳がついているんだぜ?多分お尻あたりからだとは思うんだが猫の尻尾もついている。作りもんじゃなくて本物なんだぜ?しかも服装はメイド服ときたもんだ。絶対性癖を刺激されること間違いなしだとは思わないかっ!?
『──マスター…。思考が最悪です。少し抑えて下さい』
『…すまない。少し熱くなりすぎた…』
『──とりあえずですが…ネネさんに関してはあまりお気になさらずにして下さいませ…。マスターに限らず男性に関してはああいう感じみたいですので』
『…サチは何か分かるのか?』
『──いずれ…ご本人からお話があるかも知れませんので…それを待つのが宜しいかと』
『それって…仲良しならないと話してくれないんじゃないか?』
『──マスター次第です』
『…了解』
今考えてもどうしようもないか…。とりあえず二枚扉に手を添えて押し開けてギルドの中へと足を踏み入れる。ギルドの中はちょっとオシャレな昔のカフェといった感じだろうか。カフェと違うのはゲームで見るように大きな掲示板みたいなものが目立つように店内の壁にある事だろう。おそらく依頼を貼ったりしている場所なんだろうな。
他にも冒険者らしき人達が店内でくつろいでいるのが見てとれる。カウンターの方に視線を向けると視界に入ってきたのは受付嬢と思わしき黒髪の女性の姿。女性の元へと近づくと明るい声と溢れんばかりの笑顔でこう言葉を掛けられた。
「冒険者ギルドへようこそっ♪ 」
なんだかテンションがあがるな。やっぱりゲームの世界みたいだからだろうか?それとも受付の女性の笑顔にやられたか?綺麗な声にやられたか?
『──ただの色ボケじゃないかと』
『サチも辛辣過ぎないか…?』
『──まあ、マスターのクラスメイトの一部の方々もそんな感じみたいですので』
『そういうのも分かるのか?』
『──有能スキルですので』
『自分で言うのかよ…』
まあ、いいけども…
「あ、あのぅ…?当ギルドへの依頼か何かでしょうか?」
おっと…いけないいけない。俺は慌てて口を開く。
「すいません。登録したいんですけど」
「かしこまりました。こちらにお名前等をご記入下さいませ」
「はい」
手渡された紙を見てはっっと気がつく…。日本語じゃ駄目だよな…?説明文や記入欄に書かれているのはミミズみたいな文字だし…。
「…わたしが代筆して書きますので私が聞いた事を口にして下さい」
ネネさんが気を利かせてくれたんだろう。ぶっきらぼうながらも紙を手に取りペンを握るネネさん。
「ありがとうございます。宜しくお願いします」
「ネネさん、お久しぶりです」
「…久しぶり。グレース」
「お二人は知り合いなんですか?」
「…ええ」
「ネネさんはAランク冒険者ですので」
Aランク…!?それってかなり高いレベルの冒険者って事だよな?
『──ですね。冒険者ランクは下からEランク、Dランク、Cランク、Bランク、Aランク、Sランクと区別されています。戦闘能力だったり、サポート能力だったり、ランク審査は色々ですが』
サチが言った事と全く同じ事をグレースさんも伝えてくれる。
「……はい、グレース。記入終わったわ」
「ありがとうございます!少々お待ち下さいね!」
記入が終わった紙を受け取ったグレースさんは奥へとパタパタ駆けていく。それと同時に俺達の後方から俺というかネネさんに声が掛けられる。声が掛けられると同時にネネさんに飛びつく一つの影。
「ネネぇー!」
「…ニャッ!!? あ、アズサ…?」
「ネネったら…ぷふっ…驚いてニャッだってぇ…あはははっ…」
「…何を笑っているんです?終いにはシメますよ?と、いうかシメます!今すぐシメます…」
「…ネネの目が笑ってない…本気みたいなんだよっ!?」
「…本気でシメようと思ってるからですが…?」
「ご、ごめんって!笑ったのは謝るから…ねっ?ねっ?」
平謝りしながらネネさんから離れる青髪のショートボブの女性。服装は軽装で両腰にはナイフを装備しているみたいだ。
「ねぇ、ネネ?こっちの男性は誰?」
「…お嬢様のお客人です」
「ああ、なるほどなるほど…もしかして彼氏でも出来たのかと一瞬思っちゃったんだけど…「…ありえませんねっ!」…だよね」
「ティア様のお客人なら挨拶しておかないとね!はじめまして、アズサだよ!」
「はじめまして、トヨカズ・ハヤブサです」
「トヨカズ君ね?オッケーオッケー!覚えたよ!まあ、私の事はネネの相棒とだけ覚えてくれてればいいよ!」
「…誰が相棒ですか」
「相棒でしょっ!?最近はネネが忙しいみたいだから一緒に依頼には行ってないけどさ」
アズサさんの言葉を聞く限り、一緒に依頼をしたって事だよな?って事は…
「もしかしてアズサさんのランクってAランクだったり…?」
「およっ!?よく分かったねぇ!その通りだよ!エッヘン!私Aランク冒険者なんだよ!凄いでしょっ♪」
「はい、凄いと思います」
うん。素直に凄いと思う。
「そ、そんなに尊敬するようなキラキラとした目で見られると私でも照れちゃうんだけど…?」
「…安心しなさい。そんな目では見られてませんから。寧ろ残念にしか見えないから」
「ちょおーい!?今、凄く尊敬が込められた眼差しで見られてる超いい感じなシチュエーションだったのに残念っておかしくないっ!?」
「…事実です」
「辛辣っ!?辛辣過ぎるよっ!?」
うん。二人とも本当に仲がいいんだろう事が分かるわ。息ピッタリって感じだな。そうこうしているうちにグレースさんが戻ってきてカードを手渡される。俗に言う冒険者カードというやつだ。
なんだかカッコいいな。
『──マスター。カードに見惚れていないで依頼を出す旨をグレースさんに伝えて下さい』
『もう少し余韻に浸らせてくれてもいいのでは?こういうのって…なんだか興奮というか感動するというか…色々とあるだろ?』
『──依頼内容ですが』
分かった分かった。依頼だな?依頼すればいいんだろ?全く…何を依頼するんだよ?
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