第45話 隣国へ

 翌日。

 俺とルネ、それからヴァネッサに若手騎士三人の計六人でアルテノアの隣国であるルクレンド王国へと足を運んでいた。


 交渉をスムーズに進めるため、アルテノア国王からの紹介文をもらっている。

 ただ、それでもうまくいくかどうか……それほど、アルテノア王国というのは下に見られていると国王陛下は暗い表情で語った。


「国の大小だけでそこまで……」

「何か言いましたか、教官」

「いや、何でもないよ、ルネ」


 ボソッと呟いた独り言が耳に入ったようで、ルネは不思議そうな顔をしながらこちらを見つめていた。


 一方、ヴァネッサたちは地図とにらめっこ中。

 隣国とはいえ、時間は一刻を争う。


 最短距離を突っ切ってなるべく早く到着したいところだが、これが思いもよらぬ苦戦となってしまった。

 というのも、実はアルテノアに暮らす人のほとんどが隣国であるルクレンドへ行ったことがなかったのだ。


 それも無理はない。


 隣国とはいえ、国境までは距離がある。

 俺たちは馬を使って移動しているが、徒歩での移動がメインとなる一般人ではかなりの長旅になってしまうため、よほどの理由でもない限り行こうとすらしないのだ。


 なので、国同士での接点はほとんどない。

 だったら別の国でもいいんじゃないかと思うのだが、実は何代か前の世代は頻繁に商人たちを中心に行き来があり、友好関係にあったという。


 だが、いつの頃からかそういった機会が減っていき、今ではほとんどまともにやりとりができていないという。


 現国王同士には接点がない。


 だが、あちらにも魔法を使えるモンスターが出現しているはず。もしそうなら、きっと対策にも苦慮しているはずだ。俺はアルテノアだけではなく、エルダインからも助っ人が来るという情報も追加すれば、ルクレンド国王も心が揺らぐはずだと読んでいた。


「大国エルダインからの戦力が追加されると分かれば、向こうの対応も変わってくるだろう」


 ルクレンドはアルテノアのそれほど大きさ的には変わらない。

 まあ、あっちの方が大きいには大きいけど、エルダインのように臨機応変な対応ができるほど豊富な戦力があるとは思えない。


 向こうも戦力は欲しがっているはず。

 それなら……今回の交渉はうまくいくかもしれないな。


「グラント教官! 方向分かりました!」

「この距離からだと最速で明日の昼には到着できるかと!」

「よし。ならすぐに出発しよう」


 ヴァネッサもケビンもヤル気満々だな。

 新兵らしい元気さで何より。


 あとは教官――いや、この場合は上司でいいのかな。

 とにかく年長者である俺が頑張らないとな。

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