第39話 災竜の生態
「災竜の生態、か……確かに、敵を知らなければ対策のしようもありませんからね」
「さすがにすべてとはいかないが、興味深い点がいくつかあげられる」
ロウリーさんは自身が集めた情報の中でも周知しておいてもらいたいものをいくつかピックアップしてきたという。
「まず、ヤツには物理攻撃が通じない」
「なっ!?」
これにはザネス騎士団長をはじめ、アルテノア騎士団の全員が驚きに顔を見合わせる。
なぜなら、この国に魔法兵団は存在していない。
国の防衛は騎士団のみに任せられているという状況だ。
なので、物理攻撃が通じないという災竜とは相性最悪。
下手したらまったくダメージを与えられないまま全滅させられてしまう可能性すらある。
そこでカギとなるのが魔法を使える俺とルネだ。
しかし、さすがに戦力不足は否めないか。
「ロウリーさん……魔法以外でヤツにダメージを与えられる方法はないんですか?」
「ある。というか、それがふたつ目の生態情報だ」
今度はさっきと違い、困惑によるざわつきではなく希望が見えたことに対する明るい喧噪が会議室を包んだ。
「俺たちでも役に立てるのですね!」
「グラント殿たちに頼ってばかりというのはよくないですからな!」
「それで、どうやってダメージを与えればいいのですか!」
ロウリーさんへと迫る騎士たち。
久々に大勢の人たちの前に出てきた彼は困惑に顔を引きつらせるが、それを察したザネス騎士団長が騎士たちへ落ち着くよう命じ、事なきを得た。
「では改めて……なぜ物理攻撃が効かないのかというと、問題はその強固な鱗にある。そいつがあらゆる攻撃を弾き返してしまうようで、記録では砲弾の雨を浴びても無傷だったという」
砲弾が雨のごとく降り注いでも災竜にはダメージがなかったってことか。
なるほど。
それでは剣での一撃はちょっと突かれた程度の感覚だろうな。
だが、ロウリーさんの話だとそれを無効化させられるようだ。
「ここで重要になってくるのが氷属性の魔法だ」
「氷属性?」
「書物によれば、強力な氷魔法をぶつけることで鱗を剥がせるらしい」
「なるほど。そいつで物理攻撃によるダメージを通そうというわけですね」
「その通りだ」
理屈は分かった。
あとは――
「ちょうどいい。うちには氷魔法が得意な子がいるんですよ。――なあ、ルネ」
「はい。任せてください」
力強く宣言するルネだが、心なしか顔が強張っているようにも映る。
やはり緊張しているようだな。
けど、今回の作戦において彼女は貴重な存在。
やってもらわなくては。
さらに会議を進めていこうとしたその時、ひとりの騎士が会議室へと入ってきた。
「失礼します。グラント殿にお会いしたいという方がいらしてまして」
「俺に会いたい?」
一体誰だろう……まさかとは思うけど、エルダインからの使者じゃないよな?
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