第43話 大国の現状

 モニカを見送った翌日。

 俺たちは遠征して自然環境の調査をしていた騎士たちの帰還を王都へ続く一本道で待っていた。

 彼らは過酷な道のりを経て貴重な情報を届けてくれた。

 なんとか無事に戻ってきてもらえるよう、道中で何かあればすぐに転移魔法で駆けつけようと準備していたのだ。


「それにしても、エルダインって大国の割には情報が遅いんですね」

「あれには私も驚きました」

 

 ヴァネッサの純粋な言葉に、ルネは頭を抱えた。

 俺も心の中では彼女と同じリアクションをしている。


 養成所の運営が一部権力者にとって優位に働くよう忖度していたのは知っていたが、それが他にも派生していたとなったら……いや、実際、モニカの話では大都市にいる富裕層の者たちしか守られていないという話だったのでやはりもうアウトっぽいな。


 しかし……まだエルダインを離れたから今の内情について詳しく知らないが、向こうはだいぶ焦っているようだな。モニカの話では魔法を使えるモンスターへの対応さえ後手に回っている印象を受ける。


「うーむ……大都市の防衛策から漏れた辺境の村人たちだけでも救えないものかな」

「しかし、こちらへの受け入れ態勢は……」

「そうなんだよなぁ」


 アルテノア王都は現段階でもかなり無茶をしている状態。

 ここへさらにエルダインの人たちを加えるのは厳しい。


 とはいえ、さすがにこのまま放置はできないか。


「なんとかしてエルダインの人たちを救う方法はないものか……」

「王都へ入れるのは無理でも、この近くに仮設の集落をつくるというのはどうでしょうか」


 俺も一瞬頭をよぎったんだよな、その案。

問題は山積みだが……今の段階では一番現実的でもある。


 すべてはモニカの上司でもあるバルガスをはじめとした、エルダインの現体制に不満を持つ騎士や魔法使いたちの反応次第。


 モニカの様子から、いい返事をもらえそうではあるが……これも最後までどうなるか分からない。


 そうこうしているうちに騎士たちが続々と王都へと戻ってくる。


 どうやら他の地域でも自然災害が猛威を振るっているという。

 ――ならば、エルダインだけでなく他の国にも接触を試みてみるというのも手だな。


「うん……国王陛下に掛け合ってみるか」


 とりあえずエルダインからの避難民を受け入れるのは王都近くになるだろうが、他国との共同作戦も視野に入れてみよう。

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