第3話ギルドへ

 屋敷へと着くと同時に屋敷に住む人達が俺達を出迎えるように屋敷の玄関前に整列していた…。


『──正確に申しますと俺達ではなくてティアさんを迎える為ですよ、マスター』


『…分かってるわ!?今こう言い直そうとしてたんだよっ!?』


 いや、正確に言うとティアさんを迎える為だ。──って…。


『──それは失礼しました』


 とにかく…侍女の人達が十人くらい、そして年配の執事の男性一人からティアさんに声がかけられる。


「「「「「おかえりなさいませ!お嬢様!

」」」」」


「ただいま、みんな。私がいない間に何か問題は?」


「何もありませんでしたよ、お嬢様」


 ティアさんの声に答えたのは年配の執事の男性だ。この執事の男性が仕える人達の中で一番偉いというか取り仕切っているのが分かる。多分だけど…。


「お嬢様。そちらの男性は?」


「えっ、ええ。こちらの男性は──」


「もっ…」

「もしかして…」

「間違いないわ!お嬢様にもついに春が来たのよっ!?」

「キャァァァ〜〜〜 やっぱり?」

「そうよ!間違いないわ!」

「許嫁や彼氏がいない歴十四年のお嬢様にもついに…ついに殿方が…」



「あ、あなた達ねぇ…」


 

 ティアさんは仕える人達とフレンドリーな関係を築いているんだろうな。こういうところを見るとティアさんは己の立場や権力を振りかざすような悪い人というか偉そうな人じゃないのが窺える。


『──だから言ったではありませんか。ティアさんに御世話になった方がいいと』


『…だな。サチの言う通りにしてよかったよ』


『──エッヘン!』


『心なしか…サチもフレンドリーな感じになってきてないか?』


『──気の所為です。マスター』


 まあ、いいんだけどな。


 

「コホン! こちらの男性は名をトヨカズ・ハヤブサ様といって、当方でお預かりする大事なお客人になります。今日よりこの屋敷で暮らす事になりますのでみなさん失礼がないようにしてください。また、彼はこの世界より異なる世界から来られました。こちらの世界とは勝手が異なる事があると思われますのでその辺りも気がけるようにして下さい」



「「「「「かしこまりました!!」」」」」





  ──その後は各自に挨拶してからまずは昼のいい時間とあって食事をする事になった。食事は言うまでもないが、王城での食事とかと同じくシンプルな味付け。食べれはするから問題はない。醤油やら調味料が欲しいと思うのは贅沢だし、無い物ねだりというやつなのだろう。 


 食事が済むと俺が使う事になる自室へと案内された。部屋の大きさは八畳くらいで、部屋の中は木で作られたシンプルなベッドに本棚やタンスが設置されている。何かあったら呼んでくれと言われ一人になったのでこれ幸とばかりにまずはベッドに横になる事にした。


「堅いなぁ…」


 感触が堅いと思ってしまうのもまた無い物ねだりなんだろうな。地球での暮らしでは普通だったものがここにはないんだなぁ…とか、ついついセンチメタルにそんな風に思ってしまうのも仕方ないよな。突然異なる世界に来るなんて誰も思わないしな。


『──マスター』


『…どうかした?』


『──お疲れのところ申し訳ありませんが提案致します。ギルドに向かいませんか?』


『…ギルド?』


『──はい』


『…ギルドって…それ大丈夫なのか?俺のジョブって戦闘職じゃないよな?登録できるのか?』


『──登録は誰でもできますよ。錬金ギルドも商業ギルドも冒険者ギルドも』


『多くねっ!?ギルドだけで三種類あるのか!?』


『──はい。簡単にそれぞれどんなギルドなのかを説明を致しますと、錬金ギルドは主に錬金する場所の提供と錬金した物を販売しているギルド。商業ギルドは色々な商品に関わる売買等を取り引きしたりするギルド。冒険者ギルドは魔物の素材や様々な依頼を引き受けるギルドになっています』


『登録はそれぞれできるのか?ギルド同士が仲悪かったりとかしないか?』


『──そういうのはありません。錬金ギルドで作られた物が商業ギルドでも売られていますしね』


『それはなにより。よく物語ではギルド同士ギスギスしてる話もあるからな』


『──物語はあくまで物語です。話を戻しますがまずは冒険者ギルドに冒険者登録に行きましょう』


『…まだ昼過ぎだろうし…サチの言う通り登録だけしとくか。サチの言う事なら間違いないだろうしな』


『──ついでに依頼も出す事を提案します』


『依頼!?それは…金ないぞ?』 


『──ティアさんに冒険者ギルドに行く旨と依頼を出す旨を伝えて下さい。それで万事解決致しますので』


『…居候の癖にとか思われないか?』


『──ネネさんからは多少思われるかも知れませんが問題ありません』


 問題しかないような気がするのは俺だけか?ただでさえネネさんにはよく思われていないようなんだが…。


『──さぁさぁ、マスター!時間は有限ですよ?』


『なんでそんな言葉知ってんだよ?それ地球の言葉だよな?』


『──二十四時間働けますか?と、いう言葉も知っております。主にマスターの記憶から学びましたが…古くないですか?マスター?』


『悪かったな…古くて…昔の動画だったりを漁って観るのもなんだかんだで趣味だったからそういうので覚えてしまったんだろうな。パパパ、パ◯ルライスとか。懐かしいCMだろ?』


『──マスター』


 なんかサチが悲しい目で俺を見ている気がするのは気の所為だろう。気の所為だと思いたい。気の所為だと思う事にする。




 気をとりなおして…とりあえず部屋を出る。近くにいた侍女の女性にティアさんに冒険者ギルドへと行こうと思うのでその旨を伝えて欲しいと伝えるとすぐにティアさんが来てくれた。ネネさんも一緒だ。


「冒険者ギルドに向かわれたいとお聞きしたのですが」


「はい、いいですかね?」


「ええ。ネネをお供につけますので。ネネ?冒険者ギルドへの案内をお願いね?」


「…はい」




 そんなわけで…俺はネネさんと共に冒険者ギルドへと向かう事にしたんだ。少しはネネさんと打ち解けれるといいけど…無理だろうな。そんな事を思いながら…




 


 














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